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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第四章 ナガレ激闘編

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第九十七話 ナガレとバットウ

「私としては別に喧嘩を売るような真似をしてるつもりはなかったのですが、誤解を招いたのなら失礼しました。しかし、やはりそこのヘルーパさんが責められるのは可哀想ですし、そもそも彼女は間違った事など何もしておりませんからね」


 ナガレは事を荒立てることがないよう、落ち着いた調子で話して聞かせる。

 しかし、バットウはナガレの態度が気に食わないようであり。


「……その言い方がカチンとくんだよ。第一テメェみたいな奴に俺たちの何が判るってんだ」


「勿論、私は貴方達と親しい間柄というわけではありませんし、仔細なことまでは存じ上げません。ですが、それでも今の戦闘に於いて、ヘルーパさんが皆様に支援魔法を掛ける必要が無いと言ったことは理解できます」

 

 ナガレはハッキリとした物言いでそう告げる。

 口調は穏やかだが、どこか諭すような言いぶりであり、それを耳にしたゴーリキが前に出て気に食わなさげに口を挟んだ。


「ふん、正直それは俺もバットウと同じで納得が出来んな。そこにいるような烏合の衆なんかよりも、強い者に支援魔法を掛けたほうがより強くなるわけだし、俺達に掛けたほうが有効だろ」


「なるほど、確かに私も貴方達の強さは判ってるつもりです。先ほどの戦いでも魔物の群れを圧倒してましたしね」


「なんだそりゃ? だったらそれこそ俺達に掛けたほうが有効じゃねぇか。そんな事はこの単細胞なゴーリキにだって理解できている」

 

 単細胞という言葉に、ゴーリキはどこかムッとした様子ではあったが、彼が何かを言う前にナガレが右手を振り上げつつ言葉を返した。


「逆ですよ。ここの魔物を圧倒できるほどの皆様だからこそ、支援魔法を掛ける事に意味が無いとヘルーパさんは判断したのです。そういう意味では、皆様の中では彼女の方が全体を見る目は持ち合わせていると言えるかもしれないですね」


「……それはつまり、俺達には周りが見えてないと、そう言う事か?」


 バットウの目が鋭く光る。

 一応は話を聞いている体ではあるが、潔く受け入れてる感じではない。


「はい、はっきりと言えばそうです。でなければ彼女を責めるなんて真似はしないでしょう」


 しかし、ナガレはそれでも自分の考えを遠慮無く述べた。


「はっ! おもしれぇ。Bランクの分際で俺様にそこまで言うとはな。だが、そこまで言うなら聞かせてもらおうか。俺達の仲間のヘルーパが、俺達を放っておいてまで弱っちい連中を支援した理由をな。テメェには判るんだろ? 俺達に掛けるのが意味ないという事は、あいつらに掛けたことには意味があるってことだからな」


 鼻を鳴らしながら、バットウがそんな事を言う。

 答えられるものなら答えてみろとでも思ってそうな、挑戦的な態度だ。


「はい。ですがそれほど難しい話ではありませんね。先程もいいましたが、皆様は流石Aランクというだけあってかなりの強さです」


「そこはしっかり理解しているのだな」


 ゴーリキが腕を組みつつ言う。


「えぇ。なので、そうですね仮に皆様の戦闘力を一〇〇と致しましょうか。そうすると先程の魔物の戦闘力は大体二〇~三〇程度です」


「それじゃあ足りねぇな。魔物の戦闘力がそれなら俺達は五〇〇〇はなきゃおかしい」


 バットウは冗談などではなく本気でそう思っているようだ。


「……まあそこは過程ですので。とにかく魔物よりも皆様は圧倒的に強かった。そしてこれも仮ですが、他の冒険者に関しては戦闘力は二〇~四〇程度と致します」

「そ、そんな! 先生からみたら俺はそんなに弱っちいのですか!」


 言下にフレムが口を挟む。狼狽した表情から、かなりのショックであった事が窺えるが。


「あくまでも仮の話ですフレム。とりあえず大人しく聞いていて貰えると助かります」

「す、すみません先生!」


 溜め息混じりにナガレが告げると、フレムが申し訳無さそうに頭を下げた。

 ナガレは、勿論フレムやピーチなどの戦闘力が更に高いことは十分承知していたが、他の冒険者の手前敢えて角が立たないよう全員同列として語ったのである。


「どうでもいいが、なんでこの男はお前なんかにペコペコしてるんだ?」

「あん? お前だ? おい、口の聞き方に!」

「フレム――」

「す、すみません……」


 バットウが怪訝そうに言うと、すぐさまフレムが反応し、それを横目に見ていたナガレが叱咤した。


「本当、ナガレの事になると分別がないわね」


 そんなフレムを呆れたような目で見やるピーチである。


「とにかく、私の見立てでは戦闘力にはそれぐらいの差があります。さて、そこでヘルーパさんの魔法ですが、この状況で彼女が支援魔法を行使した場合、これも仮ですが、鋼の狼牙団の皆様の戦闘力、クリスティーナさんに関しては魔法系なのでこの限りではありませんが、バットウさんやゴーリキさんに関しては一五〇ぐらいまで上がる事となります。それに対して、他の冒険者に関しては三〇~六〇程度に上昇する事になるでしょう」


「はんっ! だったらもう答えは出ているじゃねぇか! どう考えても一五〇の俺達の方がより強くなれる!」

「えぇ、単純な強さで言えばそうです。ですがその強さには意味が無い」


 ナガレの発言に、バットウとゴーリキが眉を顰めた。

 ナガレの説明が理解できていない様子。 

 ついでに言えば、フレムも頭にクエスチョンマークを浮かべたような顔をしている。


「……強くなることに意味が無いというのか? それこそ意味がわからないぞ」

 

