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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第五章 ナガレとサトル編

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第一二七話 完璧な勇者③

いよいよ書籍版レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!は明日10日発売です。既に早売りで並んでいる書店さんもあるようですね。出版することが出来たのも応援して頂けている皆様のおかげです!本当にありがとうございます!

 迷宮攻略に望んだ四人であったが、彼らも一応は帝国から大切な賓客としても扱われている。故に他に四名ほど、いざとなったときに助けに入るための騎士が用意された。


 だが、その騎士もレベルは高くても40程度と――正直言うとアケチからすればあまりに矮小な連中だ。尤も監視の意味も強いのだろうからアケチとしてもそこで文句をいうことはしない。


 むしろ僕達のためにわざわざありがとうございます、と労いの言葉すら掛けたほどだ。

 そんな騎士も救世主が一体どれほどのものというのか? と値踏みするつもりでやってきていたに違いない。だが――その後の彼らの戦いぶりをみて騎士たちの表情が変わった。


 迷宮内の魔物は決して弱くはない。レベルは多少彼らより低いが数で攻めてくるタイプが多いからだ。

 

 しかしそんなものはこの四人には関係がなかった。アケチの光魔法と剣術で、シシオの膂力で、サメジが次々と行使する水魔法で、カラスの操る鳥と次々と奪いそしてストックから放たれる魔法やスキルで――通常なら何組もの冒険者が何日か篭って攻略する迷宮を半日もかからずクリアーしてしまった。


 しかもそれだけのことをしておきながらも、時間がかかりすぎたな、とアケチは不満を述べる有様だったのである。


 とても自分たちではこの連中には勝てない――騎士たちは心底それを痛感し、そして上に報告し団長から陛下の耳に彼らの功績が届けられる。


「此度の活躍ぶり団長のエルガイルより聞き及んでおる。これから更なる高みに到達するのを期待しておるぞ。それとこれは私からのささやかな贈り物だ受け取って貰えるかな?」


 謁見の間に呼び立たされた四人は陛下よりそれぞれ指輪を贈呈された。

 しかしアケチ以外の三人はすぐには手を出さず(実際はシシオとカラスがすぐに取ろうとしたがサメジによって阻止された)アケチの判断を待つ。


「どうかしたか? まさか何か仕掛けがあるとでも思ったか?」

「……いえ、僕の目でみる限りかなり役立つ魔導具ですね。これを身に着けてると魔法に対する耐性が上がります」

「なんだ、だったら問題ねえな。頂き!」

「あ、じゃあ俺っちも」

 

 アケチの話を耳にしシシオとカラスはすぐにそれを指に嵌めた。その様子を横目にしながらサメジがふぅ、とため息を吐く。


「サメジ、ありがたく拝戴(はいたい)しておくといい。それは中々役立つと思うしね」


 そう言ってアケチも指輪を中指に嵌め、似合う? と屈託のない笑顔を浮かべた。

 近くで様子を見ていた女官の頬が染まる。アケチに魔法を教えてくれている女魔導師の目も潤んでいた。彼女はアケチ達が召喚された日に色々と質問に答えてくれた人物でもある。


 勿論彼女の心も身体も既にアケチは掌握済みだが。

 

「お前たちの今後の更なる活躍を期待しておるぞ」

「はい、期待に添えるよう精進させて頂きます」


 笑みを浮かべながら皇帝が労うとアケチもそれに笑顔で答えた。ただ皇帝にしろアケチにしろその眼は全く笑っていなかったわけだが――


 そしてその後の一ヶ月はアケチ達もギルドの依頼をこなしつづけ、他のクラスの生徒達は騎士から手ほどきを受ける毎日。

 だがそれも一段落つき、いよいよアケチ達以外の生徒も冒険者として登録し外で活動してよいという話となった。


 これに緊張する者、喜びはしゃぐ者、その反応は十人十色であったが、とりあえず異世界の救世主を労うためといった名目で祝賀会が帝宮内で開かれる運びとなった。


「勇者様、今日はとても月が綺麗ですわ」

 

