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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第四章 ナガレ激闘編

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第一一一話 身勝手ここに極まる

ナガレが街に向かった後のフレム達です。

 アロン鉱山からナガレがハンマの街に向け出立すると、瞬時に視界から消えたことで、バットウ達が暫し呆けてしまっていた。

 

 だが、それから更に少し経ち、バットウが何かが閃いたような表情を見せ鼻を鳴らす。


「チッ、あの野郎時空門なんか開けやがったのか――」


 それを耳にしたカイルが思わず、プッ! と吹き出した。

 それに、怪訝な顔を見せるバットウと、目を細めて不機嫌な顔を見せるフレムである。

 何せフレムも以前ナガレに対して似たような事を言っている。


「なんかあいつと出会った頃のあんた似てるわね」

「はあ!? 先輩そりゃないぜ! 俺はあんなに性格は悪くねぇ!」


 悪戯っ子のような笑みを浮かべ言うピーチに、フレムが断固否定する。

 それを聞いていたバットウが、あん? と眉間に皺を刻んだ。


「ちょっと! バットウもいい加減にしてよね。そんな事で一々Bランク程度に腹を立てたってしかたないでしょう」

 

 目角を立てるバットウを窘めるようにクリスティーナが言った。

 ただその言葉にも、相手を小馬鹿にしたような感情が含まれており、フレムの顔も瞬時にして不機嫌なものに化す。


「チッ、出来の悪い巻き貝みたいなへんてこな髪型してる癖に、クチの悪い女だな」

「な!?」


「出来の悪い――」

「巻き貝……プッ」


 そしてフレムの発言で周囲の冒険者から小さな笑い声が起き始める。

 一応は堪らえようとしているようだが、我慢しきれず、それが殊更クリスティーナの感情を逆撫でた。


「あ、貴方! この私に向かって! しかもこの高貴な私の髪型をよりにもよって巻き貝ですって!」

「うっせぇな。巻き貝は巻き貝だろ。しかも金色の趣味の悪いよ」

「キーーーー! お黙りお黙り! お黙りなさい! これだから冒険者の男は下品で口が悪くて素行も悪いし本当嫌になりますわ! 大体貴方だって猿みたいな顔してる癖に! 生意気ですわ!」

  

 フレムの発言に相当腹が立ったのか、杖をぶんぶん振り回しながら、怒りを露わに言い返す。

 すると、誰が猿だコラッ! とフレムも負けじと売り言葉に買い言葉で声を荒立てるが。


「おい、結局お前の方がキレてんじゃねぇかよ」

「だ、だってあの男が!」

「フレムもいいかげんにしなさい。それに流石に女性にあれは失礼でしょ?」

「いや、だってあいつがよ!」


「まるで子供の喧嘩ね」

「あはは……」

 

 結局クリスティーナをバットウが抑える形で、フレムに関してはローザが子供を叱る母親の如き様相で咎めに入る。

 

 それを呆れた表情で見るピーチに苦笑いのカイルであった。


「とにかくだ! テメェのところの腰抜けは臆病風に吹かれて逃げやがったんだから、テメェらで責任とってギルドに報告しろよ。ロクに仕事もしないで依頼料だけしっかり持ってかれたらたまったもんじゃねぇからな!」


「はあ? あんた馬鹿? さっき聞いてなかったの? ナガレはハンマの街を救うために引き返したのよ! 逃げたんじゃないわ!」


 いい加減バットウの物言いが腹に据えかねたのか、ピーチが語気を強めて反論する。

 しかしバットウは、はっ! と肩を竦め。


「何が街を救うだ。嘘ならもっとマシな嘘をつけってんだ。大体なんでそんな事があんな腑抜けに判るんだよ」


「ナガレだからよ!」

「先生だからだ!」


 同時に発せられたふたりの声に、バットウは目を眇めた。

 何故ふたりがここまでナガレに信頼をおいているか彼には全く理解できていない事だろう。


「ふん、どっちにしろ例えその当てずっぽうの勘みたいのがあたってたとしても意味は無いけどな。何せハンマには俺達のボスでもあるロウが残ってんだ。ハンマでボスに勝てる冒険者を俺は知らねぇしな。ボスなら街になんか危害を加えるようなのが出ても瞬殺出来る。あの腰抜け野郎がその戦いぶりをみたら、自分との格の違いを思い知るだろうさ。きっと愕然として動くことも出来ず、ただ黙って見てるぐらいしか出来ないぜ。まあそもそもあの野郎は逃げるのは一人前でも戦う力なんて持っちゃいないだろうけどな」


 上から目線で言い切るロウに、フレムはやはり不機嫌を露わにするが、そこへ仲裁するようにニューハが間に入った。


「もういいではないですか。どちらにしても私達にとって今重要なのは、少しでも早くこの鉱山に蔓延った魔物を打ち倒し、鉱夫達が安心して働ける状態に戻す事です。皆さんもナガレ様はこんな内輪もめを臨んではいないはずですよ」


