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91、モモ、ご機嫌になる~お仕事も遊びも全力の方が楽しいよね~中編

 キルマが机を回り込み、床に落ちた鶴を拾い上げる。


「キルマ、大丈夫? 危なくない?」


「えぇ。特になにもなんともないようです。しかし、さっき見た様子では精霊が中に留まっているかもしれません。モモ、これは私が預かってもいいですか?」


「うん。もともとキルマにも作るつもりだったから、それはいいけど……」


「調べてもらいます。結果には必ず理由があるものです。見た限りで、モモに害があるものではないように思いますから心配はいりませんよ」


「うん……」


「身体におかしな部分はないか?」


 バル様は自分の椅子に戻ると、桃子を手招いていた。なーに? とばかりに素直に寄っていくと、抱き上げられて横座りでお膝に乗せてくれる。頭を撫でてもらうと緊張がふにゃんとほぐれる。はぅー、びっくりしたよ。まさか、あんなことになるとは思いもしなかった。


「大丈夫だと思う。気のせいかもしれないけど、さっきお腹がすーってしたの。それって関係あるのかな?」


「……魔法を使えるほどセージがある子供は、制御を知らないままだと無意識にセージを使ってしまうことがある。それが精霊を惹きつけたのだろう。よくあることだ」


「そうなの?」


「あぁ。ただ、なにか感じたらすぐ周囲に言うようにしてくれ。それがモモを守ることにも繋がる」


「わかったよ。ちゃんと言うね」


「それから、原因がわかるまではそれは作らないようにお願いしますね」


「うん、作らない」


 というよりも、怖くて作れない。でも、お腹がすーってしたのには、覚えがあるんだよね。軍神様と繋がっていた時に私の中からセージが流れちゃってた感じと似てる。バル様が言うようにセージを無意識に使っちゃったならいいけど、もしかしてまた穴あき桃子になってない?せっかく五歳児まで戻れたのに、また一歳児に逆戻りは嫌だぁ! 違うよね? 誰か違うって言って!? 


 自分の想像に慄いて、バル様の固い腹筋にしがみ付く。相変わらずいい腹筋だね! ぺったりくっ付いて温もりを堪能する。バル様に腰を抱えられていると、身体がぽかぽかしてきた。これって、あれだね。バル様がセージを分けてくれているんだ。


「心配せずともセージが再び流れていくことはないだろう。それならモモに加護を与えた軍神が気づいたはずだ。今日の分を分けておく。自己回復もしているようだが、十六歳に戻る日が遠のくといけないからな」


「バル様…っ」


 保護者様との以心伝心レベルが上がっている。言わずとも察してくれるのがすごいね。桃子が元の身体である十六歳に戻るには、毎日誰かにセージを分けてもらう必要があるのだ。なので、食事の後や眠る前にバル様とスキンシップを取りながら魔力を分けてもらうのが日課の一つであった。


 その優しさが嬉しくてついつい五歳児の本能のまま、バル様に懐く。ここから離れたくないなぁ。安心出来るもん。腰を支える左手を小さな手できゅっと掴むと、優しく握り返してくれた。きゅっと握ると、きゅっきゅっと返してくれる。


 片手で書類を見ながら相手をしてくれるから、桃子の中の五歳児がご機嫌になる。すんごく楽しい! 


「ふふっ、良かったですね」


 にこにこしてると、執務机に戻って仕事を再開したキルマが柔らかく笑ってくれた。にぎにぎと手遊びしながら、バル様のお仕事を見学する。処理スピードは速いねぇ。書類の紙を取り、流し読み、サラサラと署名しているようだ。片手が使えないのに器用だなぁ。ほとんど速度が変わらない。時々、書かずに紙をよけているけど、それは許可出来ない書類なのだろう。


 机の上には書類と思われる紙が、電話帳サイズの厚さでどーんと控えている。一番上の書類にはなにやら予算計上と書かれており、その下に必要経費の文字が見える。鍛錬用の剣や防具、弓矢や的などもあった。


 ちょっと見ただけでも大変なお仕事なのはわかる。それに桃子の相手までしてくれるのだから、並大抵の頭の良さじゃないね! IQを計ったら高い数字が出て来そうだ。




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