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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第五章 ナガレとサトル編

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第一四四話 完璧な勇者~完璧な推理?~

 ワイバーンとレッサードラゴンを倒し、飛竜の渓谷を抜けたアケチ達はその直後夜営をしドラゴンの肉を素材に食事を摂った。

 

 魔物の肉と違い竜種の肉は食用としても利用できる。それどころか市場では高級食材として取引される程だ。

 竜種は肉は食用に皮や翼は防具や衣類などの素材に、爪や牙は武器類に加工される。骨は魔道具の材料として、内臓や血は薬としても重宝されるので無駄になる部位が無い。


 ただ、肉はそのまま調理するとなるとかなり難しい。竜の肉は死んでも魔力が循環し続ける。これが逆に旨味を深める要因となっているのだが、切り方や力の入れ方を間違うと魔力が乱れ肉の味が落ちてしまう上固くなってしまう。


 だがアケチはスキルの恩恵でドラゴン肉の旨味を実に九〇パーセント近くまで引き出した。竜の肉の調理は旨味の六〇パーセントも引き出すことが出来ればプロ料理人として引っ張りだことされており、そう考えれば食材の九〇パーセントの旨味を引き出したアケチの腕は驚異的と言える。


 当然騎士も含め旅に同道しているクラスメートも舌鼓を打っていた。終始考え事を続けているマイも、この竜肉の料理に関しては素直に美味しいと言っていた。


 ただ、やはり彼女は地球の仕事のことが気がかりで仕方ないようだ。ついでに言えば終始付きまとってくるシシオが鬱陶しそうでもある。


 シシオみたいなタイプの男が嫌いなのだろう。尤もこのような男を好きになる女のほうが少ないだろうな、と考えるアケチでもあるが。


 その夜は騎士が交代で見張りを行い、アケチとクラスメートはゆっくり眠りにつくことが出来た。アケチ達は帝国では勇者扱いであるため、このぐらいの待遇は当然のようである。

 

 そして明朝――出発直前に一羽の鷹が降りてきて黒騎士の女の肩に止まった。

 カラスの操る鳥ほどではないが、緊急の連絡用にこういった鳥を操る者は帝国にも存在する。

 馬よりも鳥のほうが伝達が早く済むからだ。やってきた鷹の脚には手紙のような物が括りつけてある。


 黒騎士はそれを解き、広げて内容を確認した。その間に鷹が鳴き上げ黒騎士の肩から飛び立つ。


「何が書いてあったのかな?」

 

 アケチが女に問いかけた。見ると女の形の良い眉根が上がり難しい顔を覗かせている。手紙の内容は彼女にとってはあまりいい知らせではないのかもしれない。


「それが――どうやらカチュア卿がまだ領地に戻られていないようで……」


 そう言って口籠る。彼女は様子を見るような目でアケチを見ていた。それを認め一応はアケチも神妙な顔を見せる。


「なるほど――カチュア卿といえばイヌズキ、ヒメキシ、ハナメデの三人が護衛についていた筈だったね。それなのに、か。三人とも実力は女性陣の中でも確かだったんだけど」

「私も彼女たちの実力は知っております。なので大丈夫かとは思うのですが、ただ、そのアケチ様のご意思を尊重し公にはしておりませんが――」


 やはり言いにくそうにしてアケチに顔色を窺ってくる。だが彼女の言いたいことはアケチにも理解が出来た。


 何せアケチのクラスメートの内、既にアキバ、ナカノ、オオミヤ、ドレイ、ニシジマ、コモリ、モモジマそして今彼女が伝えてきた三人が行方不明となっている。


 尤もコモリに関しては対して気にも止められていないが――他のメンバーはそれなりの力を持った連中だ。


 それが短期間の間に次々と消えていくのは帝国としても本来なら放ってはおけない案件だろう。

 尤も現在はアケチの力によって皇帝や幹部たちは彼に逆らうことが出来ない。


 故にアケチはあまり大事にはせずクラスメートにも(サメジを除いて)知らせることなく、捜索も少人数を派遣する程度で進めるよう命じてきた。


 だが流石に第五皇女とは言え帝国の姫である。それが行方不明となっているのに何もするなというわけにもいかない。

 それに――アケチは何かを思いついたような笑みを僅かにこぼしそして彼女に言った。


「これまでの動向を見るにカチュア陛下は巻き込まれただけの可能性もあるかな」

「巻き込まれた……ですか?」

「そう、突然行方が判らなくなったのは全員僕のクラスメートだ。今回も護衛にはうちの三人が付いていた。こうなるとカチュア卿は巻き込まれただけと考えるのが自然と思えるしね」

「……ですが、なぜ?」

「考えられるのは、相手は僕達のような召喚された者の事を知っている人物。そして狙うべき本命は僕達」


 アケチの推理に黒騎士の彼女はぎょっとした顔を見せた。


「し、しかし勇者様のことは帝国内でも秘匿されております。それなのに――」

「完璧なんてものは世の中には存在しないんだよ」


 アケチは心のなかで、僕以外にはね、と付け加えつつそう述べた。

 すると彼女が悩ましげな表情をみせる。


「しかし、心当たりはありませんね。これでは――」

「いや、心あたりがなくてもある程度足取りはつかめると思う」


 え? と女の切れ長の瞳が見開かれた。


「そんな驚くほどのことでもないさ。その謎の犯人は僕達を狙っている。だったら次に向かうのは――」

「!? まさか! 我々と同じ?」

「可能性は高いね。僕の推理が正しければクラスメートから情報を聞きだしている可能性が高いし」


 アケチは一つ頷きながら答える。すると彼女は目を細め考えこむ。


「ならば、道中は特に気をつけなければいけませんね。とにかく今よりさらに守りを固め――」

「それもいいけど、どうせならこちらからも仕掛けてみようか」


 アケチの提案に、え? と彼女は目を丸くさせた。


「相手が僕達を狙って同じ古代迷宮を目指してるのだとしたら、ある程度ルートを絞り込むことは可能さ。それに僕はこういう推理は得意でね」


 そう言って笑いながら、彼女に地図を広げてもらう。


「うん、予想だとこの山脈は間違いなく通ると思う。だから今から出れば相手を迎え撃てるだろうね」

「え? いや、しかしここは危険な魔物も多く人は避けて通る場所でございます。その為まともな道も走っていません」

「だからだよ。相手はこれまで一切尻尾を見せていない。つまり人目を避けながら移動している。そういった相手なら例え危険でもこの山脈を通るはずだ。ましてや腕利きのクラスメートを倒してきたとするなら尚更ね」


 考察し、話して聴かせるアケチの顔は何故か妙に愉しそうだった。


「だから、そうだね、ここは帝国の精鋭たる黒騎士様にお願いしようかな。五人だけど――その中の三人にこの犯人退治に向かってもらおう」


 そしてアケチは黒騎士五人に集まってもらい、その中で腕のたつ三人を選別した。


「……この三名ですか」

「うん? 何か不安があった?」

「……いえ、大丈夫です」


 選ばれた三人の黒騎士の一人が彼女に目配せをしていた。俺は大丈夫と言っているようでもあった。


「相手の顔などは判っておりますか?」

「それは不明だけど、この山脈に足を踏み入れる人間は先ずいない。だからこの山脈を通る人物がいたら――それが間違いなく敵だよ」


 そう言ってアケチは冷たい笑みを浮かべた――

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