第432話 勘を取り戻そう
「1、2、3、1、2……」
私は許可を貰って王宮にあるパーティ会場でダンスの練習をしていた。
「ぁっ!?」
久しぶりに履いたヒールは、私の足に馴染んでなく倒れ込んだ。
「姫様!!」
慌ててフィーアが駆け寄ってくる。
騎士達も慌てるが近寄っては来ない。
「うぅ……やっぱり相手誰かしてよ!」
そう。
私は練習するも、相手がいなかった。
むなしく中央で1人くるくる回っている。
それに1人だから支えてもらえずに倒れた。
むくっと起き上がって騎士達を見るが全員が首を横に振る。
かなり必死に。
なんでよ!
アルバートはともかく、残り3人はダンスなどお手の物だろうに。
「まだ死にたくありません」
「失礼な!! 足を踏んだぐらいで死なないわよ!!」
「そうではなく…」
「ソフィア様に触れたら、俺達血祭りだよぉ~」
………え?
なんで血祭り……
私は暫く考えてガックリと項垂れる。
………ラファエルかぁ……
「触れるのはともかく、密着した状態で長時間過ごすなど、我々の命に関わりますからね」
………それで今も近づいてこないのか…
ぅぅ…
これじゃあ学園のパーティで恥さらしちゃうよ……
ラファエルの足も踏んじゃうかも…
「………はぁ……」
のそっと起き上がる。
ズキリと足首が痛んだ。
あ、捻ったみたい。
………もぉ……
転んでしまった自分に呆れてしまう。
でも弱音は吐いちゃダメだ。
私は王女で、ラファエルのパートナーなのだから。
足の痛みを顔に出さないようにして立ち上がり、ダンスの練習を続けた。
それから徐々に勘を取り戻していき、夕食の時間になる頃には、勘を取り戻していた。
何日か続けたら、サンチェス国にいたときのように踊れるようになるだろう。
その時間にラファエルが練習相手になってくれなきゃ、困るけれど。
………精霊にお願いしても、ラファエル怒るだろうなぁ…
これで最後にしようと足を踏みだそうとして、扉が開いたのが視界に入った。
「ソフィア」
「ラファエル」
仕事が終わったのか、ラファエルが近づいてくる。
「どう?」
「ちょっと勘が戻ってきたみたい。今から今日最後の通しをしようとしてたの」
「へぇ?」
………ん?
なんかラファエルの顔が……怖い…?
なんで?
「騎士達を相手にはしてないよ?」
「うん。ソフィアの身体からソフィア以外の匂いがしないからね」
………どんな確認の仕方よ…
「………どうしたの?」
「一生懸命なのはいいけどね。………怪我を隠してまで練習するのはどうかと思うよ」
「え……」
次の瞬間、ラファエルに姫抱きされていた。
「姫様!!」
私の足が向き出しになり、足首が腫れ上がっているのを視界に入れたフィーアが真っ青になる。
騎士達も慌てて駆け寄ってくる。
「まったく」
「………どうして…」
ドレスの裾に常に隠れていたはずなのに…
回ったときにドレスが舞っても、足首に視線が行かないように魅せていたから、みんな気付いていなかったのに。
「俺がソフィアの動きに違和感を――可笑しいことに気付かないはずがないでしょ」
………さすがラファエル、と言ったらいいのだろうか…?
「フィーア、すぐに治療の準備。医者呼んで」
「はい!!」
フィーアが走って出て行き、騎士達がラファエルと私の周りを囲み、急ぎ足で戻った。
「どうして怪我した時点で止めて治療してないの!!」
「大丈夫だよ。ちょっと捻っただけだし」
「ソフィアは王女でしょ!」
「は、はい…」
「お前達も少しは自分の主の挙動不審に気づけ!」
「「「「申し訳ございません!!」」」」
挙動不審って酷くない!?
「ただでさえソフィアは無駄に王女でいようとするんだから!!」
無駄って何!?
ダンスは基本だから出来なきゃダメですけれども!?
「ソフィア、あんまり酷かったらまた部屋から出さないよ!」
「すいませんでした!!」
外出禁止は嫌だ!!
私は大人しくラファエルの腕の中で大人しく運ばれました。




