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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第四章 ナガレ激闘編

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閑話其の二三 迷いなき復讐を

「全く揃いも揃って同じような事しか言えないのかよ」


 三人の反応に、吐き捨てるようにサトルが返した。

 どうやら誰しもがサトルが死刑にされた事を信じて疑わなかったようで、故にサトルを目にしての言葉は一様に同じなのである。

 そしてそれがまた腹立たしさに拍車を掛ける要因となっているわけだが。


「ということは……あんたが! あんたが私達をこんなひどい目にあわせたわけ!」

「サートールー! テメェ! 雑草の癖によくも! よくも私達を!」


 そして――驚いたことに先程まで震えていたスギルとルカが、サトルが正体を見せた瞬間に怒りを露わに叫びあげてきた。

 

 これには思わずサトルも変な笑いが込み上げてきてしまうが。


「サトル――貴方如きがこの私を! この私を辱めるなんて! 一体どういうつもりですの! この蛆虫が!」

「どういうつもり? 聞いてなかったのか? 俺は復讐だといった筈だが?」

「何が復讐よ! 大体その喋り方キモいんだよ!」

「サトルの癖に! サトルの癖に! サトルの癖に!」

「大体復讐ですって? とんだ逆恨みですわね! 犯罪者の癖に! 死刑になったのは貴方がおこなった反吐が出るような所業によるものでしょうに。自業自得の分際で私達を恨むだなんてお門違いもいいところですわ! やはり明智様の判断は正しかったですわね! こんなことなら死刑になるまえに私達で殺しておくべきでしたわ!」

「ガルルちゃんとグルルちゃんに噛み殺させればよかったよ!」

「薄めたりせずそのまま飲ませておけば良かったわね!」


 この三人の反応に、サトルはある意味安心した。 そう、何も変わらない。異世界に来ても全く変化のない。

 この三人はあいも変わらずの下衆。だからこそサトルも改めて認識できる。

 間違いなく復讐に足る屑共だと――


「本当に、本当に良かった、貴様らが何も変わってなくてな」

「は? 貴方何を言ってますの? 頭おかしいのじゃなくて?」

「ああ、そうだな。確かに俺はもうおかしいのかもしれない。だがそれでいい。だからこそお前たちに一切の躊躇なく――」

「お待ちなさい」


 今、まさに己の手に悪魔の書を現出させようとしたその時――サトルと三人の間に、あの姫騎士が立ち塞がってきた。

 その行為に思わずサトルも眉を顰める。だが立ち塞がったのは姫騎士だけではなかった。生き残っていた騎士や冒険者が全員三人を庇うように立ち塞がったのである。

 しかもそれぞれ山賊から奪ったのであろう武器を握りしめ、明らかな対立の意思を見せてくる。


「どういうつもりだ? 言っておくが邪魔立てするなら俺はもう容赦はしないぞ」

 

 既にサトルは仮面を外し、しっかりその素顔を見られている。

 だが、サトルはその事自体は気にしている様子はない。

 ただ、復讐の邪魔だけは許すことが出来ず、強い殺意をその眼に込めた。


「私には私の矜持がある。もし今ここでお前の言うとおりに逃げていたら――もう私は領主を名乗れない」


 だが、姫騎士のその言葉で目を丸くさせ、そして告げる。


「……大げさだな。第一その三人にそんな価値はない」

「それは私の決めること。それに少なくともお前なんかよりは彼女たちの方が価値がある。護衛として色々助けにもなり親しくもなったわ。そして――彼女たちは私の夢の実現の為にも必要な人物だ。ここで失うわけにはいかない」

「……姫様」


 姫騎士に庇われているナノカが感慨深そうに呟いた。

 それがサトルには気に入らない。こんなことで僅かでも希望を持たれるのは本意ではない。


「――一体何の役に立つというんだかな」


 思わず吐き捨てるように言う。しかし姫騎士は裸体を晒しているような状況にも関わらず、凛とした佇まいで言い放った。


「それはこれから彼女たちと相談し決めていくつもりだったわ。ですが彼女たちにも協力してもらい私はこの帝国を変えたいと思っている」

「帝国を変える?」


 思わずサトルは反応し眉を顰める。


「そうだ。帝国には問題が多い。特に女性は蔑視され権利も最悪。お前がやったような真似をしても平民なら文句も言えない」

 

