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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第五章 ナガレとサトル編

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第一二三話 プロローグオブサトル 前編

第五章スタートです。

これまでサトル関係は閑話としてましたがサトルとナガレ編ということでサトルの回もここからは本編と同じ話数をつけていきます。

なお今まで閑話を読まれていなかった方で胸クソが悪くなる話は苦手という方はご注意ください。


 サトルは何の変哲もない平凡な両親の元に生まれた。いやあえて言うなら生活に苦労するような貧しい家庭ではなく、かといって大金持ちというわけでもないそこそこ裕福な中流家庭といったところであっただろう。


 父親はそれなりに有名な企業で管理職を務め、若干頼りなさそうにも思えるが叱るときは叱るし家族思いのいい父親であった。

 母親は年にしては若いと言われ、見た目にも美人の部類に入るだろう。その点はサトルにとっても自慢の母と言えたかもしれないが、怒ると父親よりも遥かに怖かった。


 下には一人妹がいたが母親に似たのか可愛らしい妹だった。サトルは別にシスコンという程ではないが、妹に寄り付く男には警戒心を抱くぐらいには妹のことを可愛がっていた。


 妹も年齢を重ねるごとに小生意気にはなっていったが、それでもお兄ちゃんと慕ってくれる愛妹であった。


 サトルは中学生まで特に何の問題も起こさず過ごした。友達もそれなりにいたし学業も運動もトップとまではいかないがそこそこの成績を残した。

 

 中学校の卒業が近づき受験勉強も控えたその頃、父親の転勤が決まり急遽引っ越すことが決まった。引っ越しの予定日はサトルが中学校を卒業してからに決まった。妹は友達と離れることになり悪い気もしたが、物分りのいい妹だったので引っ越しには納得もしてくれた。


 サトルは引越し先から近い高校を受験することになった。サトルは真面目に勉強し見事狙いを定めていた高校に合格した。 

 サトルは両親や妹と合格を喜び合い、ちょっとしたお祝いもしてもらった。妹がくれた合格祝いも嬉しかった。サトルはそんな家族が大好きだった。

 

 だが――サトルにとってはこれが悪夢の始まりであった。


 高校入学後、虐めは最初は些細なことから始まった。しかしそれが段々とエスカレートしていった。靴に画鋲から始まり、鞄が捨てられ教科書が破かれ、そして次第に直接的な暴力に訴え始める。


 特に酷かったのは陸海空と呼称された三人であった。空と呼ばれた空飛 鴉(そらとび からす)は陰険な男で決して一人では行動に移さないが、何かあれば陸を連れて来て適当なことを口にし、陸と共にサトルに暴行を繰り返した。

 

 陸海空の陸である陸 獅王(りく ししお)は元から素行の悪い男で中学時代から数えきれないほどの問題を起こしていたような奴であった。


 正直よくこの高校に入れたなと不思議に思うほどである。いや、そもそも素行という意味では陸にしろ空にしろ酷いものだった。


 空は手癖が悪く万引きからスリまで中学時代散々繰り返し、陸は暴走族とつるみ暴行、強姦、強盗、殺人未遂とよくまともに進学出来たなと思えるレベルの行為を繰り返してきた。


 海である海島 鮫ニ(うみじま さめじ)は本人の素行には問題がなく頭も良かった為中学時代は優等生で通してきたがそれはあくまで表向きで、目につけた生徒を隠れ蓑に違法な物の売買をやり荒稼ぎしていたような男だ。

 

 勿論捕まるときは海ではなく利用していた生徒であり、そのせいで人生を駄目にされた人間も数知れず、女生徒も惚れさせて奴隷扱いし身体を使って金を作らせたりとやはりろくでもない人間であることには代わりはなかった。


 そんな三人にサトルは目をつけられてしまったのである。しかしこれは他のクラスメートからしたらありがたい話でもあったようだ。

 何せこの陸海空の三人はサトルに目をつけている内は他に特にこれといった問題は起こさなかったからだ。


 そして何故かはわからないがこのことが明智正義の評価を上げた。サトルがさんざん虐められているにも関わらず陸と空が問題を起こさないという点で明智が評価されたのだ。そしてそれは同時に担任である西島 勇も一緒であった。

 