 そう言って一人の少女がアケチの肩に撓垂れ掛かってきた。ふたりはテラスに出て夜空を眺めていた。

 彼女はこの帝国の第四皇女だ。年はアケチより二歳下になる。皇帝の嫡男の次女でこの国では皇帝の子であれば男系の二親等までは皇女扱いとなる。


「ウルナ様、別に無理して私に付き合わなくて良いのですよ?」

「そんなことありませんわ! 私は自分の意志で貴方様の近くにいたいのです」


 ウルナは形の良い眉を吊り上がらせて不機嫌そうに言う。勿論アケチも彼女が自分を好いていることぐらいは理解出来ていた。ただ鬱陶しいのだ。


「そう言って貰えると私も嬉しく思います殿下」

 

 アケチは彼女の腕を取り手のひらにキスをした。一旦怒らせておいてこれである。ウルナは頬に手を当てうっとりとした顔でアケチをみやった。


 どんな女でもアケチにかかればこのざまである。例え食用として育てられているとわかっていても大切に扱われれば懐いてくる家畜の豚とそう変わらない。


「ですが――」


 そんな家畜がふと憂いの表情を浮かべアケチを見やった。

 何かを言いたげだったのでアケチが目で、どうぞ、と促す。


「……その、アケチ様は陛下にあまりよい思いを抱いていないのではないですか? 突如全く違う世界に召喚されてしまい、帝国の為に戦ってほしいだなんて――」


 そこで言い淀む。どうやら彼女はアケチに申し訳ない気持ちがあるようだ。


「そんなことはありませんよ。確かに最初は戸惑いましたが陛下には随分と良くしてもらってます。それに――」

「……それに?」


 一旦会話を切ったアケチにウルナは疑問げに首を傾げた。すると柔和な笑みを浮かべアケチが言葉を紡ぐ。


「この世界では、僕にとって最高の出会い(・・・・・)がありましたから」


 両頬を恥ずかしそうに押さえ、そ、それって、とウルナが彼を見上げて瞳を濡らした。

 アケチの答えを待っているようでもあるが――


「アケチ様、ここにいらしたのですね」


 すると今度は背後から彼に声が掛かった。クラスメートの姫岸 菜乃花だ。

 アケチが駒として見ている一人である。アケチのことが好きでサトルを虐めるよう示唆した時もなんの疑いもなく言うことを聞いてくれた扱いやすい雌だ。


 アケチと比べればカスみたいなものだが、それでも一応地球ではそれなりに裕福な家庭に生まれ育ち、上流階級の相手に対する所作も心得ているので今後何かと使いみちがありそうな雌だ。顔も良くスタイルもいいので権力のある豚どもに身体を使って近づけさせるのにも役立つだろう。

 この雌もアケチの正義のためならば喜んでその身を差し出すに違いない。

 

 だからアケチもニコリと微笑み彼女を振り返って、

「うん、ちょっと涼みにね」

と答える。ナノカの頬がポッと染まった。アケチは心のなかで全くチョロいもんだな、と彼女を評した。

 

 尤も彼女だけではない。すぐ隣で不機嫌そうにしているウルナにしても同じだ。世の中の雌はアケチにかかれば全員あっさりと懐柔されよく懐くようになる。


「あら、そちらに御座すはウルナ殿下ではございませんか。もしかしたらお邪魔だったかしら?」

 

 ウルナはあからさまに邪魔だと目で訴えたが、流石にアケチの前で彼のクラスメートでもあるナノカに文句も言えなかったのだろう。


「べ、別にそんなことはありませんわ、オホホ」


 そう心にもないことを言う。それをナノカは認め、それは良かった、とどこか勝ち誇ったような笑みを浮かべアケチに近づいた。


「ここは落ち着きますわね。どうも中にいると色々な殿方に声を掛けられてしまい、邪険にも出来ませんし、ですので私逃げてきちゃいました」


 ペロッと可愛らしく舌を見せるナノカ。するとその様子を面白くなさそうに見ていたウルナがアケチの隣に並び口を開いた。


「そうなのですか、随分とおもてになるのですね。確かにみたところ救世主様の中では二番目(・・・)に人気なようですし」


 

