第351話 集団でいきます
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「ぎゃぁぁぁああ!!」
兵士訓練場に響き渡る悲鳴。
それを私は円状に作られている見物席に座って見ていた。
ソフィーがお茶とお菓子を用意してくれているのを口にしながら。
「………みんな容赦ない」
「………まぁ、仕方ありませんが」
苦笑すると、背後に立っていたフィーアが相づちを打ってくる。
悲鳴を上げているのはアルバート。
そのアルバートを笑いながらボコボコにしているのは、他の私の護衛達。
………だけなら良かったんだけれど…
「ほら、足止まってるよ」
「だらしがないなぁ」
………息抜きと称して加わっている王太子2人。
かれこれ2時間弱。
………暇なのだろうか…
さらに周りは兵士の野次馬が囲っており、ワイワイと騒がしい。
「か、勘弁してくれ~~~~!!!!」
「痛い目見れば懲りるでしょ」
「女の子は大切にしなきゃねぇ?」
「暴飲暴食は止めようね」
彼らもあの食べ物の量は苦痛だったらしい。
まぁ、彼らの食事の量は普通だしね…
ヒュンッと木製の剣がアルバートに向かう。
「うわっ!!」
5対1でただ1人息切れしているアルバートが迫ってくる剣から逃げる。
が、逃げた先にも人はいる。
ゴッという音がし、アルバートの背中にまともに入った。
「ぐっ!!」
アルバートの巨体が地面に沈んだ。
「………ぁ、沈んだ」
「今のは痛そうですね…」
「自業自得です」
頬杖をつきながら言うと、ソフィーとフィーアが真顔で続ける。
………フィーアもまだ怒ってるんだ、と苦笑する。
アルバートが地に沈んだ所で、集団リン――集団訓練終了。
兵士達に木製の剣を返却し、みんなが私達の方へ歩いてきた。
沈んでいるアルバートは兵士達によって、隅の方へ寄せられ放置。
………兵士も容赦ないな。
まぁ、鍛えているから救護は必要ないか。
「ソフィア、ただいま」
「お帰り。お兄様、仕事はいいの?」
「今から戻るよ。息抜きしに来たらアルバートを鍛えてたから混ざっただけだし」
笑いながらお兄様は去って行った。
ラファエルは私の隣に座って、ソフィーが煎れたお茶を飲む。
「あ、不思議な味だけど美味しい」
「サンチェス国産のお茶です」
「え? 今まで出してくれてたっけ?」
「現在まだ開発中のお茶で、漸く他国の方に試飲で出していいと許可が出まして」
「ソフィアは飲んだことあるの?」
「あるよ。サンチェス国民だし」
今回出されたのは、日本で言う緑茶だ。
苦みも似ていて、私には慣れ親しんだ味。
他国ではお茶と言えば紅茶なので、ラファエルは飲み慣れないだろうに、美味しいという。
大丈夫なら良かった。
そしてお茶請けは、苦みを緩和するために甘みが強い菓子。
和菓子みたいな物と言えばいいだろうか。
………これ、私がアイデア出したみたいなんだけど、覚えてないんだよね…
昔無意識で言っちゃってたのかな…
「苦くない?」
「甘味と調和して丁度良いよ。悔しいなぁ」
甘味作りでは最先端をいっていると、自負していたのだろう。
実際そうなのだけれどね。
甘味を観察するラファエルを苦笑しながら見る。
「材料は……」
食べながら食材を推測していくラファエルを見て、私はソフィーに茶菓子の追加を求めた。
ソフィーが取りに行き、フィーアがお茶を煎れ直してくれた。
私はそれをもらいながら、真剣な顔をして考え込むラファエルを観察していた。




