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下界の神様奮闘記  作者: LUCA
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神様と猫⑥

 

 神様の能力「探索」。半径500メートル以内にいる、姿が見えない生き物の目線に立つことができる能力。

 具体的には、自分が探している者が今見えている視界を、自分の視界に10秒間だけ映し出すことができる。これを分析することよって、その者が今どこにいるのか当たりを付けることができる。


 全員の神に備わった能力だが、まず500メートル以内という制約故に、天界から下界に対しては用いることができない。その上、天界では生き物が逃げ出すというケースは滅多に無いから、天界で用いることもほとんど無い。

 つまり、この探索は、神が持つ能力の中でも使い所の無い能力なのである。それがこんな所で使う時が来るとは。


 まず、すき焼きに探索を使った結果、すき焼きの目線が俺の視界に映れば、少なくとも俺の半径500メートル以内にはいることになる。

 そして、視界が真っ白だった場合、それは外の雪景色であることに間違いないので、すき焼きは外にいる。反対に何か見慣れた物などが見えた場合、この家のどこかにいる可能性が高くなる。


 当たりも付けずに晴人くんを外に出すのは危険だ。

 それに、すき焼きのご飯の時間になっても起きなかった俺にも多少の落ち度はある。もし外にいる場合は……、俺が探しに行こう__。


 話し合っている晴人くんたちを見る。晴人くんは今にも外に出ていきそうな勢いである。急がなければ。


 目を瞑る。目の奥の方まで神経を集中させる。

 そういえば、探索を使うのはいつぶりか。……あれだ。俺が若い頃、天界で気になってた若い女神の目線になりたいと思って使ったあの日以来だ? あの時はスケベ目的……、いやいや、あくまで「研究」目的として使用した。

 しかし、その若い女神の上司にあたるベテラン女神に見透かされ、危うく天界の裁きを受けるところだった……。ええい、そんなことを思い出していたら集中できん! 


 さらに集中を続ける。すき焼きの特徴を思い浮かべる。この間鳥居家で食べた、甘辛く煮た牛肉や豆腐、椎茸や長ネギを生卵に付け……、そっちのすき焼きじゃない。えーと、茶色の毛で尻尾が長くて、何故か俺に全然懐かないあいつ……。


 自分の視界が別の者の視界に切り替わる感覚がしてきた。完全に切り替わってから10秒しかない。そろそろか……。


 しかし、ほとんど切り替わってきた感覚がするにも関わらず、目を瞑った状態の視界と何ら変わっていない。つまり、視界が「真っ暗」なのだ。


 真っ暗な視界のままなので、完全に切り替わったかどうか最後まで分からない状態で数十秒が経った。おそらく、もう探索の能力は終了しているだろう。


 俺は悟った。視界が真っ暗ということは、最悪のパターンを想定しなければならない。それは、もうすき焼きが「何も見えていない状態」であること。すなわち、もう生きていない可能性があるということである。いや、でもその割には完全なる「死」を感じなかったんだよなぁ……。


 目を開け、晴人くんたちの方を見ると、今まさに晴人くんが外に出ようと駆け出していた。こりゃいかん。俺が代わりに__。


「!?」


 足元がふらつく。それを見た凪沙ちゃんが心配そうに駆け寄ってくる。


「大丈夫ですか?! すき焼きのことを心配して泣いてるんですね……」


「……へ?」


 目をこする。手にべっとりと涙が付いている。すっかり忘れていた。探索を使うとめちゃくちゃ身体が疲れるし、その上涙が止まらないくらい目が疲労するんだった……。


 すき焼きのことを心配するあまり、おいおい泣き出したように見える50過ぎのおじさんか俺は……。

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