 学内ではサトルの虐めを見て見ぬふりをするものがほとんどであった。だがある日たった一人声を上げたものがいた。


「貴方達、い、いい加減にしなさいよ! サトル君に毎日そんな事して何が楽しいのよ!」


 それはクラスで副委員長を務める立川 恵(たちかわ めぐみ)だった。ショートカットの髪をした真面目な女の子だが勝ち気な雰囲気も感じられる少女だった。


 そのメグミがサトルを庇ってくれた。虐めは酷くなる一方でクラスには誰も味方はいないと諦めかけていたサトルはこの時ほど人に感謝したことはなかっただろう。


 そしてこのことがきっかけで一時的にサトルに対する暴力は鳴りを潜めた。相変わらず些細な嫌がらせはあったがメグミが目を光らせてくれたおかげでそこまで酷い目にあわされることもなくなっていた。


 しかしそれは僅かな、そうサトルが過ごした高校生活の些細な間の出来事でしかなかった。

 ある日サトルがメグミに話しかけた時、彼女の肩がビクリと震えた。

 そしてサトルがいくら話しかけても彼女は目も合わせようとしなかった。

 

 そしてそうこうしてるうちに陸海空と女生徒の姫岸 菜乃花、犬好 杉瑠、花愛 瑠乃に囲まれる。


「貴方、メグミにしつこくつきまとってるらしいわね」

「……え?」

「メグミちゃんから聞いたよ~IDを教えてもいないのにスマホにメッセージが送られてきたり家の前で部屋をじっと窺ってたりしてるって~」

「本当キモい! ストーカーとか最低ねサトル!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ僕はそんなこと……」

「お前メグミにちょっと優しくされたからって勘違いしてんじゃねぇの?」

「全くだな。大体俺達が虐めてるなんて嘘を吹き込んだのはテメェなんだろ?」

「メグミに聞いたが随分と酷いことを吹き込んだみたいだな」

 

 六人に矢継ぎ早に捲し立てられ、それでもサトルは必死に違うと訴えたが全く聞き入れては貰えなかった。


 しかもサトルがメグミに目を向けると彼女は俯いたまま、

「いい加減にして! 毎日家までやってきてしつこく誘ってきて! 私そんな気ないから! それに本当はサトルが悪いのに私を騙して、貴方最低よ! 最低だわ!」

と、そう叫び、逃げるように教室を出て行ってしまった。


 そして――このことは放課後のクラスルームでも問題となり教師の西島すらもサトルを信じることなく、いや、寧ろ最初から信じる気などなかったのだろう。


 とにかく一方的にサトルが悪いことにされ針の筵となり――教室内でサトルを虐める免罪符が出来上がってしまった。


それからの毎日は酷いものだった。ナノカ、スギル、ルノもメグミのことをキッカケに陰湿な虐めを行うようになり、挙句の果てには教師のイサムまでもがサトルを馬鹿にし虐めを助長するようなことを言うようになった。


 当然メグミはもうサトルを庇おうとはしない。それどころか目さえ合わせようとせず、露骨な無視をし、他の陪観者と同じように見て見ぬふりをし続けた。


 虐めは更にエスカレートした。スギルの飼っている犬に体中を噛まれ更に男の大事なところも不能にされかけた。ナノカにゴミ扱いされ彼女の発言を理由に陸海空に両手両足を折られ人間ゴミ箱として教室の隅に放置された。


 そしてルノに無理やり飲まされた農薬入りのお茶は洒落にならなかった。病院に担ぎ込まれ流石の両親もサトルの異変に気がついた。

 

 いや、本当はもっと前から不審がっていたが両親や妹に心配かけまいとサトルは決してそのことを言わなかった。


 だがこのことがあって両親はサトルが虐められていることに完全に気がついた。いや、これはもう既に虐めなどといった話で済む問題ではなかった。


 サトルの両親は学校に抗議した。サトルがなぜこんなにも大怪我を負わなければいけないのか、なぜあんな物を飲まされたのか――


「少々過保護すぎはしないでしょうか? こんな些細なことで虐めだなんだと騒ぐのは流石にね。巷ではそういうのをモンスターペアレントと言うのですよ? 大体うちのクラスは全員仲がよくいい子ばかりです。そんな中お宅のサトル君だけが輪に馴染めず浮いてしまっていたのです。私もどうにかしようと色々相談に乗っていたのに彼は一切心を開こうとはしてくれなかった。だけど彼もきっと寂しかったのでしょうね。それにしても自傷行為でそれを虐めだなどと嘘をつくとは悲しい話です。きっと両親にかまって欲しくてそんなことをしたのでしょう。しかし家庭の問題をなんでもかんでも学校のせいにされても正直ね」


 しかしサトルの両親に対してのイサムが示した答えがこれであった。とうぜん両親は怒鳴り涙し、問題にすると訴えたが話は途中で打ち切られ、学校側はサトルの虐めを認めようとはしなかった。


