第121話 何でも屋ではありませ…ありました?
精霊学の授業が始まった。
最初は見えてない人にも、ということでラファエルに教えられた事を繰り返し説明された。
更に詳しく。
見えていない人はこれから精霊が見えるようになるかもしれないからと、注意事項も。
精霊は何でも出来るわけではない。
精霊1人(匹とは失礼だから使わないらしい)に対して、1能力。
火の精霊は火だけ。
そして個体によって弱・中・大・特大・究極、と種類があるらしい。
精霊は生まれたときからその能力を宿し、一生成長することはないんだそうだ。
だから精霊と契約できたからといって、育成などはしないらしい。
それに最上級である究極の能力とは言っても、天変地異などは起こせないらしい。
あくまで、生活水準による基準の範囲内で、だそうだ。
………なんだ…
魔法みたいな派手なものを想像していた。
………でも、アマリリスについていただろう精霊の魅了みたいな力は、生活水準以上になるのでは…?
人の心を操るなど、人が使っていい能力じゃ無いと思うけれど…
よく分からないな…
「精霊が魅力的に感じるのは、それこそ精霊それぞれです。精霊は少ない人には当然精霊1人。ですが、精霊に愛される人は複数の精霊が周りに集まると聞きます。実際にその方が何人の精霊に愛されるかは、本人にしか分かりません」
………ぇ?
でも精霊が見える人には分かるんじゃ……
「契約された精霊は、他の人に無理矢理奪われないように、精霊自身が契約者以外の視界から見えなくなるようにします。精霊の性質のため、未だに解明されておりません」
………成る程…
「今見えていない方が自然と見えるようになったり、精霊達が強制的に見せようとした場合でも、見えるようになります」
………へぇ…?
じゃあ私も見えるようになるのかな……?
淡い期待をしたけれどすぐに捨てた。
ランドルフ国内の人だけみたいだし…
表紙に国外秘って書いてあるし…
やっぱり私知らなくて当然じゃない!
ラファエルのバカ!!
まぁ、知ったとしても、サンチェス国出身の私は見えないだろうから仕方ないね。
でもまさか本当に精霊なんているのだろうか。
教科書に精霊の絵が描かれており、特徴も詳しく書いてある。
見える人が書いたのかしら…?
精霊学の教科書は、図鑑のようで面白い。
眺めているだけでも楽しかった。
私が少しでもこの世界でファンタジー要素に触れられるなんて思ってもいなかったから。
ゲーム設定に無かった――ハズだし。
今度ラファエルに目の前で瞳の色が変わるところ、見せてもらえるかな?
頼んでみよう。
そう思いながら授業を受けた。
今日の精霊は火の特性を持っている精霊のことだった。
火属性弱 →種火に火をつける程度
火属性中 →薪など木に火をつけれる程度
火属性大 →キャンプファイヤー程度の大きさの火を出せる
火属性特大→大木を1本丸々燃やせる
火属性究極→森を焼き払える
………ん?
何処が生活基準の力なのかな!?
思わず教科書からラファエルを見てしまった。
視線に気づいたラファエルは、私の心の問いかけに気づかずニッコリ笑う。
いやいやいや!!
あり得ないから!!
生活水準じゃないから!!
立派な攻撃魔法だから!!
今すぐラファエルに詰め寄りたい!!
でも出来ない!!
グッと私は言葉を飲み込んで、ラファエルを思わず睨んでしまい、ラファエルが戸惑った表情を見せた。
………とにかく、もっと精霊のこと知らないと!
私は教科書に向き直った。
これでは究極の属性を持つ精霊が現れたら、ランドルフ国の人間が他国を容易く攻撃できる。
どのくらいの森を焼き払える力を持つのか知らないけど、これ、大事じゃない。
しかも誰がどの精霊と契約しているのか分からないのは非情に厄介だ。
私は帰ったらラファエルに問い詰める項目が増えて頭を抱えたくなる。
毎回毎回ラファエルは私に説明不足だと思うけど!
私これ今知れて良かった!
知らないままラファエルと結婚して…一生知らなければ、こんな危険な秘密を抱えているなんて、思ってもみなかっただろう。
何かあっても、自然現象怖い、とか呑気に思っていたことだろう。
私も、そして私の影達も。
………多分、天井で急いでどう対応するか考えているんだろうなぁ…
………はぁ……
私の考えることはまだまだある。
私のやることはまだまだある。
学生に戻ったと、のんびり考えている暇はない。
これは私のしなければならないことだ。
良かった。
私、実を言うともう私のやることはもう大してないのではないか、と心の何処かで思い始めていたから。
民の生活水準を上げる為のアイデアを出すことくらいだと思っていたから。
貴族達の闇の部分はラファエルの管轄で。
機械の発展もラファエルの管轄。
私の仕事はほとんどなかった。
これが新たな仕事。
そう思ってしまえば、私はわくわくし始める。
そんな自分の心に苦笑する。
くるりと手の中のペンを回すと、私はノートに精霊の性質と特徴、何に気をつけないといけないのか、頭に浮かんだことを書き出し始めたのだった。