 山賊たちにされたことを思い出しての言葉だろう。

 確かにそれはサトルの所業による結果だ。サトルとてそれは十分理解している。


「だから私はこの国を変えたいと思っている。今まで辛酸を嘗め続けてきた女性の権利を拡大するため。勿論同時に貴族ばかりが優遇される国のあり方も見直し、誰もが平等に暮らしていける新しい帝国を作り上げる。それが私の夢です。その為ならどんな苦難にでも耐えてみせる。今ここでお前のような男に邪魔立てされるわけにはいかない!」


 姫騎士の言葉に――思わずサトルが考えこむ。サトルからすれば、帝国の貴族など皆同じで平民を見下し自分たちの私腹を肥やすことだけを考えているような連中だと思っていた。

 

 だが、今目の前に立つ姫騎士はそんな連中とは何かが違うと、そう思い、僅かに心が揺れた。

 そして思い出す――自分とも重なったあの獣人の姿が……。


「……その顔、少しは思うところがあるのかしら? ならば今ならまだ間に合うわ。今までの自分を悔い改めて――」

「あんたの理想が叶えば――獣人達も少しは救われるのか? 幼い獣人の娘が理不尽に売り飛ばされつらい目に遭うような事もなくなるのか?」


 姫騎士の言葉途中でサトルが言葉を重ねた。ついついそんな事を吐露してしまった。

 今、サトルの中に迷いが生まれている。勿論それで復讐心そのものが消えることはないであろうが。

 そして――それに対する姫騎士の答えは。


「は? 何を言っているの貴方は? なぜあんな獣を救う必要があるの? あのような人間の皮を被ったおぞましい存在。人間と同列に語ることすら烏滸がましいですわ!」


 一瞬にして姫騎士の顔が醜く歪んだ。その表情と口調の変化にサトルは唖然となる。


「大体私はあのような醜悪な存在が奴隷としてでも我が国にのさばっているのが許せないのです! あんなのでも奴隷として生かしておけば生意気にも餌を喰らう! 放っておけば交尾して数だって増やす! あ~おぞましいおぞましい。あの獣臭い匂い、気持ちの悪い耳、獣人なんて言葉にするだけで口か腐りそうです! 今回だって私は父上に獣人は全て殺処分するように進言しましたが奴隷としての使いみちはあると聞き入って貰えませんでした。本当に嘆かわしいですわ!」

「……ククッ、はは、あ~っはっはっはっはっは!」


 随分と長い姫騎士の言葉と、そのおかげで曝け出された本性を目にし、サトルは右手で顔を覆い、状態を晒せ大声で笑いあげた。

 その姿に姫騎士が眉を顰め、何がおかしいのですか! と怒鳴り上げる。


「……おかしいさ。こんなおかしいことはない。全く俺もどうかしてたぜ。あやうく絆されるとこだったが――そうだよな。そうさ、所詮お前たちはそういう人間だ。変わらない、何も変わらない、あいつらや、そいつらと、何もな!」


「貴様、一体何を言って?」

「いでよ悪魔の書第一四位デスアイズ――」


 護衛の一人が怪訝そうに口にするが、構うことなくサトルは手に悪魔の書が現出させ、そして彼の頭上に巨大な眼球が浮かび上がった。


 その瞼は閉じられたままであり、その悪魔の姿に姫騎士やその護衛達が思わず慄く。

 

 すると、彼女たちの背後で何かがせり上がるような音。

 それに思わず後ろを振り返る姫騎士だが、そこに見えるは岩の牢獄。サトルが復讐を誓いし三人はその中に完全に閉じ込められた。外界から完全に閉ざされた殻のような牢獄で外からは三人の姿も確認できなくなっている。

 