 そしてその直後であった。サトルの母が根も葉もないことで学校に怒鳴りこんだ、色々と問題の多い両親らしいなどと近所でも噂されるようになったのは。

 

 そして――父親が痴漢の冤罪で捕まったのもこの時だった。しかも問答無用で警察署に連行され留置所にまで入れられた。

 しかもその直後見に覚えのない借用書を持って俗にいうヤミ金の業者が父の借金を取り立てにきた。朝でも深夜でも関係なく怒鳴り散らしサトルの一家は近所からも冷たい目で見られた。

 

 しかしいくら警察に電話しても民事不介入などといわれて一切取り扱ってくれなかった。深夜でも早朝でもお構いなしにやってくると母が訴えても証拠がないと言われしかも無実を訴え続ける父のことを持ちだされ自業自得と酷く罵られもした。


「全く貴方のお父様も随分ととんでもないことをしてくれたみたいですね。散々虐めだなんだといいがかりをつけてきておいてこれですか? 恥ずかしくないのですか? そういえばご主人のバッグから違法薬物も見つかったそうですね。このままだと起訴されて暫くは留置所からは出れませんよ。痴漢にあった被害者も絶対に許せないと厳罰を願っているみたいですしね。ヘタしたら有罪で刑務所です。今もやってない無罪だと騒いでるそうですしあまりに悪質とのことですからね。そうなったら会社にもいられない。なんでも借金取りまでやってきてるそうじゃないですか? どうするんですか? 学費とか払えるんでしょうかね?」

「そ、それは……」

「おやおやその表情、これは難しそうですね。サトル君、支払えないなら退学ですよ? 何せ彼は問題も多いですからね。虐めなどとありもしないことをでっちあげたのもそうですが、今まで黙ってましたが副委員長のメグミ君につきまとったりもしたのです。ストーカー行為というやつですね。真面目な彼女はそれで随分と心に傷を負ってしまいましてね。それでもこの私がなんとか間に立って穏便に済むようにしてあげたのです。それなのにサトルは、本当に恩を仇で返すというのはこのことですよ。でもね、いいでしょうそれも水に流しましょう。実は彼のクラスメートの明智 正義君は両親が警察のお偉いさんでね、ちょっと口添えさえしてもらえば痴漢の件も違法薬物の件もなんなら借金の取り立てだってもうこないように手を回すことも可能です。ただね、そのためには今回の件しっかり謝っていただかないと当校としてもね。他の生徒にも示しがつきませんし、サトルもありもしない虐めのことなど二度と口にしないと約束してもらう必要がありますしね。さあ、どうしますか?」

 

 母はイサムの前で泣きながら謝っていた。何故謝っているのか母は理解してなかっただろう。ただそうしなければいけないという気持ちにさせられた。全く悪くないのに……理不尽な行為なのに、その時の圧倒的な強者はイサムであった。


 そしてサトルもまた――母と一緒になって謝罪していた。


 アケチの口利きもあり父は起訴猶予となり釈放された。勿論本来サトルの父親は何もしておらず冤罪でしか無いのだが、それを訴えたからとどうにかなる相手ではない。起訴猶予なのも暗に余計なことはもうするなといった警告の意味合いのほうが強かった。何かあればまた何かしら理由をつけて逮捕されかねない。


 だから――サトルは諦めることにした。それを父と母にも伝えた。自分一人が我慢すればそれで済むと。妹だって高校受験を控えている。それなのに今父親が逮捕されるような事になれば一家揃って路頭に迷うことになってもおかしくない。場合によってはまた借金取りにも追われる日々が待っている。


 父と母は泣いてサトルに謝った。不甲斐ない私達を許してくれと――だがサトルは笑ってなんてことはないと両親に言った。

 いくらなんでも今回の件で少しは大人しくなるはずだと。自分が逆らわず我慢すればそこまで酷いことにはならないと。


 サトルは父と母は勿論妹には平穏な日々を送らせてあげたかった。だから自分が我慢して済む話であればそれでいいと自分に言い聞かせた。


 救いだったのは母が余計な心配は掛けまいと妹にはサトルの虐めの件は伝えず、父親の件も隠し通せたことだろう。

 借金取りの件だけは不安に思っていたようだが、そこは母が上手くごまかして、もう心配いらないと伝えてくれた。


 サトルは少なくとも妹のことはもう心配ないと信じ再び学校に通い始めた。

 だが、彼を待っていたのは更に過酷な虐めの毎日であった――

 


後編は日付が切り替わる6日の0時頃予定です。

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