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第538話 予定外訪問




双子を平民作業員の中に放り込んで、私はラファエルと共に王宮へと帰った。

――と思いきや…

ビューッと冷たい風が吹き抜けていく。


「さ、寒いよっ! なんでこんなとこ連れてきたのラファエル!」


私は両腕を抱き、隣で涼しい顔をしているラファエルを見上げる。

現在いる場所は北の公爵領。

国境へ行ってそのまま帰るはずで、寒さ対策などしていなかった。

北に来るなら上着ぐらい持ってこさせてよぉ!!


「あ、ごめん。除雪機見てもらおうと思って」


もう出来てたのか!!

早いな!!


「姫様! 屋敷から上着持ってきました!!」


フィーアの声が聞こえて振り向けば、上着を持ったフィーアとアルバートが駆け寄ってきていた。


「ラファエル様も!」

「ああ、すまないな」


アルバートがラファエルに渡し、私はフィーアから受け取って羽織った。

ぁ~……生き返る…

侍女や騎士らも上着を羽織って寒さを軽減する。

そして改めて前方を見た。

日本の除雪機の大きさとほぼ一緒で、積もっている雪を吸い込んで管を通っていく。

………ん?


「ねぇ、ラファエル」

「何?」

「………管、長すぎない…?」


ここはアシュトン公爵家近くにある1つの街。

街中を除雪機が通っていく。

その後方から出ている管の先は見えない。

山の方へ続いているみたいだけれど…


「スキー場予定の山に積もるように管を長くしたんだ。持って行くのも大変だし」

「………でも、いくら何でも長すぎない……? 民家潰しちゃう…」

「大丈夫だよ。後方の管の長さは調節可能で、除雪機の中に収納しているよ。1つの街に1台って形で、街とその周辺をまかなってる」

「………街に1台……」


1台にいくらかかってるか知らないけれど、それを北の街分……?

………金額を聞くのが怖い…


「あと森の中に何台か配置して、雪崩が起きて街に雪崩れ込まないように対策を打ったよ」

「………そ、そう……」


どれだけ優秀なんだランドルフ国技術者…

短期間で生み出せる量じゃないでしょ…


「精霊達が手伝ってくれるおかげで、短期間で量産できるのは嬉しいよね」


………ぁ、そういえばそうだったね…

精霊も協力してくれてたんだったね…

最近は自主的に手伝ってくれる精霊が、ラファエル曰く増えているそうだ。

自主的なら契約とか問題ないよね。

………もしかしたら、私の記憶から精霊に構造などが共有されているのかもしれない。

私が覚えてないだけで、ヒントになる構造など見たのかもしれない。


「スキー場予定の雪の手入れも精霊が主にしてくれてるよ」

「え……」

「行ってみる?」


行ってみたいけれども…


「ラファエル、お仕事は…?」

「俺の仕事は案を固めて着手させるまで。あとはやってくれるって言うから、俺は今日仕事なし」

「そうなの?」

「逆に技術者全員にソフィアの相手をしろ、って叩き出された」

「………え!?」


笑って言って歩いて行くラファエルを慌てて追いかける。

技術者全員って、ルイスならともかく…どういうこと!?

追いついてラファエルの服の袖を掴むと、スルリと外され、ラファエルに手を握られる。


「どういうこと?」

「ん?」

「私の相手って…」

「ルイスからソフィアの件をバラされてねぇ。俺を拘束しすぎるとソフィアが怒ってランドルフ国からいなくなるから、時間が来たら追い出せ、って」

「………ぇえ!?」


ルイスってば、なんでバラすの!?


「俺としてはソフィアとの時間が出来て嬉しいんだけど……技術者が俺を追い出す理由がね…」


ふとラファエルが遠い目になり、私は首を傾げる。

そしてその理由を中々言ってくれない…


「………ぁぁ、ソフィア様がランドルフ国からいなくなりますと…」

「ソフィア様の案で開発が出来なくなりますよね。技術者にとっては死活問題」

「技術者にとっては何かを生み出すことに生きがいを感じるからなぁ」

「ソフィア様いなくなると、新しい物を作れないから嫌だよねぇ~」


………そういう理由!?

後方から騎士らの会話が聞こえ、私は思わず振り返った。

そして騎士らの顔を見た後にラファエルを見上げると、ラファエルは私を見ていて苦笑しながら頷いた。


「今まで見たこともないような機械案をソフィアは出してくれるから、技術者達は嬉しいんだよ」

「そう、なの?」

「そうなの。単純に同じ物ばかり作ってるのはつまらないものだよ。ああでもないこうでもないって知恵絞ってソフィアの案を実現させることが、楽しくて仕方ないってさ」


そう言われたら照れるしかない。

必要だと思われていることが嬉しい。

思わずニヤついてしまって、ふとラファエルの顔が視界に映ると、何故かブスッとしていた。

………って、え……なんで……


「………ラファエル?」

「………ソフィアが俺以外に必要とされてて嬉しそうに笑ってる…」


………まさかの嫉妬!?

え?

これ、嫉妬、でいいんだよね…?


「ソフィアの1番は、俺だよね?」

「う、うん…」


コクンと頷くとラファエルが嬉しそうに笑う。

あ~顔が熱い…


「ソフィア寒い? 顔が真っ赤になってる。戻る?」

「へ!? あ、だ、大丈夫」


ラファエルに指摘されるとますます恥ずかしくなる。

でも、スキー場予定地も見てみたいし、ラファエルに笑顔を向けた。


「そう? 無理しちゃダメだよ? 具合悪くなったらすぐに言ってよ?」

「うん」


私はラファエルに手を引かれるまま、歩いた。

周りが寒くて誤魔化せて良かった、と思いながら。


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