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第155話 彼にはやはり勝てません




「な、なんですかこれ!?」


思わず、といった感じで言葉を発したのは、フィーアだ。

言葉に出さずとも、マーガレットとスティーヴンも驚いている様子だった。

さっきまで重い空気の中食事をしていた3人の雰囲気が一気に華やいだ。

フッと思わず笑ってしまった感じの声が隣から聞こえ、ラファエルを見上げると、手で口を覆っていた。

それを見て私は笑ってしまい、ラファエルにちょっと睨まれてしまった。

照れだと分かったから、私はそのまま気にしないでおいた。


「ラファエル様が作ってくださった甘味ですわ。気分を軽くするのに一番でしょう?」

「はい! これを民は食べたことがあるのですね。何だか悔しいです!」


うぅっと悔しがるフィーアを見て、苦笑する。

本当に、普通の女の子だ。


「本当ですわね。早く甘味の店が出来たらよいですのに……わたくしも毎日食べたいですわ…」

「出来たら私が毎日買って学園に持ってこよう」

「ありがとうスティーヴン」


………笑い合っている2人は少し目の毒だわ…

最近ラファエルとそういう事ないな…と思ってしまう。

あったらあったで恥ずかしいのだろうけど…


「すまないな。腕の良い職人をサンチェス国の店舗に行かせてしまったからね。外観は出来てても商品が出来てないんだ」


………そうなんだ。

すぐ店が出来たと思ったのに、中々開店の報告がないと思っていたら、そういう事だったのね。


「サンチェス国にいる何人かにこちらに戻って作ってもらおうと思ってるんだけど、あちらが忙しくて中々ね」


ラファエルってほんといろんな事手配して……いつか倒れるわね…


「でしたら、うちから何人かどうですか?」

「ガルシア公爵家から?」

「それでしたらうちからも。教えたら何でも出来る器用な人材が揃ってますよ」

「クラーク伯爵家もか……良いかもな…」


2人の提案にラファエルは仕事モードになってしまう。

こういう時ぐらいリラックスして食事をすればいいのに…

………でも、それがラファエルだよね。

私は微笑んでお茶に口をつける。


「わ、私の所はご協力出来ず、申し訳ございません…」


あ、フィーアがまた暗い顔しちゃった。


「フィーア嬢、大丈夫ですわよ。出来ることは出来る者がしたらよいのです。自分が出来る範囲以上の事に手を出すことは、無謀というものです」

「それ、ソフィアの事だよね」

「ら、ラファエル様!」

「全部自分でしちゃおうとするソフィアだけには、言われたくない言葉だよね」


クスリと笑うラファエル。

思わずむぅっと頬を膨らませてしまう。


「もぅ、ソフィアは私以外の人がいるところでそんな可愛い顔をする。そんな可愛い顔するなら、私の腕に閉じ込めて午後の授業に出さないようにするよ?」

「っ!?」


かぁっと一気に頬に熱が集まる。


「な、何を仰るのですか!!」

「え? 可愛いソフィアは私の腕の中でジッとしてもらわなきゃ。悪い虫がついたら嫌だからね」

「そ、そんな方いらっしゃいません! むしろラファエル様に悪い虫がいっぱいついてます!」

「じゃあ、虫除けいっぱいまかなきゃいけないね。害虫駆除しなきゃ」

「え………」


笑顔で何怖いこと言っているのだろうか。

群がる令嬢の例えが害虫なの……?


「と、言っても早々に退散すると思うけどね」

「………?」


首を傾げると、ラファエルが机の上にドサッと大量のノートを置いた。

………え……今どっからこれ出てきたの……?


「午後の授業に出さないって言ったのは本当。これに目を通すのを手伝って欲しくてね。どうせ午後は文学と植物学。ソフィアなら問題ないでしょ」

「これは……」


一冊とって中身を見ると、罰のレポートだった。

成る程。


「分かりました。お手伝いしますわ」

「でしたらわたくし達もお手伝いいたしますわ。規約なら、私達も頭に入っておりますし、身についております」

「ですが、授業が……」

「大丈夫ですわ。午後ぐらいサボってしまっても」


マーガレットが茶目っ気にウインクした。

それに苦笑して頷く。


「わかりました」

「お付き合いしますわよね? スティーヴン」

「マーガレットがやるなら付き合うよ」

「そうこなくては」


こうして4人でやることになった。

流石にフィーアはBクラス故、勉強優先ということで送り出した。


「ですがラファエル様、合格した者は許すのですか?」

「ん? 許すわけないでしょ?」


思わず私は見ていたレポートを手から取りこぼしてしまった。


「ソフィアを虐めたんだよ? 私が許すと思う? 無理だと分かっていてやらせた罰だよ」

「………」


ですよねー。

そういう人でしたよねー。


「さて、流石に4人でもこの量は捌けないよね。助っ人呼ぼう」

「助っ人……ですか?」

「うん。おいでグリーン、ブラウン」


ラファエルが言うと、ぶわっとラファエルの周りに緑と茶の煙のようなものが出て、それが人の形になっていくと思えば、2人の男女がいた。

………って!

助っ人って精霊のこと!?

外見から風と土の精霊と判断する。

見た目が風精霊フウ土精霊ジンにそっくりで、背は頭1つ分小さいかな……?

眷属だから、分身のようなものと思ってれば良いのかな…?

それにグリーンとブラウンって……

私以上に名前適当過ぎない!?


「そ、その人達はラファエル様の精霊ですか!?」


スティーヴンが興奮した様子で立ち上がった。

そうか、姿を見えるようにしてるんだ。

………って!!

ラファエルが精霊使いこなしすぎなんですけど!!

私まだそこまで出来ないよ!?

わ、私も呼び出すべき!?

思っているとラファエルに目配せされた。

その目は出すな、と言っている。

ラファエルは、私の心を読めるのかしら…

大人しくしておきます…


「そう。風と土の精霊だよ」

「流石ラファエル様! 2人の精霊と契約しておいでとは!!」


………正確には9人だけどね…

そういえばユーグは水属性特大がラファエルと契約してしまって、嫉妬とかしないのかな……?


「それより先にさっさと終わらせようか。こんなもの見る価値もないけど、やらせた以上は評価しないとね。この紙にそれぞれ課題提出者の名前と横に評価を付けてくれ。評価は学園の評価と同じS・A・B・C・D・Eで頼むよ」

「はい」

「分かりました」


4人+2人で作業を開始した。


ラファエルの精霊も少し出してみました。

動物は何にしようか悩み中です。

次はもう一度シリアスになりそうです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 動物と人形両方なれたら便利ですよね~人手欲しい時は人型で癒されたいときは動物型で…あ、獣人型も可愛いだろうなぁ♪両方満たせて合理的(笑) 課題、手分けして後は写して回してたら課題は終わって…
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