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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第四章 ナガレ激闘編

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第一一八話 蜘蛛との死闘

「開け魔導第六門の扉、発動せよ氷術式【アイスウォール】!」


 ニューハの氷魔法が発動、それによりデススパイダーの正面に氷の壁が出来上がり、多脚なる蜘蛛の突進を食い止める。

  

 先ほどの一撃でワキヤークは天井に突き刺さったままだが、ある意味彼が囮になってくれたおかげでニューハの詠唱する時間が稼げたともいえるだろう。


「オッケー! じゃあ行くわよ!」


 声を上げモーホが氷の壁の上に移動し、額に指を添えた。

 その瞬間、モーホの熱光線が蜘蛛の脚を捉え関節部が溶け、一本分地に落ちた。

 だが、その程度、デススパイダーにとっては大したことがないようであり、脚が飛ばされたにも拘らず、口から網状の蜘蛛の糸を飛ばしてくる。

 

 何せこの蜘蛛の化物は脚が十二本もある。そのうちの一本程度では動きにも支障をきたさない。


 そして、更に蜘蛛は自らの前肢、特に一番前にある太く逞しい前肢二本を前方に突き出した。

 長く鋭い爪が備わっており、その様相はさながら巨大な槍である。

 

 その槍のような前肢を氷の壁に向かって突き出した状態のまま一旦下がり、残った九肢をカサカサカサカサと素早く、そして加速させる。

 ローザの、ヒィイィイィイィ! という喉を鳴らすような悲鳴が響き渡る中、槍と化した爪が氷の壁を突き破った。

 そして壁にピシピシと亀裂が入り、そこからデススパイダーの振るった爪で壁が粉々に砕け散った。


「――アクアスプラッシュ!」

「ホーミングストライク――」

「ヘヴィーショット!」


 しかしそこへニューハの魔法とカイルの矢、そして崩れる氷の壁から逃れつつ、投擲したモーホのチャクラムがデススパイダーに向けて一斉投下、カイルの矢はニューハの魔法の水圧によって威力が向上し、先ほどとは違いしっかりデススパイダーの胴体に命中し刳りこんだ。

 

 ニューハのアクアスプラッシュもデススパイダーの動きを一瞬鈍らせ、更に多少ではあるが勢いで後ろに押し退けた。

 

 モーホの投擲も蜘蛛の表面に傷痕を残す。

 だが、やはり相手も手強い。まだまだ動ける力は残っている。

 鋭い爪の攻撃はローザの聖魔法が防ぎ、ニューハの水魔法と氷魔法により水撃が氷柱がカイルの放った矢がデススパイダーの生命力を削っていく。


 モーホの熱光線が蜘蛛の身体を何度も貫き更に脚も数本刈り取る。

 一進一退の攻防――だが少しずつではあるがデススパイダーが押され始めているのが判った。


「行けるわよ! 相手の生命力ももうすぐ尽きるわ!」

 

 鑑定したモーホの声に、全員がより気を引き締めた。

 追いつめられた時ほど敵も必死になる。そしてそういう時こそ思いがけない反撃にあうものだ。

 だからこそ決して油断してはならない。

 むしろこういう時こそ――それぞれの全力を見せる時だろう。


「モーホ! ブルーオーシャンで決めるわ!」

「……確かにあれは強力だけど――魔力は大丈夫なの?」

「後一発分はなんとかいけるわ」

「だったらおいらも踏ん張らないとね」

「守りは私のセイクレッドシールドにまかせてください!」


 全員(?)が一致団結となり、デススパイダーにトドメを刺すため行動を開始する。

 モーホが囮となり相手の攻撃を避け、カイルが細かいダメージを与え続けていく。

 それでも避けきれず受けた傷はローザがすぐに回復し、ニューハへの攻撃は聖なる盾で守り切る。


 そして、遂にニューハの詠唱と術式が完成し――


「発動せよ水術式ブルーオーシャン!」


 ニューハの魔法が行使される。

 発生した激流にデススパイダーが飲み込まれた。

 下肢を必死に地面に突き立て、なんとか堪らえようと相手も必死である。

 

 だが、モーホの熱光線で数本分脚が飛んでいたのが決め手となった。

 結局蜘蛛はその水圧に抗うこと叶わず、荒れ狂う波に全身が持って行かれた。


「やったかしら!」

 

 モーホが叫ぶ。肩で息をするニューハも、お願い、と言った眼を蜘蛛の流れていった方へ向ける。

 魔力はもう殆ど残っていないのかもしれない。

 カイルも既に矢が尽きてしまっている。


 モーホにも疲弊の色が見えた。全員体力的にも魔力的にもギリギリの状態だ。

 だからこそこれで決まっていて欲しいと願うような気持ちで戦況を見守る。

 

