第515話 やるのはいいけれども
ゴタゴタしていたが、一旦落ち着きを取り戻し、私はハッとしてラファエルを見上げた。
ちなみにまだラファエルの膝の上だったり…
「そういえばラファエル、何か言いかけてなかった?」
「ん? ………ぁぁ、例の祭り、開催日を公表しようと思って」
「え!? もう屋台の商品作れたの!?」
「あはは。さすがに無理だよ」
「え……」
楽しそうに笑うラファエルに、私は固まる。
いや、だって祭りの日程公表って…
「全部はまだ無理だよ。あらかたは出来たけど」
「で、出来てるんじゃない…」
引っかけ止めてくれる…?
「ソフィアの提案した食べ物全て用意できてないから」
「でも、少しでも出来てるんでしょ? 凄い!」
「レオポルド殿も張り切ってるからね。でもあの時サンチェス国で試験的に売り出してた物しかない。うちも殆ど出来てないから、大々的には出来ないよ。食材が作れてないから」
「それでもお祭り出来るんでしょ!? 楽しみ!」
思わず立ち上がる。
それを見てラファエルも笑みを深めた。
「ハナビをするから夜になるんだけど、灯りをどうしようかと思って」
「提灯がいいよ!」
「チョ、チン?」
「ちょ、う、ちん! ソフィー! 絵を描いて!」
急いで紙とペンを取ってソフィーに渡すと、苦笑しながらも書いてくれる。
「………へぇ?」
ソフィーの図面をラファエルが覗き込む。
「火の取り扱いに気をつければ紙でも出来るんだけど、気にせず使えるように材質は工夫しなきゃだけど。灯りが透るように半透明がいいかな」
「成る程ね」
「それに提灯の灯りなら、花火の光を遮ることは少ないと思うし!」
「分かった。それで作製してみるよ」
ラファエルがソフィーから図面を受け取り、考え込む。
私はふと疑問に思った。
「………ラファエル」
「………ん? 何?」
「国境完成してないのに、いいの? 他国にも宣伝するんでしょ?」
「ああ、しないよ」
「え……」
「まずはランドルフ国民だけの参加。サンチェス国の屋台担当だけは来てもらうけど」
私は想像して、更に疑問に思って続ける。
「でもいきなり花火上がったら、近隣の国が騒ぎにならない?」
何しろこの世界になかった物だ。
いきなり花火が空に上がったら、攻撃を受けたと勘違いしないかな……?
「………」
「………」
「………ぁぁ、そうだね」
………これ、絶対頭になかったやつだ……
「………どうしよう?」
………いや、聞かないで…
「………各国の王に報告。娯楽だから心配するなと民に広めてもらう、とか?」
「それでいこう」
首を傾げながら言うと、ラファエルが即答した。
………いいんだ…
またラファエルは図面に集中し、これ以上邪魔しないように私は対面のソファーに座り直してお茶を頼んだのだった。