 そう言ってウルナがほくそ笑んだ。それにナノカが僅かに顔を引き攣らせる。確かに彼女も人気だがそれよりも圧倒的な人気を誇るのがマイだからだ。

 

「マイは隙が多過ぎなところがありますからね。だからか身分に関係なく誰にでも良い顔をしてしまいます。勿論それは彼女のいいところでもあるのですが、みる方によっては節操が無いようにも思えてしまうかもしれませんね」

「左様ですか。ところでアケチ様、女の嫉妬ほど醜いものはないと思いませんか?」


 腕を絡め、ふふっ、と意地の悪い笑みを浮かべながらウルナが言う。

 それにナノカの眉がピクピクと小刻みに震えた。


「でも僕は多少嫉妬心が強いぐらいのほうが、女性はより美しく輝けるとも思えるけどね」


 競い合うことで少しでもいい家畜になることもアケチは理解している。勿論そこに男も女も関係ないわけだが。


 しかしアケチの本心など露知らずナノカの顔が緩みに緩んだ。きっと自分の都合のいいように解釈しているのだろう。


「……ところでその首飾り、君は前からそんなもの持っていたかな?」


 ふと、アケチが彼女の首元に目を向け問いかけた。すると、あ、とナノカが声を上げ。


「その、これは騎士の方がどうしても受け取って欲しいと。私の戦いぶりに感動して憧れているということで、別に特別な意味はないようなのですが――」


 慌てふためき弁解するナノカ。するとくすりとウルナが微笑し。


「あらあら、素敵ではないですか。確か姫騎士の称号をお持ちでしたね? きっと騎士の方とお似合いかと思いますよ」


 その言葉にナノカが目つきを尖らせる。そしてアケチに顔を向け、罰が悪そうな表情を見せつつ言う。


「あ、あの、もしアケチ様が気に入らないようでしたら……」

「あら、いいではないですか。とてもお似合いですわよ」

「いや、どうかな? ナノカにそれは似合わないよ。外したほうがいいかな」


 アケチの言葉に、え? とナノカが口にし、そして慌てて首飾りに手をかけた。


「で、でしたらすぐに外しますわ! は、外し……え? う、上手く外れませんわ! ど、どうしてですの!?」


 狼狽するナノカ。しかしアケチが彼女の細い首に手を回すと、なんとも言えない表情を見せナノカの動きが止まった。


「はい、取れたよ。鎖が噛んじゃってたのかもね。それと、代わりにこれをあげるよ」


 そう言ってアケチは外したソレの代わりとなる首飾りをつけてあげる。

 するとナノカがうっとりとした表情を見せた。


 しかしそれを面白くなさそうな顔で見ているウルナであるが――


「そうだ、ウルナ皇女にはこれをお贈りしようかと思っていて、彼女の首飾りと同様ダンジョンの戦利品ですがよく似合うと思うのです」


 そう言ってウルナには水晶の髪飾りを一つ取り出し、彼女の髪につけてやった。

 その所為に、やはりウルナもうっとりとした表情を見せる。


「うん、ふたりともよく似合っているよ。ふたつとも身を守る効果が付与された魔導具でもあるから役に立つと思うよ」


 一見人の良さそうな笑みを浮かべアケチが言った。するとふたりともデレッとした顔を見せてくる。


 どうやら嬉しいようだ。家畜でも物を貰えば一丁前に喜ぶようである。


 そしてその後アケチは、ちょっと用事を思い出したので、と告げふたりを残しテラスを後にした。

 一頻り睨み合った後、フンッ! とそっぽを向き合うふたりをよそにアケチが移動を始めると後ろからサメジがついてきた。


「全く、モテモテで羨ましい限りだよ」

「茶化すなよ。それより丁度いいや。サメジも付き合ってくれ」

「俺にそんな趣味はないぞ」

「僕だってないさ。そうじゃなくてちょっと皆の様子を確認してから――陛下と話をする」



本日は20時頃にもう1話更新致します。その後は日付の変わる0時に更新し完璧な勇者の話は終了となります。

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