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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第四章 ナガレ激闘編

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余話① 四神流戦武術の後継者

おまけ話的なものです。ナガレは登場しませんが……

「あ~まったく朝から暑苦しいよな親父も」


 四乃神 武人(しのがみ たけと)はそんな事をぼやきながら朝の通学路を歩いていた。

 齢は一六、無造作ヘアーの黒髪に端正な顔立ち。身長は一七二センチメートル程で一見どこにでもいる普通の高校生といった感じが漂う少年だ。


 ただそんな彼にも唯一普通の高校生とは違う点があった。

 それはタケトが古来より伝わる武術【四神流戦武術】正統継承者であるという事である。


 なるほど確かにそう考えてみると、学生服の上からでも判る引き締まった肉体は中々見事なものである。

 

 そして四神流戦武術の正統後継者ともなれば、毎朝学校へ行く前に鍛錬に勤しむことなどあたりまえ。

 今日も厳しい父の指導の下、まだ陽も昇っていない内から鍛錬に鍛錬を重ねていた。

 

 ただタケトは修行は別に苦にはならないが、熱くなれ! と連呼する元プロテニスプレイヤーのあの人の如く暑苦しい父には辟易としている部分もあった。


 その為、登校途中の愚痴は毎度の事になりつつある。


「ご主人様。僭越ながら申し上げますが、いい意味で急がないと遅刻です」


 するとタケトの横を歩く少女が妙な口調で忠告してくる。

 背中まで達する美しい黒髪が印象的な少女だ。切れ長の瞳に均等の取れたボディ、その風貌は世紀の大女優でも裸足で逃げ出しそうなほどであり、紛れも無い美少女と言えるだろう。

 

 そんな彼女は全体的には和の雰囲気ただよう女性ではあるのだが、何故か今の出で立ちは頭にヒラヒラとしてホワイトプリム、それに黒と白のエプロンドレスというメイド姿である。

 

 とは言えそのメイド姿も彼女にはよく似合っている。なぜか背中に括りつけられている箒が気になるところではあるが――


「あ~別にいいよ。そもそも道場でたのが8時だぜ? 別に俺のせいじゃねえよ。こんな時間までやらせる親父が悪いんだ」

「しかしいい意味で脳筋のご主人様なら走れば余裕で間に合うではありませんか」

「お前……いまさらだけどいい意味でといえば何いっても許されると思ってないか?」

 

 眉を顰めタケトが言った。


「私は四乃神家に仕える身として、敢えていい意味で苦言を呈させて頂いているのです」


 しかし凛とした口調で彼女がそう返す。それに肩を竦めるタケトだ。

 納得してるわけではないが、別に今に始まったことでもない。彼女との付き合いはそれ程に長い。

 

 そんな彼女の名前は命道 誇(めいどう ほこり)。幼少時代から共に過ごしているホコリは幼なじみと言えば聞こえはいいかもしれないが、彼女は四乃神家に仕える専属メイドである。

 とは言っても年もタケトと同じ、通う高校も同じであり、一応扱いはタケトの付き人兼世話役である。

 

 ちなみに彼女に関しては学校内でもメイド姿は変わらない。色々とコネを利用し特別待遇で認めてもらっているのだ。

 そんなことをして問題にならないのか? と最初はタケトも思ったようだが、男子はメイド姿のホコリに萌えまくり、女子からはメイド姿が可愛いと評判でもある。


 自前の箒でちょっとした汚れは自主的に掃除し校内を清潔に保っているのもポイントが高いのだろう。

 いい意味での変わった口調も意外と受け入れられている。

 唯一問題があるとすれば嫉妬した男子からタケトが妬まれることぐらいか。


 入学式直後などは一年の癖に生意気だと学園では定番のイベントに見まわれ、先輩やいきの良いヒャッハーな男子に呼び出された事も数知れず。


 だが、その全てを返り討ちにしてからは暴力で訴えるような連中はかなり減っている。

 その変わり靴箱や机の中などに死ねと書かれたデスレターが届く事は多くなったが。


「……なあホコリいい天気だな」


 そんなホコリと歩きながらタケトが空を仰ぎ言う。それにホコリも頷いてみせた。


「いい意味で確かに快晴で気持ちが良いですね」

「……うん、だからもうさぼろっか」

「いい意味で人間のクズですねご主人様」


 ホコリの言葉は中々に辛辣だ。いい意味でとついているのに関わらず何故か破壊力がアップしているのも流石である。


「でもこれから頑張って登校したところでどうせもう遅刻だぜ? あ、そうだホコリなんか欲しいのない? なんか買ってやるぜ?」

「ではいい意味でブラーダのバッグでお願いします。それと学校をサボるのは許しません」

「何気に凄いの要求された! 最低でも一〇〇万クラスだろそれ! それなのに学校もサボれないって鬼畜か!」

「いい意味で学校を堂々とさぼろうとしてるご主人様に言われたくないですね」

「随分と仲がいいじゃねぇかおふたりさん」


 タケトのツッコミをしれっとした顔で受け流すホコリ。

 

