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第238話 適材適所は人それぞれ




「で、アマリリス」

「は、はい!」

「何を持ってきたの」

「あ、ヨーグルトです」


ピクッと私は反応した。


「ヨーグルト!?」

「はい」


ぶよぶよ、ドロドロの正体はヨーグルトだったらしい。

確かに見慣れない物だからナルサスが気持ち悪いと称するわけだ。


「よく出来たわね」


刺繍類をソフィーが机から片付け、綺麗になった机にアマリリスがトレイを置いた。

トレイの上には、見た感じ確かにヨーグルトと、ジャムが入った器が2種類。

それと小皿が2つ。

スプーンも2つ。

私とラファエルの分らしい。


「牛乳が手に入ってますので何とか。こちらの赤い物は木苺のジャムで、橙色のはカンキのジャムです」


カンキ…ああ、ミカンに似た味の物か。


「木苺はともかく、オレンジジャムもよく出来たわね」

「作り方は分かってたので」


流石。

引きこもってただけあるわ。

ネットサーフィンがメインだったのだろう。


「果物も添えたかったのですが、今は城下に出ないようにした方がいいと思いまして…」

「そうね。でもヨーグルトを口に出来るだけ有り難いわ。材料は全て貴女達が管理していた物よね?」

「はい。私達だけが出入り出来る場所に保管を。離れるときはカゲロウ達に見張りをお願いしておりました」

「上出来」


私はヨーグルトを小皿に少し移してまずは一口。


「!」


口に入れた瞬間、私は目を見開いた。


「………アマリリス」

「………お口に合いませんでしたか…?」

「いえ、美味しいわ」


私の言葉にアマリリスはホッと息をつく。


「貴女、侍女見習いじゃなくて、料理人見習いになった方が良いんじゃないの?」

「!? 私クビですか!?」

「そんな事一言も言ってないよね?」

「言ったも同然です!! 私は姫様の侍女見習いです!!」


アマリリスに詰め寄られ、私はその勢いに驚いて身を引く。

な、何が彼女をこんな風にしたのだろうか?

侍女見習いは嫌々だったはずなのに。


「そ、そう…」

「はい!!」

「だ、だったらいいのだけど…ヨーグルト、完璧に再現しているものだから、そちらの方が能力を生かせると思ったのだけれど」

「それは姫様の侍女見習いでも出来ます!!」


お、おおぅ…

アマリリスが積極的なのはいい男限定だと思っていたのだけれど…


「アマリリス、下がりなさい。主に対してなんて事をしているのですか」

「す、すみません!!」


ソフィーに静かに怒られ、アマリリスは慌てて私から離れた。

私は気を取り直して木苺ジャムとカンキジャムをそれぞれヨーグルトに混ぜて食べた。

どちらも美味しかった。


「ホント美味しいわ。アマリリスを私専属料理人にしようかしら」

「………」


呟くと、アマリリスが不機嫌な顔をした。

私の言葉が気に入らなかったのだろう。

先程自分は侍女見習いだとキッパリ言ってたからね。

話しかけたわけじゃないから反論できないしね。


「ソフィア、俺も食べていい?」

「いいよ。毒味は終わってるし」

「うん。………って!! ソフィアが毒味役したらダメでしょ!!」


ラファエルがヨーグルトに手を伸ばしかけ、ハッとしたように突っ込んできた。


「言葉の綾よ。味がどうか試しただけ。マズかったらラファエルに食べさせるわけにはいかないし。ただ、好き嫌いがある味と食感だから、少しずつ食べてね」

「分かった」


ラファエルはそう言いつつも、スプーンに掬えるだけ掬い、口に入れた。


「………」

「………」


固まってしまったラファエルに、私は苦笑する。

口に合ったのか、合わなかったのか。

ラファエルが口を開くまでは分からない。


「こ、れは…癖があるな…」

「だから言ったのに…」

「ん。でも、嫌いじゃない」


そう言ってラファエルはジャムを入れて再度口にした。


「あ、食べやすい」


ジャムとの組み合わせはいいらしく、ラファエルの食が進む。

やっぱり乳製品を食べ慣れてないと分かれるな…

でもジャムとの組み合わせが大丈夫なら、フルーツにかけて食べるのも大丈夫だろう。


「ヨーグルトも牛乳と同じく、身体に良い物だからなるべく毎日食べた方が良いよ。食べ過ぎも良くないけど、1日1回朝だけとか」

「成る程ね」

「毒を身体から出すにも向いてるかもね」

「そうなの!?」

「いや、思いつきで言っただけだけど…」

「ちょっと研究させるよ」


ラファエルがその気になってしまった…

これからは適当に言うのを辞めよう…

って思っても言っちゃうんだろうなぁ…

苦笑しながらルイスを呼び寄せるラファエルを見ていた。


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