 鋼の狼牙団のメンバーと、ナガレがここを託したメンバーを交互に見やりニューハが言う。

 眉を引き締め真剣な表情だ。

 それを認めたフレムは罰の悪そうな顔を見せ、ピーチも、確かにそうよね、と眉を落とした。


「はっ! そこだけは同意してやるよ。確かにこの程度の問題さっさと解決しねぇと鋼の狼牙団の名折れだからな。そうと判ったら、ゴーリキ、クリスティーナ、それにヘルーパ、行くぞ」

「いや、なんでバットウが主導権握ってるのよ……」

「ボスがいねぇんだから仕方ないだろうが! とにかく、そうだな。ゴーリキとクリスティーナは左に行け、俺とヘルーパは真ん中でいいな?」

「え? あ、あの、あの……」

「決まりだなだったら――」

「お待ちなさい!」

「そうよ! なんで勝手に決めてるのよ!」

 

 バットウはまるで他の冒険者の意見は聞かず、自分たちのメンバーだけで予定を決めてしまう。

 それに納得がいかないニューハとピーチが異を唱えるように叫ぶが。


「なんだ? なんか文句があるのか?」

「あるに決まってんだろ! 大体なんてテメェが勝手に決めてんだ!」

「そうね。あなた顔は悪くないのにちょっと身勝手すぎるわよ」

「カマオに同意だわ。ニューハが怒るのなんて珍しいけど気持ちは判るし」

「うふっ、でも生意気な感じは嫌いじゃないわよ。回復して上げたくなるわん」


 バットウが振り返り、若干の凄みを滲ませ応対するが、フレムも聖なる男姫のメンバーも納得はしていない。

 約一名妙な事を口走っているのはいるが。


 だが、バットウはそんな面々の様子を認め、わざとらしくため息を吐いた。


「安心しろや。俺はもうお前らなんざに何も期待してねぇ。こっから先は俺達だけでやる。お前らはここで黙って俺らの仕事が終わるのを待ってろや。流石に逃亡かましたナガレってのの分まで保証するつもりはねぇが、こっから先は黙ってても残った奴らに依頼料の分け前はくれてやるよ。俺達からしても足手まといについてこられちゃ迷惑だからな」


「……お前ら、一体何様のつもりだ? 大体それで失敗したらどうするつもりなんだよ?」


 フレムはいい加減彼らの言動に嫌気が差したのか、素で静かな怒りを内に溜めたまま問いかける。

 だがバットウはとことん上から目線で言葉を返した。


「ここの魔物程度に俺達が遅れを取るわけ無いだろ、舐めるな」


「……ねえ? 貴方達ナガレの言ったこと忘れたの? 此処から先は全員の協力は不可欠だって言ってたじゃない?」

「そうです。それに私たちはナガレ様にここの事を託されてます」

「そうだね。それにおいらもあまり舐めて掛からない方がいいと思うけどな」


 更に三人がバットウを相手に諭すように告げると、彼は髪を掻き毟り、面相くさそうな顔で口を開き。


「あんな妄言信じるほうがどうかしてる。大体さっきもいったが、そもそもここに居た魔物共も俺達だけで十分だったんだよ」


「――自意識過剰が過ぎますね。第一ここから先、隧道は三方向に分かれてます。貴方達が今言っていたのでは二方向しかカバーできませんよ」

「そんなもん、さっさと俺達で二つ片付けて、戻った後残ったのも終わらせてやるよ」


「こ、ここまで来ると逆にすごいわね――」


 肩を落とし目を細め、その自信ぶりに心底呆れたようにピーチが言うが。


「別にいいじゃねえか」


 ふと、後方で休憩中の冒険者からそんな声が届き、え? とピーチやフレムが声の方へ首を巡らせる。


「そうだな、何せ鋼の狼牙団様はAランクのパーティーだ」

「外で控えてる連中だって、何もせず報酬が貰えるなら万々歳だろうしな」

「私達がいたら邪魔だっていうんでしょ? だったら任せちゃえばいいじゃない」

「違いねぇ、そこまで言われて俺達が動く理由もないしな」

「全く鋼の狼牙団様々だな。本当楽させてもらってありがてえや」


 そして控えていた冒険者達が口々にそんな事を言い始めた。

 その多くは皮肉交じりの発言であるが、これはある意味彼らの精一杯の抵抗でもあったのだろう。


「だ、そうだ。ま、有象無象の寄せ集めじゃこんなもんだろ。ほらとっとと行くぞお前ら」

「え? あ、うん」

「……ま、バットウがそういうならな」

「あ、あの、あの、でも」

「いいからとっととこっちに来やがれヘルーパ!」


 バットウに怒鳴られ、ひゃい! と肩を揺らし結局付いていくヘルーパ。

 そしてクリスティーナとゴーリキも他の皆にも構わず左の隧道へと潜っていき――


 その様子を冷ややかな目で見送る、冒険者達であった――

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