 サトルがレオナードに命じ、魔法を行使させた結果だ。

 姫騎士が瞬時にサトルに顔を戻し、一体何をするつもり! と叫び上げるが、その時には既にデスアイズの目が開き始めていた。


「あの三人には簡単に死なれてもらってはこまるんだよ」

「は? 何を言って?」


 護衛が狼狽し、姫騎士も疑問の声を上げ――そして遂に悪魔の目が完全に見開かれ黒い閃光が発せられる。

 それは一瞬の出来事であり、閃光を発し終えるとすぐにその瞳は閉じられた。


 そして――あとに残ったのは姫騎士とその護衛の骸だけであった。


 デスアイズ――その瞳を見たものは死ぬ。


 それがこの悪魔の唯一の、それでいて強力無比な力なのである。


『……ククッ、少し心配したぞ。だがサトルよ、どうやら杞憂だったようだな』


 そして、死体を汚物を見るような目で見下ろすサトルの姿に、沈黙を保ち続けていた悪魔の書が語りかける。


「心配? 何を言っているんだ? 俺の気持ちはずっと同じ――奴らに復讐を、その邪魔をするなら、全て排除するだけだ」


 完全に吹っ切れた顔でサトルが返す。

 そしてレオナードに告げ、岩の牢獄から連中を一旦解放した。


「な、何よこれ、どうなってるの?」

「サトル! あんた一体何してくれてるのよ!」

「え? カチュア様? それに護衛も、い、一体何をしましたの! あんたみたいな蛆虫が、一体何を!」


 牢獄から解放されるなり喚き散らす三人を冷たく見据えた後、サトルは一つ笑いあげ、連中に宣告する。


「ははっ、随分と生きが良いじゃないか。全く嬉しいぜ。さてさて、さあ~お前ら愉しい愉しい復讐ショーの――幕開けだ!」





「あ"ぁ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"いやーーーー!」


 四つん這いにされた状態で泣き叫ぶ。犬好 杉瑠に覆いかぶさっているのは悪魔の書第一〇八位のツインヘルウルフだ。


「こんなの嫌だ~~~~! 助けて~ガルルちゃんグルルちゃん、えぐぅ、助けてよお……」

「おいおい、折角動物好きのお前の為にぴったりの悪魔をあてがってやったのに、他の駄犬の事を考えるなんてな。可哀想な事をするなよ。ほら、そいつも随分とお前の事を気に入ったみたいだぞ?」

「嫌! こんなの違う、ひいぃい、背中が、背中がいだいよぉぉおぉお」


 悲鳴を上げる。顔が涙と鼻水でぐちゃぐちゃになる。

 ツインヘルウルフは双頭の狼タイプの悪魔だ。そしてこの悪魔は胴体以外は脚の数も八本、上の尾も、下の尾(・・)も二本ずつとそれぞれの部位が二頭分備わっている。


「ほらほらもっと喜べよ。その狼ならお前が好きだった犬二頭分の働きを一頭で補ってくれるぞ? 嬉しいだろ? なあお前の大好きな動物に愛されて嬉しい限りだろ?」


 しかしスギルにはもう答える余裕はない。この悪魔の特徴は己の毛の硬さや向きなどを自由に変化出来る事だ。

 故に、今は毛質を硬質化させ、更におろし金にちかい形状に変化させている。

 その状態でスギルの背中をガシガシと削り取っているわけである。

 背中の皮が剥け、肉が顕になり血と肉片が細かくなって周囲に飛び散っていく。


 ハァハァと荒い息を立て、更に目の粗くなった舌で頬を舐めると、皮膚ごと頬の肉が捲れ上がっていった。それによって更に悲鳴が上がる。


「あ~そういえばお前知ってるか? 猫はな、交尾の時雄が雌の首筋を噛み、逃げれないようにしてから棘状の突起のついた陰茎で行うそうだ。なんか凄い痛そうだよな~」


 サトルがそこまで言った直後、スギルが顔を歪め耳をつんざくような叫声を上げた。

 その様子に思わずサトルは唇を吊り上げる。

 かつてスグルに犬をけしかけられ不能になりかけたサトルではあるが、彼女に関しては二度と子供の産めない体になる事だろう。


 尤もこれから死にゆく人間にそのような心配は不要であろうが。


「さて、他の様子も見に行くか。おい、終わった後は食べていいぞ。ゆっくりと味わって食えよ」


 サトルの声に、ガウッ、と一対の頭が嬉しそうに返事した。

 いろいろな意味でこの悪魔にとって上等な餌となってくれる事だろう。





「ヘラドンナどんな感じだ?」

「はいご主人様。ご主人様の望まれる通り――」

「ちょ! お前サトル! 何を、私に何をするつもりだよ! 放せ! 今すぐ私を放せよ!」


 やかましいな、とサトルが花愛 瑠乃に目を向ける。

 彼女の身体は地面から生えた茨によって雁字搦めにされ束縛されていた。

 自ら暴れることで茨が肉肌に食い込み、皮が裂け鮮血が地面に滴り落ちる。


 この植物はヘラドンナの持っていた種によって生まれたものだ。魔法と違いヘラドンナの魔力さえあれば植物の育たない状況でも瞬時に成長するし、植物を操る魔法にも支配されない。

