表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
238/374

236、モモ、心に仕舞う~お子様演技はなに受賞ができますか?~前編

 小さな指で摘んだパズルのピースを、ああでもないこうでもないと首を右に左に傾けながら迷うことちょっぴり。絵柄をじっくり見つめて色の似ている場所に手を彷徨わせて、ここだ! と思った場所に押し込めばピースがパチリッとはまった。


 パズルってこの瞬間が気持ちいいんだよねぇ! お昼寝から起きた桃子は、字の練習をした後に復活して有り余ったお子様元気をテーブルの上のジグソーパズルに注いでいた。カイからプレゼントされたパズルは木製のピースで作られていて、形がぴったり合うたびに嬉しくなる。ピース数が300くらいなので桃子もそれほど悩むことなく純粋に楽しめていた。


「ふぅ、そろそろ見えてきたかな?」


 中側からはめていったピースは、綺麗な絵柄が形となってきたようだ。森の中で小鳥達が楽し気に飛び、風や炎の精霊達がその周囲で淡く光る様子が丁寧に描かれている。これって油絵? 色彩が鮮やかで、幼稚園児レベルというには園児に申し訳ないくらいの画力しかない桃子には絶対に描けそうにない。美術でデッサンをしなきゃいけなくなると、毎回自分の席で震えたもの。 


 ちょっと疲れちゃったので休憩! 桃子はお子様用の椅子から降りるとベッドに向かって歩き出す。夕食まで部屋にいるから自由にしてていいよってレリーナさんとジャックさんには言ってある。レリーナさんには渋られちゃったけど、専属護衛だからっていつも私と一緒じゃ、2人のプライベートな時間がないと思うの。


 自室に居るだけならお外に見張りの騎士さん達もいるから安全だよって説得しました! ジャックさんが「モモちゃんのせっかくの気遣いだから」って味方してくれて、なにかあったらすぐに叫ぶことを条件にようやく許可が出たのである。レリーナさんに「お寂しくなられたら、いつでもお呼び下さいっ!」って鬼気迫る表情で言われたっけ。


 ベッドの上でいい子にしてたバルチョ様を撫でようとしたら、ガシャンッて食器かなにかが割れる音がお庭でした。誰か重いものを落としちゃった? 大丈夫かなぁ? 気になった桃子はカーテンが開かれたガラス扉に近づくと外を覗き込んでみた。見えるのは……ガラス扉の前で待機している騎士のお兄さん。庭先で両膝をついて深く頭を下げている年若い侍女の女の子。それで、もう一人の騎士のお兄さん──ユノスさんが、その頭に剣先を突き付けてる!?


 見るからに剣呑な様子に驚いて扉を慌ててノックする。慌て過ぎてノックの音がコココココンッて連打になっちゃったけど、気にしてる余裕はなかった。だって、なにをしちゃったかわからないけど、侍女の格好をした女の子は青ざめた様子で震えてるし、見るからに命の危機に陥っている。


「加護者様、今はいけません! どうかお出になられずお留まりを」


「どうしてあの子に剣を向けてるの!? 危ないよっ、怪我しちゃう!」


「ユノスの腕ならば間違いは起こりません。失礼ながら、お声を落とした方がよろしいかと存じます。あの者は無断で王妃様の庭に入り、そのうえ、加護者様が大事にしておられた鉢を倒したのです」


「えっ!?」


 鉢が置いてあった場所を見ると、十三、十四歳くらいの女の子の向こう側に、今日芽が出たばかりの鉢が倒れていた。割れた破片からは土が溢れており、芽もすっかり見えなくなっている。桃子の目にじんわりと悲しみが滲んでいく。ううぅ、お水をせっせとあげて、ようやく芽が出たばかりだったから、すんごく切ないよぅ! 


 悲しみのあまりに自然と口がへの字になっていく。五歳児の涙腺は弱い。涙が滲むのを必死に堪える。が、我慢なの! ここで泣くのはあの子を責めちゃうことになる。桃子の様子を横目で見ていたユノスさんが剣呑な顔で、女の子を厳しく問い質す。


「貴様、加護者様の鉢を倒すとはなにごとか!」


「申し訳ございません! 足を引っかけてしまったのです。どうかお許しを……っ」


「そもそもなぜこの庭に入ったのだ? ここは王妃様が許可なされた方以外は立ち入り禁止となっている。貴様はどこの侍女だ!」


「アニタ様の、侍女でございます……侍女としてお勤めさせて頂くようになってから日が浅いため、お城の中を迷ってしまったのです。誓って、わざと侵入したわけではございません。信じてくださいませ!」


「加護者様、あの者の処遇はいかがなさいますか? ご命令下されば厳しく尋問して、罰することも出来ますが」


 ガラス扉を細く開けて、護衛騎士のお兄さんが気遣うように囁いてくれる。声を潜めているのは、あちらに素の桃子を見せないためだろう。桃子は目元の涙をごしごし拭って誤魔化すと、涙交じりに必死に許しを乞う侍女の女の子をもう一度みた。あれが嘘だとしたらすんごい演技派だ。女優さんや俳優さん達が獲る主演なんとか賞が獲れちゃうと思うの! お花の芽がダメになっちゃったのは悲しいけれど、それは桃子が心に仕舞っちゃえばいいのだ。五歳児だけど十六歳。ここは笑顔で答えなきゃ! 





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