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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第五章 ナガレとサトル編

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第一五四話 ブルーの目標

「というわけでブルーが冒険者を目指すのは問題ないと私は思うのですが――」


 ギルドに戻りナガレがマリーンに弟の資質について説明すると、額をその靭やかな左手で押さえ、はぁ、と美人受付嬢が吐息を漏らした。


「――想定外だわ。ナガレ達の手伝いをすれば自分がどれだけ向いてないか気づいてくるかと思ったのに……」

 

 どうやらマリーンはナガレであればブルーの欠点を指摘し、彼が冒険者をあきらめるきっかけを作れるかもしれないと密かに期待していたようだ。

 だが、その期待は残念ながら脆くも崩れ去ることとなったわけだが。


「……まさかブルーにそんな特徴があったなんてね。剣の腕がいつになっても上がらないし、力もないから絶対冒険者なんて無理だと思ってたのに」

「なんだよそれ~酷いよお姉ちゃん」


 ブルーがぷいっとそっぽを向き口を尖らせた。姉から冒険者はやめたほうがいいと何度も言われていた筈だが、なぜそこまでして諦めさせようとするのかまでは知らなかった様子。


「それにしてもどうせ使うなら剣がいいってずっと練習してたのに、剣の才能がなくてナイフの方が向いていたなんてね」

「マリーンは他の武器の可能性は考えなかったの?」


 やれやれといった様子でそうこぼすマリーンだったが、そんな彼女にピーチが疑問げに尋ねる。

 するとマリーンは肩を竦めその質問に答えた。


「他の武器と言ってもね。ナガレが来るまでは長い柄の武器なんか思いもつかないし、冒険者は大体剣だったでしょ。だから剣が上手くなれなくて魔法も駄目なら流石に向いてないかなって思えたのよ」


 一応、ナガレが広める前も突くだけになら使える槍や柄の短い斧なんかはあったが、これらは玄人好みと思われていたようで、基本は剣という考えが浸透していたようだ。

 

「ナイフも使ってる冒険者はいるけど……そういうタイプは戦い方も特殊だしね。それがまさか弟に当てはまるなんて思わなかったわ」 

  

 マリーンは冒険者の実力を見極める目は持ち合わせているが、かといって今の武器があってるかどうかまでは判断がつかないようである。

 だからかブルーの適正を見極めナイフを選択させるという考えには行き着かなかったのだろう。


「僕も冒険者といえば剣と思ってたしね。それに剣ってなんかかっこいいし」

「お前なあ、武器は格好で選ぶもんじゃないぞ」

「そういうフレムっちはなんで双剣選んだんだっけ?」

「……なんか格好いいから」

「人のこと言えないでしょあんた……」


 ピーチが呆れ顔で突っ込んだ。フレムも妙に顔が赤い。


「意外と最初の理由というのは単純なものですよ。重要なのはその後です。フレムはしっかり使いこなせるようになってますしね」


 するとピーチがナガレを振り返り、大きな薄紅色の瞳でじ~っとナガレを見つめ口を開いた。


「ナガレもその、合気をやるきっかけはそんな感じだったの?」

「……そうですね。私も似たようなものですよ」

 

 ナガレがニコリと微笑み答えると、ピーチの頬も薄っすらとピンク色に染まった。

 若干の含みもあったが、笑顔に目がいきピーチはあまりそこは気にしてはいないようだ。


「でもこれでお姉ちゃんも僕が冒険者になるのを認めてくれるよね!」

「……ふぅ、どうせもう駄目だといっても聞かないんでしょ? 仕方ないわね」


 ここで遂にマリーンが折れた。それを聞き届け、ブルーがやったやったとぴょんぴょん跳ねまわる。

 この辺りの反応にはまだまだ子供っぽさも感じられるが、それを微笑ましそうに全員がみていた。


「おお! マリーンの弟も冒険者目指すのか」

「最近見なかったが、前はよく来てたもんな」

「その度に怖いお姉ちゃんに仕事の邪魔って怒られてたけどな」

「ちょっと、誰が怖いお姉ちゃんよ」


 マリーンがギロリと睨むと、くわばらくわばら、と大の男が肩を窄めた。マリーンは冒険者からの人気も高いが一部の冒険者からは一目置かれていたりもする。


「でもよかった、これで先生にこのナイフのお金が返せるよ」

「え? お金?」

「はい、ブルーにはこのナイフの分の料金、二〇〇〇〇ジェリーですが、冒険者になってから自分の手で稼いで返してくださいと言ってあります。迷惑でしたか?」

「……ふふっ、なるほどね。流石ナガレね、判ったわブルーにはしっかり稼いでもらってちゃんと払わせるから」


 マリーンの言葉にはありがとうの気持ちも込められていた。話を聞いていた冒険者の中にはナガレぐらい稼いでるならケチ臭いこと言わずくれてやればいいのになどと囁いているのもいたが、マリーンはナガレの意図に気がついたのだろう。


 確かに今のナガレであれば、ブルーに対価を求めずナイフを贈ることなど容易い。

 だがタダで貰った武器と自分の力で稼いで手にした武器では重みが違う。それに、ナガレが敢えてナイフの料金を貸しとすることでブルーにも目標が出来る。

 

 人は目標があるからこそそれに向かって頑張ることが出来るのだ。だからこそナガレは安易に与えるようなことはせず、あくまで貸しにしたのである。


「じゃあ僕もまだまだナガレ先生に色々教わらないとね!」

「ちょっと駄目よブルー。ナガレだって護衛依頼も控えているし貴方にばかりかまけていられないんだから」

「え~そんな~」

 

 ブルーががっくりと肩を落とす。自分にあった武器も選んでもらいいよいよこれからって時だからこそ、今のうちに色々教わっておきたかったのだろう。


「大丈夫ですよマリーン。後四日ありますし、今日中に旅の準備は済ましてしまい明日はみっちりブルーに付き合ってもまだ時間に余裕はありますからね」

「そうね。旅の支度と言ってもそんなに揃えるものが多いわけでもないし、どうせその間とくにこれといってやることがあるわけでもないしね」

「先生! 勿論俺たちもその間付き合いますよ!」

「そうですね、乗りかかった船ですし」

「おいら達も付き合うよナガレっち、ブルーっち」


 次の日もナイフを扱った戦い方を覚えるために皆が付き合ってくれるとしり、ブルーは、やったやった! と大いに喜んだ。

 

「全くブルーったら、でも本当にいいの?」

「大丈夫ですよ」

「そう、じゃあごめんね。その代わりお礼は必ずするから」


 マリーンが両手を合わせて改めてお願いしてきたのでナガレはそれを快諾し、そして依頼を達成した分の報酬を受け取りギルドを後にした。


 手に入れた報酬に関してはブルーにも手伝って貰った分を分け前として渡す。その際ナイフの分をナガレに支払おうとしてきたが、それは貯まってからでいいと告げ断った。

 

 自分で貯まった分をしっかり把握したほうが励みになるからだ。


 こうしてナガレはその日は旅支度を整えるために街を回り、そして次の日はブルーの為に時間をあけるのだった――

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