 そしてゴーリキが顔を顰めナガレに言う。


「そうですね。正確に言えばこの戦闘に関しては意味が無いといったところでしょうか。何故なら皆さんは強い、先ほどの戦いをみていても、魔物たちを一撃のもとに倒してしまっていた。もともとそれだけの力の差があったのです。つまり、元々一撃で倒せるだけの実力がある貴方がたに支援魔法を掛けたところで、そこに変化は生まれないのですよ」


「……なぁなぁ、俺よくわからないんだけど、なんで強さが一五〇まで上がるのに先生は変化がないなんて言ってるんだ?」

「フレム――」

 

 その質問に思わずローザが憐れむような目を向けてしまう。


「あんた本当にオツムは弱いわね」


 そしてピーチも目を細め、遠慮のない事を言う。


「あのねフレムっち。簡単に言えば三から一〇を引いても、三から一五を引いても、結果は同じになるってそういう事なんだよ」


 そんな中、カイルだけは判るように教えてあげようとするが――


「うん? いや、だからその場合なら一〇より一五の方が強いだろうが」

『…………』


 その答えに、一同はもう何も言うまいと改めてフレムからナガレの方へ顔を向ける。

 フレムはやはり首を傾げたままだが。


「……ふん、もっともらしい事を言っちゃいるが、お前は重要な事を見落としているな。今の話は攻撃力だけを想定してるようだが、支援魔法は別にそれだけじゃねぇ。速度を上げて手数を増やすという手だってあるんだ」

 

 そんな中、バットウはナガレに反論してみせる。

 確かに、支援魔法には攻撃だけでなく素早さを上げたり出来るものも存在するわけだが。


「確かにそういう方法もあるでしょうが、それでもあまり大差はないでしょう。例えばバットウさんは居合を得意としてますが、あの技は抜いた瞬間には最速で相手を斬り倒す事が出来る。つまり元々初速は速いわけですから、そこに例え支援で速度を上げたとしても、そこまで手数は増えません。ゴーリキさんも、その攻撃力は素晴らしいですが、一つ一つの技に溜めを要する場合が多く、それに元々素早さを活かすような戦い方ではありませんから、そこまでの効果は望めません。勿論それも今回のように敵とのレベルに差がありすぎるゆえの事ではありますが」


「はっ、全くよく口の回る餓鬼だ。で、それが理由で俺たちより他の連中に魔法を掛けた方がいいって言いたいわけか?」


 バットウの反論に対するナガレの答えに、彼はやはり高圧的な態度は変えず更に問いを重ねた。


「そうですね。他の冒険者の戦闘力が魔物とそう変わらない以上、そのままでは殺るか殺られるかの戦いに、下手すれば消耗戦にも成りかねません。ですが、ヘルーパさんの支援魔法のおかげで戦闘力が向上し、形勢は一気に有利な方向に進みました。ですから彼女の判断は間違っていなかったと私は判断します」


「……なるほどな。テメェの言いたいことは判った。だがな、それなら俺もはっきりと言わせてもらうぜ。この程度の魔物お前らの助けなどそもそもいらねぇ。この場所だって、お前らがいなくても俺たちだけで十分殲滅できた」


 このバットウの返しは、ようは他の冒険者は必要ないと言っているようなものである。

 当然、周囲で話を聞いていた冒険者達も面白くなさそうな顔を見せる。 

 かといって反論する様子も感じられないが。


「……本当、自信だけは凄いわね」


 すると、ピーチが目を細め、呆れたように言った。


「ですが、彼らは確かにこれまでも自信に見合うだけの活躍をしてきたと聞きます。魔獣が出現した際も、彼らは怯まず打ち倒したと」


 そこにニューハが参加し、彼らが自信を持つ理由について口にする。

 

「ふん、魔獣ぐらい先生に鍛えて貰った俺なら、一匹や二匹今すぐにでも狩ってきてやらぁ」


 すると、フレムが張り合うように言う。

 これまでの彼らの態度がよっぽど気に入らないのだろう。芽生えた対抗心はかなりのものだ。


「まあ魔獣にも種類はあるし、強さもピンきりではあるけどね」


 そしてカイルは、一応フレムをフォローするようにそう告げる。


「でも、それでも魔獣を倒したというのは凄い気がします」


 そんな会話を耳にしながら、ローザが素直な感想を述べた。

 確かにピンキリといっても、弱いとされている部類であったとしても魔獣は下手な魔物より遥かに手強い存在だ。


「ふん、どうやら俺達の事を良く知ってるのがそっちにもいるようだな。だがな、魔獣だけじゃねぇぜ。俺たちは古代迷宮にだって何度も足を運んでいる。しかもかなりの層を潜っている。俺の持つ【スペルブレイカー】もその時に手に入れたオーパーツだ。お前らとは踏んできた場数からして違うんだよ」


 すると、彼らの話を耳にしたバットウが、自慢気に自分たちの功績を語り、そして居合にも使っていた剣をナガレに判るよう掲げてみせた。


「……だから、貴方達だけで十分だと?」

「そうだ。なんだったら今すぐ証明してやってもいいんだぞ?」

 

 そう言いながらバットウは手持ちの剣の柄に手を掛ける。


「このようなところで、仲間同士で争っても仕方ありませんよ。尤も貴方がたがどう思っているかは知りませんが。ただ、この場の魔物たちが貴方達だけでも倒すことが出来たというのは同意しましょう。それぐらいの実力は秘めているでしょうからね」

「ちょ! 先生! こんな連中認めちゃうんですか?」


 だが、ナガレは仲間同士でやりあうつもりはない旨をまず告げ、その上でバットウの言い分をあっさり認めた。

 それに、思わず声を張り上げ疑問の声をぶつけてしまうフレムであった――


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