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第485話 想像と違いました




「………こ、ここが西の領地、なの?」


馬車が止まって、ラファエルに手を貸してもらいながら降り立った。

道の整備はされており、綺麗な石の道なのだけれど…


「な、なにもない……」


無意識だけれども、ガルシア公爵領みたいな綺麗な店などが並んでいたり、活気あるところを想像していた。

けれど目の前に見えるのは、所々に家があるだけのガランとした風景。

周りは自給自足できるだけの申し訳程度の田畑。


「ランドルフ国でも育てられる食物を作らせてるけど、まだまだ小規模なのは否めないんだよね」


ラファエルは特に顔色を変えずに、私の手を引いて歩いて行く。

私達の後ろに従者達が続く。

畑仕事をしている住民達にジロジロ見られ、居心地が少し悪い。


「緑に囲まれて癒されますけれど…」


草花が多く、療養地には最適だろう所だけれど。


「だからこっちの領地には観光客は通らないんだよね」

「で、でしょうね……」


買い物目的ならガルシア公爵領を通る方が良い。

のんびり過ごしたい人はこちらに来るだろうけれど。


「ミルンクとコッコを放牧するにはこちらの方が適任だったんだけれどね」

「ですね。あちらより広い平原が確保できますね」

「子息の罪がなければ、すぐにでも命じたんだけど」


苦笑しながら道の具合を確かめていく。


「うん。国境からの道は順調そうだね」


障害物が何もないから遠くに見える国境まで、道が綺麗なのが分かる。

後方を見ると、まだ温泉街までの道の整備は完了していないみたいだけれど。


「ソフィア」

「あ、はい」


ラファエルに呼ばれて顔を戻すと、ニコッと微笑まれる。


「エイデン公爵の所に行くけど、徒歩でも大丈夫そう?」

「はい。わたくしは大丈夫です」

「じゃあ、向かおうか。あそこに見えている建物だから」


ラファエルが指差した方を見ると、100~200メートル先ぐらいに、別荘に見えるぐらいの他の建物とは比べられないほどの立派な建物があった。


「エイデン公爵家は、比較的国境に近いところにあるんですね…」


てっきり王宮に近いのかと…

公爵、だし。


「あれは別荘。今の時期は新しい食物の実験するために、こっちにいるって連絡来たから」


………ぁ、そうですか…

別荘みたい、ではなく別荘でした。

また手を引かれて歩いて建物に向かう。

その途中、元気よく走り回る子供達を見た。

田舎みたいにあぜ道を駆使して鬼ごっこをしているみたいだった。

ベチャッと足を滑らせて田んぼに顔から突っ込む子供もいた。


「だ、大丈夫!?」


私は思わず慌てて子供のところへ駆け寄った。


「うわ~~~~~~ん!!」


顔面泥だらけになって泣き出す子供。


「痛かったね。もう大丈夫だよ」


ハンカチで顔を拭いてあげていると、じぃっと周りから視線が…


「………ぇ」


私はいつの間にか子供達に囲まれていた。


「ねぇねぇおばさん、だれ?」

「お、おば…!?」


またおばさんって言われた!!

私普通だけれども、ここでは童顔――幼い顔の部類に入ると思うんだけどな!?


「………えい!!」

「うわっ!?」


唖然としていると、泥だらけになった子供――私が顔を拭いてあげていた子供に両手で押され、その場に尻餅をついてしまった。


「あいたた……」


油断してた…

いたずらっ子だなぁ…

と、私は呑気にしていた。

けれど――


「――何をしている」


私の両側からキラリと光る物が通り過ぎ………って!!


「お、オーフェス! ヒューバート! 止めなさい!!」


抜刀した2人がいつの間にか私の両脇にいた。

いやいやいや!!

子供相手に何やってるの!?

見るからに5・6歳児ばっかりだから!!

服装も平民ですから!!

そんな物騒な物見せないで!!


「ソフィア様のドレスが汚れました。あまつさえ触れるなどと。故意にしたそれは許されることではありません」


2人の目は殺気を帯び、さっきまで元気だった子供達は怯え、目に涙を溜めて、わんわん泣き出す子達も続出。


「この子達はわたくしのことを知らない様子。咎はありません」

「あります」

「ソフィア様は許容しすぎです」


そんな事言われても…

ラファエルに助けを求めるべく振り向く。


「………はぁ」


………何故ため息をつくのでしょうか…


「………だから、俺以外がソフィアに触れるなっつの」


………小声でも聞こえてますよラファエルさん。


「取りあえず剣を下ろせ2人とも。ソフィアが困ってる」


ラファエルに抱き起こしてもらい、私は立ち上がった。


「しかし――」

「物心ついたばかりだろう子供に、私達のことが分かるはずもないよ」


そう言って笑ったラファエルの目は笑ってなかった。

………言動と連動してませんよ…

私は直接言えるわけもなく、大人しくラファエルに抱かれました。


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