 

 茨に拘束され、ルノが勝手に暴れて勝手に痛がっているのが滑稽でもある。だが勿論この程度でサトルの気が晴れることはない。


「本当にうるさい雌ですね。ご主人様の耳障りになります。塞ぎなさい」


 ヘラドンナが命令すると、茨が伸長しルノの口内にねじ込まれた。素直に受け入れないから唇がズタズタに裂け、欠けた白い歯が地面に落ちた。


 クラスの男子にも中々人気のあった女だが、こうなるともう目も当てられない。

 そして茨がどくどくと波打ち、何かを彼女の胃の中に流し込んでいく。


「これは?」

「はい、消化液のようなものですわ。これでご主人様の屈辱が晴らせるかわかりませんが、強力な液ですので瞬時に胃に穴をあけ、内臓にまで浸透していきます」

「ごふぉ! ごぶあ、い、うぐぃ、んぐふぉ――」


 目を剥いて苦しそうにしているその姿がおかしくてついサトルも笑いを込み上がらせる。

 しかもヘラドンナは簡単には殺さないよう上手く調整してくれている。


 内臓も激しく焼け爛れるが、それだけで死ぬことはない。


「さてご主人様、これからが本番です」


 茨から針が飛び出し、ルノの身体に打ち込んでいく。

 もがもがと涙ながらにルノが何かを訴えているが、聞く耳は持たない。


「何をしたんだ?」

「無数の種を植え付けました。この種は血液に乗って全身に行き渡り、そして――」

「ぐごおぉおぉおおぉおぉおおお!」


 一際大きな悲鳴を上げたルノの身体に真っ赤なバラが咲いた。

 内側から肉を突き破って生えてきたようだ。


「血を吸って育つブラッディーローズです。ただのバラではなく花弁は吸った血が結晶化したものとなっており、刃のように鋭い花です」

「なるほどそれは随分と痛そうだ」

 

 悲鳴を上げ続けるルノの身に、次々とバラの花が咲いていく。

 血管を破り神経を引き裂き肉を刳って咲き乱れるバラだ。その傷みは想像を絶する。


「ははっ、良かったな。お前花が好きだったじゃないか? その花にしかもバラの栄養にお前自身がなるんだ。そんな苦しそうにしてないで笑えよ。嬉しそうにな!」


 痛みに身を捩らせるたびに茨で肉が裂け、黙っていても次々と身体のいたるところからバラが咲いていく。

 気が狂いそうになる思いだろうが、ヘラドンナの力でギリギリで精神を保つよう調整させた。

 

 そして最後の一花まで殺さないようヘラドンナに告げ、サトルは最後の一人、姫岸 菜乃花の前まで近づいていく。





「サトルぅぅうぅぅう! 絶対に! 絶対に許しませんわ! 殺してやる絶対に殺し――うあぁああぁああ! 臭い! 臭いですわ! 何よこの匂い、いや、嫌だ! い、いやあぁあああぁああぁあ!」


「ふん生意気な女だが、いい姿だな」


 サトルが近づくと、悪魔の書第七位ベルゼブが蝿の下半身からナノカに向かって大量の粘液を浴びせているところだった。


 この悪魔はサトルのいた世界にいた悪魔ともよく似ている。

 見た目にはまんま巨大な蝿の悪魔といったところだ。

 ただ脚の筋肉は遥かに発達しているようでもあり、その為か二本足で立つことも出来る。


 その悪魔が、随分とねっとりとナノカを弄んでいたわけだが、サトルを認め、本格的な責めを開始させた。

 吐き出された粘液はナノカの全身を汚し、思わず鼻を摘んでしまうほどの腐臭をあたりに撒き散らした。


 だが、勿論それだけでは終わらない。よく見ると粘液に混じってもぞもぞと蠢くものが目についた。


「ひっ! これ、蛆、蛆ですわ、ひいぃいいい、私の全身に蛆が、いやとってとってーーーーーー!」

「馬鹿を言うな。お前にはピッタリだろう? いい姿じゃないか。俺のことをあれだけ蛆虫と罵っていたお前が、蛆にまみれてるんだからな」

「ぐぅう、サトル、サトル、私をこんな目にあわせて、あわせ、あぁ! いや、お腹が痛い! 痛い痛い痛い痛い痛い!」

 

