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第259話 知らせと行きたい場所




もう今日は休もうという時間の時に、報告が来た。


「し、失礼致します!!」

「騒々しい。何だ」


スッとラファエルは王太子の顔になる。

飛び込んできた騎士の様子に、緊急事態だと察せたから。


「申し訳ございません! あ、アダム・エイデンが牢の中で自害していました!!」

「………」


ラファエルが眉をひそめた。

………ラファエルの思惑が外れ、アダム・エイデンはこき使われる前にこの世を去る方を選んだのか。

なんて卑怯な男。

自分のやったことの落とし前もつけずに逃げるなど、貴族の風上にも置けない。


「ナイフ類は全て没収していたのだろう?」

「は、はい! ですが、自分の舌を噛み千切ったようで…」

「………はぁ」


ラファエルは呆れた風な息を吐いて、手で騎士を下がらせた。


「………行かなくていいの?」

「行っても後始末だけだ。詳しい検死が終わった後で書類が来るよ」

「………見張りはどうしてたのかな…」

「見張りと言っても、ランドルフ国は牢の前に見張りを置いておくわけじゃない。機械に監視させ、異常があれば待機している牢番に知らせるものなんだ」

「そうなんだ…」

「そりゃ厳重に閉じ込めておかないといけない者に対しては厳重に見張らせるけれど、それ程でもない者は機械で充分だ」


………つまり、ラファエルにとってはアダム・エイデンが脅威の存在ではなく、何があってもどうでもいい存在だった、と…

そりゃそうか…

ラファエルはアダム・エイデンを最終的には亡き者にするつもりだった。

その処分が早まっただけ…


「屈辱的な立場に追いやれなかったことだけが、悔しいけどね」


そう言いながら私の身体をベッドに押し倒すラファエル。


「先に寝てていいよ。俺は検死報告を待ってなきゃだから」

「じゃあ、私も起きてるよ」

「疲れてるだろう?」

「大丈夫だよ。それよりラファエルとお話していたい。………だめ?」

「俺に断る理由はないよ」


ラファエルに微笑まれ、私は横たえられた身体を起こして、ラファエルに真正面から寄りかかる。


「ねぇ、ソフィア」

「何?」

「昼間に言ってた娯楽施設作るなら一番最初は何がいい?」

「………え…」


ラファエルを見上げると、優しい笑みを浮かべていた。

娯楽施設、作ってくれるの…?

しかも……“最初”…

もしかして、あれ全て作ってくれるというのだろうか…


「すぐには無理だけど、温泉街を開放して、国の運営費に余裕が出来れば順に作りたいんだ。ソフィアが笑って過ごせる施設を、ここに増やしていく。………そうすればソフィアはもっと俺に可愛い笑顔を向けてくれるだろう?」


ラファエルに両手で頬を優しく包まれ、覗き込まれる。

かぁっと頬が赤くなっていくのが自分で分かる。


「そしてここを第2の故郷と思って、根付いてくれるかもしれない」

「………ぇ?」


根付く…?


「何でもないよ。それで、どの施設がいい?」


どうやら意味は教えてくれないみたいだ。

どういう意味だったのだろうか、と思いながら考える。

遊園地は機械開発に時間がかかるだろう。

現在ある技術を応用できればいいのだけれど、難しいかもしれないし…

水族館は何処から生き物を調達するか、捕獲してもいいものなのだろうか…?

動物園も同じ理由で難しいだろう。

植物園が一番無難――


「ソフィア」

「え?」

「難しい顔してる」

「うっ…」

「実現できるか出来ないかは後の問題だ。俺はソフィアが“一番欲しい娯楽施設”を聞いてるんだよ」


頭の上に口づけを落とされる。

………どうせ難しい顔をしている私も可愛いとか思われているのだろう。

ホント、ラファエルって私を……って!!

これ以上それは考えるな私ー!!

と思っても顔がさっきより熱い…


「それで、どれ?」

「………遊園地…」


私は今どこに行きたいか、そう考えて真っ先に出てきた施設を口にした。


「分かった。どれだけ時間をかけても必ずソフィアをユウエンチに連れて行くから」

「………ん」


言ってしまった私が思ってはいけないかもしれない。

でも、ラファエルが無理しなければいい。

そう思った。


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