「するとどこからか頭の悪そうな怒号が耳に届いた。声のする方を見てみると、やはり頭の悪そうな改造を施した時代遅れの化石に等しい喧しいバイクに跨った、頭の悪そうなヒャッハーな連中が集まっていた、と俺は思った」

「なめとんのかテメェは!」


 可哀想な者でも見るような目を向けてタケトが説明口調で言うと、その頭の悪そうな男の一人が吠え声を上げた。

 流行りのモヒカンではなく、まさにザ! モヒカンといったヘアースタイルの男で、親がみたら間違いなく泣くか私の子供じゃありませんときっぱりと言い切りそうである。


「いい意味で個性的なモヒカンですね」

「お? そうか、わ、判ってるじゃねぇか」


 ホコリの言っていることはあくまで皮肉なのだが、モヒカン男はどうやら褒められてると思ったらしく顔を赤らめて照れた。


「言っておくけどホコリは別に褒めてね~ぞ。てか、お前だれ?」

「ふん! 俺はこの間お前が可愛がってくれた子分を纏める頭。極亜高校三年! 望牌 漢(もうひ かん)だ!」


 その自己紹介に思わずホコリが、プッ、と吹き出した。


「……いい意味で極悪高校のモヒカン、ぴったり」

「極亜高校のモウヒ カンだ! どんな耳してるんだテメェは!」

 

 そのやりとりに隣のタケトもゲラゲラと大声で笑っている。


「テメェ! 何がおかしい!」

「いい意味で、逆になんでおかしくないと思ったのでしょう?」

「言ってあげるなホコリ。俺は彼の両親のセンスに敬意を払うよ。そりゃグレるわ」

「うるせーーーー! とにかくだ! こいつらを可愛がってくれた礼はたっぷりさせてもらうぜ!」


 一方的に敵意を燃やしてくるモヒカンだが、モヒカンは勿論後ろで睨んできてる子分とやらにも記憶が無い。

 思うことは自動二輪の免許が取れて羨ましいという事ぐらいだ。


「……いい意味でご主人様は鳥頭。彼らは前に道場の近くの道路を暴走してたのを、うるせぇ! とご主人様が追い返した相手」


 そういえばそんな事もあったかなとタケトが呟く。だが、それはともかくとしてタケトはいいことを思いついたと悪い笑みを浮かべた。


「よし判った! そこまでいうなら付き合ってやろう! ただここじゃ目立つからな。いいところがある俺についてこい」

「ふん、いい度胸だ。だがそんなこと言って逃げるんじゃないぞ」

「大丈夫だっての。ほら、場所はすぐそこだからしっかりついてこいよ」


 そしてタケトはホコリと一緒にすぐそこの五〇キロメートル程先にある空き地に辿り着いた。


「よし、ここでいいな」

「ふざけんな馬鹿野郎!」

 

 モヒカンが怒鳴りちらしてくるが、何故怒っているのかタケトには理解できなかった。


「お前怒りっぽいやつだな。ハゲるぞ」

「フルマラソンを軽く越える距離走らされて怒らないほうがどうかしてるわ! そもそもなんでこっちがバイクなのに平気な顔して前走ってるんだよ!」

「俺足には自信があるんだ」


 既にそういうレベルの問題ではない。


「いい意味でご主人様の体力は凄い。毎晩一〇回以上オナ――」

「うわああぁぁああぁあ! な、なんでお前がそれ知ってるんだよ!」

「メイドの嗜み」

「何の嗜みだよ!」

「いいかげんにしろイチャイチャしやがって!」


 ふたりのやりとりにモヒカンが切れた。彼にはふたりがラブラブな感じに見えたようだ。


「生まれてこの方女性に全くモテた試しがないだけに、ふたりのやりとりが眩しく見えてつい怒鳴ってしまったのだろう」

「よ~し、絶対殺す。死んでも殺す」


 タケトが彼の心中を察し口にするとモヒカンの頭でピクピクと血管が波打った。


「いい意味で死んだら殺せない」

「ぐっ、顔は可愛いくせに減らず口だけは達者な女だ」


 そして拳を握りしめ、ぎりぎりと歯噛みしながらモヒカンが言う。


「ヘッド! もういいからやっちゃいましょうぜ!」

「そうです! こっちは人数では圧倒的に勝ってるんだ!」

「こないだの借りしっかり返させてもらうぜ!」


 そしてヒャッハー達がバイクを降り、それぞれ鉄パイプや木刀、メリケンサックに警棒などを手にとり始めた。

 

 どうやら本格的にやる気なようである。


「仕方ないな。でもまあ、少しは暇つぶしになるか」


 連中を前にしてタケトが構えを取る。武器を手にした相手を見ても全く動じる様子が感じられない。


「ふん、生意気な口が聞けるのも今のうちだ。さあテメェらやっちまえ!」


 モヒカンが命じると、ヒャッハー! と声を上げ、男たちが一斉に襲いかかる。

 かと思えば二〇人ばかしがタケトの周囲に倒れていた。完全に気を失っている。


「な、なんじゃこりゃーーーー!」

 

