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第563話 本当に危なかった




「ソフィア!!」


顔色真っ青でラファエルが駆け寄ってくる。


「ちょ、待って!! 触らないでっ!!」


ラファエルが私に触れないように制止する。

今出る最大音量で。

いたたたたっ!!

声も響くっ!!

そのせいで、ピタッとまるで機械のように私に触れる直前で手を止めるラファエル。


「………そ…」

「………?」

「ソフィアに………きょぜつ…され…た……」


………ぁぁああああ!!

しまった!!

片言ラファエルさんになってしまった!!

更に顔色を悪くし、心持ち瞳が潤んでいる気がするっ!!


「ご、ごめんなさいラファエル! ちょっと今、全身筋肉痛状態でっ」

「え……」

「触られると多分悶え死ぬ…」

「ええ!?」


今度は私の言葉にあたふたし始めた。

私に触れられないし、どうしていいのか分からないのだろう。

こういう時に癒やしの魔法とかあったらいいのに!


「失礼!!」


その時、私達に割り込む声がした。


「彼の者を苦しめている原因を取り除け」


目の前が光ったと思えば、その光はあっという間に集束し、私の中へ入ってきた。


「ソフィアに何をした!!」


ラファエルが相手に掴みかかろうとする。

ちょっと!?

咄嗟に手を伸ばしたのだけれど…


「………ぁ…」


私は気付いて手を引っ込める。


「………痛みが…」


さっきまでの痛みが嘘みたいに引いた……?

声の主を見ると、ラファエルに胸ぐらを掴まれていた。

はっ!!

唖然としている場合じゃないわ!!


「ラファエル! 大丈夫! 痛みを取ってくれたみたいだから!!」


今度こそラファエルにしがみつき、手を離すように言う。


「………ぇ……ソフィア! 大丈夫!?」

「うん。この人のおかげだから、離して」

「あ……すまない」


ラファエルが私の状態を確認し、そっと手を離した。


「………ありがとうございますガイアス様」


私は改めて立ち上がり、私の痛みを取り除いてくれただろうガイアス・マジュに頭を下げた。

ガイアス・マジュは首を横に振る。


「我が国の失態が元だ。これぐらいで礼を言わないでくれ」

「ですが、癒してくれたのは間違いありませんから。本当に助かりました」


笑みを浮かべるも、私は内心冷や汗をかいていた。

だって、私ボロボロのベチャベチャなんだもの…

一応王女なのに…

…あ!

ハッとしてラファエルの腕を見ると、私のせいでラファエルの腕も泥だらけになってしまっていた…

ど、どうしようっ!

…非常事態だったということで!


「今のは、魔法と呼ばれるガイアス様の国の力ですか?」

「はい。私は光魔法が使えるのです。マジュ国の王族は光魔法を持って生まれることが多いのです。といっても、力の強さの差はあります。私は比較的魔力――魔法を使える力の量が多い方ですので、魔物を消すことが主なのですが、癒やしの力も少なからず使えますので」

「癒し…先程の力ですね。素晴らしいですわ」

「そんな…! これぐらいは誰でも出来ますので!!」


照れたのか、ガイアス・マジュが顔を赤くして両手を振る。

………可愛いな、おい。

なにがって…仕草、というか反応が。

王太子がそれでいいのか?


「ソフィアを助けてくれたのは礼を言います。けれど――」


グイッとラファエルに腕を引かれて、ガイアス・マジュと距離を取らされる。


「私の婚約者と少々距離が近いと思います」

「――ぁ、も、申し訳ないっ!!」


更にガイアス・マジュの顔が赤く…

………なんでだ?


「しかし……」


ガイアス・マジュが話を変えるためか、上を向いた。


「あの鳥はラファエル殿の婚約者が召喚したように見えたのだが……ラファエル殿の婚約者は……ラファエル殿達も魔法を使えるので?」


未だに火精霊ホムラが戦ってくれているのに、話している場合じゃなかった…

でも、もう私には見向きもしない魔物に、神経質にならなくて良さそう…

っていうか、ガイアス・マジュ…私に敬語なのに、ラファエルにはタメ口って可笑しくない…?


「貴方達の国のものとは別物だと思って頂いたらいいと思うが、まぁ、似たようなものだろう」


…ラファエルもそれに関して突っ込まない…

言うのも疲れるからなのかもしれない…


「なるほど。それで私の申し出も断られたのだな……納得した。魔物を滅せる力など、私の国以外に有りはしないと、考えが凝り固まっていたようだ。申し訳ない」


素直に頭を下げるガイアス・マジュは潔すぎる……真っ直ぐすぎると思う。

王太子なのに何でも受け入れすぎるのはちょっとね…

次期王として心配になる…


「………魔物が襲ってくる法則、やはり分からないですか?」


ラファエルはため息を隠そうとせず吐き、ガイアス・マジュに問いかける。


「我が国ではこんな事はなかったが……ラファエル殿達を見ていて、推測したことでよければ」

「はい」

「おそらく、力の序列順に襲ってきているようだ。魔物は襲った相手の能力を奪うとされている。これは過去の記録を元として推測されていることなのだが」

「成る程。それで私達の中で1番力を持っているソフィアを襲ってくるっていうことですね。力を強めるために」

「だと思う。魔物は相手に噛みつき、能力を吸い取れる。一瞬でも噛まれたら、一部でも相手に力が渡ったと思っていた方が良い」


ガイアス・マジュの説明に、ラファエルは真剣な顔で頷いた。


「それに、私達の魔力は専用の測り機でなければ第三者に数値化された魔力量は知られることはない。けれど、ラファエル殿達は違うようだ」

「………どういう意味です?」

「会ったときから違和感があった。何故かは分からなかったけれど、戦闘を見て確信したんだ。ラファエル殿達の力は周囲に垂れ流し状態なのだろう。魔法を使っているときにそれを強すぎるほど感じた。分かりやすく言えば威圧感って言葉が1番合うだろうね」


チラッとガイアス・マジュが私に視線を向けてくる。

なんと!?

………私が1番強いっていうことは、私がマジュ国組や魔物相手に威圧感満載で接しているということなのか…!?

ま、まぁ、究極精霊は威圧感満載だろうけれども…!

私は普通の女なんですがね!!


「魔物は私達より感性が強い。だから1番力が強いだろうラファエル殿の婚約者を格好の餌として、群がってきているのだと思う。自分が消滅する可能性の方が高いが、1度でも食らいつけばその一部でも奪えるから」


………だったらさっきのは無茶苦茶危なかったってことか…

ギュッとラファエルの腕に抱きついてしまう。


「あ、す、すまない! 女性が怯えるような事を言ってしまって!」

「だ、大丈夫です…」


もう終わったことだから。

そう言い聞かせていると、ラファエルがギュッと抱きしめてくれて、ついでに頬に口づけをくれました。

………人前ですが!?

しかも私顔も泥だらけだと思うんだけど!?

更に抱きしめられたから、ラファエルもますます泥だらけに!!

口づけされた頬を手で押さえ、真っ赤になっただろう顔で見上げると、にっこり笑ったラファエルさんがいらっしゃいました。

き、気にならないのかしら…!?

私はめちゃくちゃこの場から全速力で走り去りたいぐらいに、あらゆることが恥ずかしすぎる!!


「震え止まった?」

「………代わりに恥ずかしすぎてどうにかなりそうですわ…」

「それはよかった」


よくないよ!!

ご機嫌なラファエルと、真っ赤になったガイアス・マジュと、ぼふっと頭突きするようにラファエルの胸元に顔を埋めた私。

………なんだこれ…


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