 サトルの目の前で、ナノカが腹部を押さえのたうち回り始める。

 それに、始まったか、と呟きサトルが言う。


「お前ベルゼブに卵を植え付けられたんだよ。まったくお前も山賊といい散々だな。まあ、俺がそうさせたんだが」


 くくっ、と不敵な笑いをこぼしつつ、悶絶するナノカを見下ろす。

 すると今度はナノカが痒い! 痛い! と己の肌を顔を髪を次々に掻きむしり始める。


「いい姿だなおい。ああそうだ、ベルゼブの粘液と一緒に吐き出された蛆虫はお前の肉を少しずつ貪り食っていく。痛みと痒みはその影響だ。そして中の卵から生まれた蛆はお前の内側からお前を食う。どうだ? お前は随分と潔癖症だったようだが、そんな自分が汚れ朽ちていく気持ちは?」

「ひいぃいぃいぃい! 嫌だ! 嫌! 嫌! 嫌! こんなの嫌ーーーー! こんな汚らしい蛆虫に、私が、私が、ひぎぃい! 痛い、痒い、臭い、痒い、痛い、臭い、痛い、痒い、ああぁああぁあ! 私は、私はこんなところで死ぬような、違う! 違いますわ、お願いサトル、ごめんなさい、謝るから、だから、だからお願い、私を助けて! お願いよーーーーなんでもするからーーーー!」


 ギリギリまで気丈さを維持していたナノカであったが、いよいよ耐えられなくなったのか、手のひらを返すように生を願い、サトルに懇願した。

 

「なんでもするのか?」

 

 そしてそんなナノカにサトルが問う。すると涙ながらにナノカが、します! します! と縋ってくるが。


「そうか――だったらそのままのたうち回って死ぬまで後悔してろ」


 サトルの言葉に、僅かでも希望を見出していたナノカの瞳が絶望に変わった。


 そしてベルゼブの所為によってナノカの全身は蛆の中に飲み込まれていく――絶望の悲鳴をサトルの耳に残しながら……。






「ご苦労だったな――」


 サトルが三体の悪魔に告げると、それぞれ悪魔の書の中に戻っていく。ヘラドンナだけは最後に、また何かあればなんなりと、とだけ言い残し去っていった。


 そして残骸に目を向ける。

 スギルのいた場所は血によって真っ赤に染まっていた。

 食べないで、私を食べないで、と泣き叫んでいた姿はしっかりと記憶している。


 ルカの骸からは鮮血のバラが咲き乱れていた。しかし黒混じりの酷い色だ。醜悪な肉体からは醜悪な薔薇しか咲かないのだろう。だが、逆にそれがよく似合っている。


 ナノカは頭蓋だけが一つ取り残された形だ。口のあった部分とポッカリと空いた双眸の穴にはいまだにぎっしりと詰まった蛆虫が蠢いている。

 

 サトルは改めて最後の最後まで苦しみ続けた三人の姿を思い出し愉悦に浸った。

 

 だが、これで終わりではないことを思い出し、すぐに次の獲物を頭に浮かべ踵を返す。


『遺体はそのままでいいのか?』

「大丈夫だ、俺もそれぐらい考えている」


 サトルは洞窟を抜け出ると、すぐにレオナードに魔法を要求する。

 すると洞窟が激しく揺れ、そして落盤が起き入り口が完全に塞がれた。

 中に残っていた姫騎士や護衛の死体もこれで見つかることはないだろう。


『ふむ、なるほどな。これで暫くは時間が稼げるか。だが、流石に殺した相手が相手だ、今後はあまりのんびりとは出来ないだろう』


 悪魔の書の言葉にサトルも頷く。確かにここまでしてはいくらなんでも帝国も黙ってはいないかもしれない。


 すると――一体のガーゴイルがサトルの前に着地し、集めてきた情報を伝える。


「……ははっ、喜べ、ついてるぞ。どうやらそろそろ明智の野郎が迷宮探索とやらに動き出すようだ。そして能力の高い連中は全員そっちに割り当てられてるようだ」

『ほう、つまりそれは――』

「ああ、奴らの目的地に向かえば――全員始末できる。そう、遂にな……」

 

 唇を歪め、そしてサトルは悪魔の書と共に最終目的となる迷宮に向けて歩き出した。

 

 断罪すべきクラスメートは残り――一六。

これで今回のサトルの閑話は終わりです。

そしてサトル側ももうすぐ復讐が――

この先一体どうなるか次章以降を楽しみにしていただけると嬉しいです。

※なおこの章はまだ少し残ってます。

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