マーリンさん、愚痴る
訓練場にある闘技場でバカ貴族率いるAクラスの1班と対峙する。
バカ貴族チームはリーダーのバカ貴族、取り巻きA.B、そして平民が2人と言う構成だった。
この闘技場には結界が施されており、中級以下の魔法を遮断される。
また、結界内では、魔法の威力が半減される。
更に高位の治癒魔法使いが待機しているので、まず危険はないのだが、即死だけには注意する必要がある。
「フン! いくら高位の治癒魔法とは言え即死すれば関係ないからな。
どこぞの平民は注意した方が良いぞ」
バカ貴族が挑発してきた。
こいつはさっきから平民、平民と同じ事の繰り返しだ。
語彙が少な過ぎるぞ。
「おい! お前はまだそんな事を言っているのか。
この学院では貴族も平民も平等だと何度言ったら分かる」
「これは、これは、レオンハルト殿下。
そもそも、それがおかしいのです。
我々、貴族は高貴な青き血筋、それを下賎な平民と平等に扱うなど、天と地を逆さにする様なものです。
この私がそれを証明してご覧に入れましょう」
(おい、あいつ、あんな事を大真面目な顔で言ってるぞ)
(流石にコレはドン引きですわ)
(何だか可哀想になってきたよ)
貴族の3人がひそひそと話している。
やはり、同じ貴族として何か思う所があるのだろう。
「ほら、お前ら真面目にやれ!準備は良いか?
お互いに刃を潰した武器で戦い、マジックアイテムの使用は禁止、気絶した者、俺が戦闘不能と判断した者は試合からリタイアだからな。それでは…………始め‼︎」
コーレル先生の合図で戦闘が始まる。
「おぉぉ!」
レオが駆け出すと左右をフォローする様にアルとクルスが続く、3人の後を魔法を詠唱しながら私とシアが追いかける。
先ず、お互いの距離を詰める様に動いた私達に対し、バカ貴族達はその場で迎え撃つ様に陣形を変えた。
平民の2人が前に出て槍を構え、その背後に取り巻きBが弓に矢をつがえて続き、最後列で、バカ貴族と取り巻きAが魔法を詠唱している。
思っていたより、まともな陣形ね。
剣と槍が打ち合っている周りでレオ目掛けて飛んで来た矢をアルが払い落とし、クルスがもう1人の槍を弾き、牽制する。
「駆けよ 炎の矢 【ファイアアロー】」
「駆けよ 疾風の矢 【ウインドアロー】」
バカ貴族と取り巻きAの放った魔法が同時にクルスに迫る。
「魔を断つ力 その手に宿れ【アンチマジックエンチェント】」
レオの持つ盾に魔法耐性を付加する。
するとアルがレオと戦っていた槍使いを引き受けて、レオはクルスを庇う。
魔法耐性を付加された盾はクルスを狙った魔法を受け止めた。
「雷よ 大地を走れ【ライトニングボルト】」
シアの雷属性魔法がバカ貴族パーティを駆け抜ける。
ライトニングボルトは威力は低いが、広範囲の相手をスタンさせる事が出来る魔法だ。
動きが止まった槍使い2人と弓使いをレオとアルが打ち伏せる。
クルスが素早くバカ貴族に走り寄ると短剣を振るい連撃を与える。
「風よ 逆ま、がぁ!」
クルスに至近距離から魔法を打ち込もうとした取り巻きAはシアの棍を打ち付けられ気絶する。
「炎の力よ 剣に宿れ【フレイムエンチェント】」
「はっ!」
クルスが気合いとともに火属性を付与した短剣を振り下ろそうとした時、バカ貴族は懐からガラス玉の様なものを取り出し魔力を込めた。
するとガラス玉は砕け散り、辺りに黄色味を帯びた霧が立ち込める。
私とシアは距離が有ったので霧に触れる前に後ろに退がる事が出来た。
しかし、レオとアル、クルスは霧に飲まれてしまった。
「くそ! 薄汚い平民の分際で、このサマール子爵家後継、ランスロット・フォン・サマール様に剣を振るうとは!」
霧の中に居る人間はバカ貴族以外全て倒れている。
「不味いですわ、恐らく麻痺毒を作り出すマジックアイテムです」
使用者以外に無差別に作用するタイプのマジックアイテムか。
確か使用に制限があったはずだ。
少なくとも模擬戦で使う様な物じゃない。
「どけ! 役立たずが」
バカ貴族は同じパーティの平民を蹴り飛ばすと彼が手にしていた槍を拾う。
「平民が貴族に逆らうとどうなるか教えてやろう」
バカ貴族はクルスに向けて槍を振り上げた。
幾ら刃を潰した武器で有っても全力で振り下ろせば大怪我、下手をすれば命すら危ない。
闘技場が騒然となった時、振り下ろされた槍をコーレル先生が訓練用の剣で受け止めていた。
「そこまでだ、ランスロット!
マジックアイテムの使用によりお前は反則負けだ! 勝者はSクラス。
今日の訓練はここまでだ。
片付けたら教室に戻れ。
マーリン、レブリック。悪いが武器庫の鍵は職員室の俺の机の上に置いておいてくれ。
ランスロットは俺と指導室に来い!」
シアが風魔法で霧を散らすと私は動けない人達の麻痺を解いていく。
闘技場の整備をレオ達、男子に任せると私とシアは雑談を交わしながら職員室のコーレル先生の机に鍵を返しに行く。
「それにしても……」
「汚いですわ!」
コーレル先生の机はなんだか混沌としていた。
どこかの街の土産物だろう、デビルサーモンを咥えたブラックベアやドラゴンを飲み込もうとする大蛇、世界樹を背負った大亀などの木彫り人形、何かの書類、図鑑に魔導書の類い、薬草や魔石などが乱雑に置かれている。
「レオ様もそうですが、どうして殿方はこう、だらしないのでしょうか?」
「あぁ、うちの師匠も整理整頓は苦手だったな」
私とシアは男共のだらしなさについて、愚痴り合うのだった。