 波が消え、地面が顕になった。そしてそこに見えるは腹を地面につけた状態で、沈黙を保つデススパイダー。

 

 だが――


「……駄目、まだ少しだけど生命力が残っているわ――」

 

 モーホが呟くとほぼ同時にデススパイダーがピクリと揺れ、そしてもぞもぞと脚を動かし、ゆっくりと立ち上がった。


「ハッ!」


 そこへモーホが額に手をやり熱光線を射出、だが蜘蛛はさっと蟹行し避けた。

 

「な! そんなかわされるなんて!」


 目を見開き驚愕するモーホ。額の宝石から発せられる熱光線が射出から目標物まで達するのは一瞬。

 あの蜘蛛の大きさでは本来見てから躱せるものでもない。

 つまり完全に読まれていた可能性が高いという事だ。


 そして――更にデススパイダーの身がブルブルと震えだし、腹の部分が大きく膨れ始めた。

 

「!? 不味いわ! あれは毒霧を発射する気かも――」

「え? 毒霧?」

「そ、そんな技持っていたの?」

「ええ、それにしても参ったわね。デススパイダーの名の示す通り、かなり凶悪な毒みたい」

 

 顎を拭いモーホが口にし。


「それにしてもあれで結構賢いみたいね。きっと使うタイミングを図っていたのよ。水魔法が使えるうちは使用しても対処される可能性があったと思ったのかもね――」


 冷静に分析してみせるモーホであったが、皆の表情は不安に染まっている。

 何せニューハはもう魔力が殆ど残っておらず、ローザの魔法では未然にガスを食い止めることは不可能。 

 しかしかといって全員に毒を防ぐ魔法を施す時間もない上、相手の毒次第では意味を成さない可能性もある。


「と、とにかくアンチポイズンを施します」

「……そう、だったら俺は最後でいいわ……」

「何言ってるのですかモーホ!」

「いいのよ。ニューハには死んでほしくないし、可愛らしいカイルちゃんも、ローザだってそう。それにこうみえて毒には強いのよ」

「そ、そんなモーホさん……」

「て! 言ってる間にもう発射してきそうだよ!」


 全員の視線がデススパイダーに向けられる。お腹はパンパンに膨らみ、確かにもう発射直前といったところだ。

 モーホは覚悟を決めた表情を見せる。ローザは急いで詠唱を開始する、ニューハは祈るように腕を組み、カイルは自分の無力さを悔いた。


 そして、今まさにデススパイダーから毒の霧が射出されようかという時――


「うん? な、なんだこりゃーーーー! なんで俺がこんなことに!?」


 その声に全員が首を擡げ、すっかり忘れていた彼を見やる。

 すると、天井に突き刺さったままでいたワキヤークは、どうやらここにきてようやく気がついたようで天井にめり込んだまま喚き始めた。


 すると、その影響で恐らく激しい戦いの影響で脆くなっていたのであろう天井が崩れ落ち、細かい破片と一緒にワキヤークも落下する。


「ひぃ! え? なんで? あ、ギャッ! でかい蜘蛛! ひぃいぃぃいだずげでおがあちゃ~~~~~~~ん!」

 

 ワキヤーク、すぐ真下にいたデススパイダーを眼にし、パニックになり落下しながら手に持っていた斧をブンブンと振り回し始めた。


 目をつむり、涙と鼻水でグチョグチョになった顔でそのまま蜘蛛の胴体にダイヴ! なんとそこで偶然にも振り下ろした斧が全体重を乗せた状態でデススパイダーの身に見事命中――

 

――クリティカルヒット! デススパイダーに大ダメージ!


――デススパイダーは死んだ。

――ワキヤークのれべるがあがった!

――ワキヤークのれべるがあがった!

――ワキヤークのれべるがあがった!

――ワキヤークのれべるがあがった!


 ワキヤークのアビリティ【強運】の効果が大から特大に変化した。


「…………」

「…………」

「…………」

「…………」


 そして必死にデススパイダーとの死闘を繰り広げた四人はポカーンと口を広げたまま、暫く呆けた状態となり――

 

「……え? あれ? 俺、たす、かった? あれ? それにこれ、デススパイダーの?」


 そんな最中、ワキヤークが気がつき立ち上がり、そして足元で死んでいる蜘蛛を見下ろし叫んだ。


「うぉ、うおおぉおぉおおぉおぉ! やったぜーーーー! この俺がデススパイダーを倒したぞーーーーーー!」


 こうして一人の男の活躍により、鉱山での激闘は幕を閉じたのだった――

ワキヤークのレベルが上がりました。

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