第六話 誘い込まれたフレム
「おい。どこまで連れて行く気だよ」
フレムが問いかける。男についてきたはいいが結局村の外まで出てしまったからだ。嫌な予感もしたが父親についても気になったのは確かだった。
それに例え騙されていたとしても今更この男に遅れをとることはないだろうというのがフレムの考えだった。
「ここらでいいか――」
男が呟き足を止めた。目を眇めフレムが問いかける。
「それで随分とお仲間を揃えていたようだが、こんなところまで連れてきて何がしたいんだ?」
「何?」
フレムを連れてきた男が怪訝そうに彼を見た。なぜわかった? とでも言いたげである。
「気づいてないと思ったか? 悪いがこれでも結構修羅場はくぐってきたつもりだ。殺気丸出しの気配ぐらいすぐわかんだよ」
「へへ、それがわかっててやってくるなんて馬鹿かこいつ?」
「おいゲスナ。こいつをやっちまえばいいんだろう?」
「あ。あぁそうだ。この野郎に俺は昔やられたんだよ。油断していたとはいえそれで俺はまともな冒険者として生きていけなくなった!」
ぞろぞろと出てきた男たちの問いかけに答えるゲスナ。そういえばそんな名前だったかと思い出しつつその様子にフレムは肩をすくめた。
「やっぱ人はそう簡単にはかわれねぇか。とくにゲス野郎程な」
「黙れよ。強がってるのも今のうちだ。ここにいるのは全員Bランク冒険者だ」
へへっと得意がるゲスナをフレムが呆れ顔で見やる。
「で? 等級は幾つだよ」
「粋がるなよ。俺は三級だ!」
幅広の剣を持った長身の男がフレムの横に立ち豪快に振り下ろした。
「あっそ」
しかしフレムはつまらなさそうに双剣を抜き受け止めた。その上で軽く受け流し足を掛けて転ばせた。
「Bランク三級程度で粋がるなよ。まぁその等級にしちゃ雑魚だがな」
「ふざけやがって――アレ・イル・エラ……開け魔道第十門の扉! 発動せよ炎術式ファイヤーショット!」
どうやら一人魔術師が混じっていたようだ。杖を振り上げると魔法が発動。大きめの火球が途中で分裂し小さな火球となってフレムに襲いかかった。
「氷双凍剣!」
しかしフレムは双剣の温度を下げ飛んできた火球を全て凍てつかせ砕いた。
「な! 馬鹿な!」
「温いんだよ! 炎双剣回転炎舞!」
燃え上がる双剣で回転を加え火炎竜巻を発生させ炎上したゲスナの仲間が吹き飛んでいった。
「これで終わりか準備運動にもならねぇな」
あたりに転がるゲスナの仲間を見てフレムが言い放った。その視線がゲスナに向けられる。
「で、ゲスナ言いたいことはあるか?」
「ヒッ!」
ゲスナを睨みフレムが近づくと情けない声を上げてゲスナが後退りした。
「俺の命まで狙ってくるとはな。案の定魂胆があったってわけか」
するとゲスナが五体投地で頭を下げ始めた。ペコペコとコメツキバッタの如くである。
「ゆ、許してくれ! 別に本当に殺すつもりがあったわけじゃないんだ! ちょっと脅してやろうと思っただけなんだ!「
「そうかよ」
拳を鳴らしながらフレムが近づく。するとゲスナはフレムの足に縋りつき涙と鼻水でグシャグシャになった顔で許しを乞うた。
「頼む! 何でもする靴だって舐める! だから、だから俺を殺さないでくれぇ!」
「くっ! 本当に見苦しい奴だなテメェは!」
フレムは汚物でも見るかのような目でゲスナを見下ろした。
「もういい! だけどなテメェら二度と俺に近づくな! 村からも出ていって欲しいぐらいだ! 少しでも視界に入ったらもう容赦しねぇぞ!」
「あ、あぁわかった。約束は――」
そこまで口にし、かと思えば頭を上げてゲスナがフレムに向けて何かを吹いた。どうやら口中に針を仕込んでいたようでありそれがフレムの肩に刺さった――




