表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
310/740

第310話 いつの間にかいる ―R side―




不意に意識が浮上した。

何か空気が揺れた気がした。

いないはずの人の気配がした気がした。

………暗殺か?

警戒しながら目を開いた。

ソッと身体を起き上がらせようとして、出来なかった。


「………ソフィア?」


俺の身体に腕を回し、胸元に頭を乗せ、すぅすぅと寝息を立てているソフィアがそこにいた。

………ソフィアだからここまでされているのに、気付かなかったのか…

って、そうじゃない。

サンチェス国王が伝えてきた5日目は、明後日のはずだ。

なのに何故ここにソフィアが?

あのサンチェス国王が伝えてきた日数より早くソフィアを返すはずがないのに…


「………ん…」


もぞっとソフィアが動き、思わずギクッと身体を震わせてしまう。

起こさないように元の位置に身体を横たえる。

………っていうか、どうやって入ってきたのだろうか…

仮眠のつもりで、自室のソファーに横たわっていた俺。

仮眠をとった後にまた研究開発する予定だったから。

それに俺の部屋には常に鍵がかかっている。

主である俺の指紋でしか開かないようになっているはずなんだが…

………まぁ、いいか。

そういえば、この部屋にソフィアがいるというのはなんだか不思議だ。


「………初めてだよな」


そっと起こさないようにソフィアの頭を撫でる。

そのままゆっくり天井に目を向け、ギクリとまた身体を震わせる事となった。


「………怖いって…」


天井の隙間からキラリと光る、じーっとこちらを見ている瞳と目が合った…


「………おかえりライト、カゲロウ」


音もなく降りてくる2人。

この2人の天井の隙間から目だけ出してるのって怖いよね。

目以外黒い布で顔全て覆っているから尚更闇に溶け込んでいるし。


「まだ帰ってくるはずのない予定だったよね?」

「それなんですが、急に姫が夜中にベッドから起き上がり、何を思ったか書き置きをして、王宮を抜け出しランドルフ国へ戻ってまいりました」

「………へ?」


言われた言葉が理解できずに、間が開いた上に変な声出してしまった…


「姫様、婚約者様に会いたいって言って、周りを見られない状態になってた。着の身着のまま火精霊ホムラに飛び乗ったの」

「追いかけるの大変でした。ヒューバート達護衛はサンチェス国で今頃慌てているでしょう」


………あのソフィアが?

何があっても影だけは置いていくような真似はしなかったのに。

それにソフィアが滞在していたのは王宮だ。

王やレオポルド殿に直接何も言わずに、そんな行動するとは思えない。

いくらお転婆だからって、城下ではなく、国を跨いでの行動にしては異常すぎる。


「………何があった?」

「………あったといえばありましたし、なかったといえばなかったです」

「………何それ」

「王妃の懐妊が確認されたぐらいです」

「え……」


か、懐妊?

確か王と王妃って……

………ぁぁ、王は50代だけど、王妃は確か40代前半、だったかな?

可能性はあるか。

3児の母だし。


「でも、それが急な帰国に関係ある?」

「ないでしょうけれど、思いつくのはそれぐらいかと…」

「あ、後、料理が受けつけなかったみたいだよぉ」

「………料理?」

「ああ…姫はこちらの味付けになれてしまって、豪華な濃い味付けはあまり好まれないらしいです」

「………それは辛いな」


食の国の王女が、食事できないなど辛いだろう。

残してはいけないと思うだろうし、無理矢理食べる食事は美味くもなんともないだろう…


「ソフィアが起きたら軽いもの……甘味とかどうかな」

「よろしいかと」

「ん。ナルサス――はまずいな」


部屋の外に立っているだろうナルサスに伝言を持たせようとして止めた。


「私が行ってきます」

「あ、そう? じゃあライトよろしく。アマリリスに用意するようにと」

「はい」


ライトがいなくなり、カゲロウも上で待機すると言って姿を消した。


「………ラファエル……」

「ん? ぁぁ、起こしちゃった?」


ソフィアが眠そうな顔で俺を見上げてくる。


「………ん~ん……だいじょう、ぶ…」

「そう? もうちょっと寝てていいよ」

「………ラファエルも……?」


服をギュッと握られ、不安そうな顔を向けられて、離れる選択肢が思い浮かぶ男がいれば見てみたい。


「いるよ。ちゃんとここにいるから」


ソフィアの腰に腕を回し、安心するように背を擦る。

それに安心したのか、こてんと俺の胸元に頭を乗せてくる。

………え、何この可愛い子。

………やばい、この台詞口癖になってきているような気がする。


「………起きたら一緒にご飯食べようね」


もう、研究などどうでも良くなった。

急いで作らないといけないのは分かっている。

でも、今はソフィアを甘やかしたい。

何があったのかさっぱり分からないけれど、疲れているソフィアを置いて何処かに行くなど、考えられない。


「………ん。ラファエル……大好き……」


………いや、そのまま寝息立てないでソフィア……

嬉しすぎて眠気吹っ飛んじゃったんですけど…

俺は苦笑しながら、ソファーの下に落ちてしまっていた布を取り、ソッとソフィアの上にかけた。


「………俺も愛してるよ」


ソッとソフィアの頭に口づけを落とし、ソフィアが起きるまでソフィアの頭をゆっくり撫でていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