 モヒカンが叫んだ。武器持ちの子分たちがまさにあっという間にのされてしまったのだから叫びたくなる気持ちもわかる。


「おいおいこれじゃ準備運動にもなりゃしないぞ」


 そしてタケトがパンパンっと手を払い誰にともなく言った。そしてモヒカンに身体を向け直す。


「あんたは少しは楽しませてくれるんだろ? 判ってるぜ俺は。そのモヒカン――飛ばすんだろ?」

「飛ばすか!」


 目を剥いて怒鳴るモヒカン。どうやらぼう星雲から来た兄弟の一人のように上手くはいかないようだ。


「く、くそ、なめやがって。だがな――お前はオツムの方は弱いようだな」

「黙って五〇キロついてくるモヒカンに言われたくないけどな」

「う、うるせえ! とにかくだ、お前、俺達にばかり気を取られてたようだが、女はいいのか?」

「何?」


 そう言葉を返し顔を顰めるタケト。そしてモヒカンの他に残り一〇人程いた子分たちがいない。


「そ、そんな、まさかお前たち――そ、そんな馬鹿な事を!」

「が~っはっは! そういうことよ! 見ろ後ろを! お前の女が人質に――」


 そう言ってモヒカンが指を向けた先には――タケトを襲った連中よりも酷いことになってる子分達と手に持った箒で掃き掃除しているメイドの姿。


「あ~あ、妙な動きしてるからもしかしてと思ったけど、よりによってホコリに手を出すなんて。あいつ俺以上に容赦無いんだぜ?」


 タケトの言葉に愕然となるモヒカン。まさかメイド姿の少女がそこまで強いとは思いもしなかったのだろう。


「で? どうすんの?」

「くっ! お、俺は極亜高校を纏め上げるヘッドだ! てめぇなんかに舐められてたまるかよ!」

「その心意気はよし」


 メリケンサックを嵌めた手で殴りかかってくるモヒカンに、タケトは敬意を評し構えを取る。


「四神流戦武術――白虎」


 そして腰を落として左右の手を上下に持って行き、虎を見立てた構え――これが四神流に於ける白虎の型である。


「行くぜ!」


 気勢を上げ、大地を蹴り、向かってくるモヒカンの懐に一瞬にして潜り込む。

 かと思えば下の手を突き上げ、見事モヒカンの顎を砕いた。

 ぐぶぇ! と情けない声を上げたモヒカンは、その身をきりもみ回転させながら一〇メートルほど舞い上がり、そして勢い良く落下する。


 当然だが、これでモヒカンの意識は完全にどこかへ持っていかれた。

 ピクピクと痙攣し、暫く起き上がってくることはないだろう。


「あちゃ~もうちょい手加減しておくんだったか」

 

 タケトは頬を掻きながら、参ったなといった表情で口にする。

 

「いい意味でご主人様は容赦無いです」

「ホコリには言われたくないけどな」

「……ところでご主人様、なぜこんな場所まで?」


 半眼のホコリに問われ、何のこと? と惚けたように目をそらすが、それで当然納得するわけもなく。


「……サボる為にですねご主人様」

「そこはいい意味でって言ってくれないのかよ」

「全くいい意味ではありませんので」


 そこははっきりと口にするホコリであり、タケトは苦笑するが。


「ま、ここまで来たらもう確実に間に合わないし、適当に家に帰ろうぜ」

「いい意味でご主人様なら走れば間に合います。ダッシュです」

「いい意味で疲れた」

「……真似しないでください。それにいい意味でご主人様は体力馬鹿です」

「酷い!」


 そんなやりとりをしてると、ホコリが溜め息をつき、そして悲しげな表情で目を伏せ言った。


「……折角いい意味でお弁当を作ったのに、学校でご主人様と一緒に食べようと……それも無駄なのですね」

「いや、お前いつもお弁当作ってるだろ。今日に限らず」

 

 チッ、とホコリが舌打ちする。


「いま何か舌打ちした?」

「いい意味でしてません」

「いや、したよね?」

「いい意味でしました」

「あっさり認めちゃったよ! 何その嫌な切り替えのはや――」


 タケトがそこまで言ったところで――突如、ふたりの足元に何かが光る。

 へ? と視線を地面に向けるタケトだが、そこには複雑な形の文字が大量に浮かび上がっており――


「え~と、これって?」

「いい意味で、魔法陣ですね」

「いや、だからなんで魔法陣? ってうぉ!」


 疑問符混じりにタケトが口にすると、光は更に強まり、そしてふたりの視界は白に支配され――直後、ふたりはその場から完全に消え去ってしまうのだった……。

 

いつごろ出そうかなと思っていた新キャラです。

今後どう絡むかといったところですが一先ずもう少しお付き合いいただけると幸いですm(_ _)m

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