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ギルドは本日も平和なり  作者: ナヤカ
問題だらけのギルド編
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七十六話 疑念

ギルドを出てから、人気(ひとけ)のない空き地まで歩いた。この時間帯は冒険者がどこにでもいるから、カウルとソフィアを気遣ってのことだ。


「で?用事って何?」

ソカがせっついてくる。

「まぁ、待てよ。まずは自己紹介からだ」

そう言って、カウルとソフィアに歩み寄った。

「彼は知ってると思うが、カウルとソフィア。二人ともBランク冒険者だ」

「知ってるわよ。こうして会うのは初めてだけどね」

「はじめまして。ソフィアです」

「…カウルだ。彼女は?」

「彼女はソカ。Cランク冒険者だよ」

「どうも」

ソカは軽く挨拶をした。

「ソフィアは元は貴族でな、とある事がきっかけで冒険者になった。そのきっかけとなった事件を調べたいんだが、どうも貴族がらみのことでなかなか難しそうなんだ」

「ふーん、それで?私貴族じゃないけど?」

「でも、貴族がいるところはこの前連れていってくれただろ?」

ソカは「あぁ」と、納得した表情をする。

「用事ってそのことね?で?その人を連れていけば良いわけ?」

「そうだ、俺も同行する。頼めるか?」

「別に良いわよ?それなりの格好をするなら、ね?」

それなりとは、やはりちゃんとした格好をしていかなければいけないということだろう。

「あの…どういうことですか?」

ソフィアが聞いてきた。

「あぁ、ソカは貴族が出入りする店を知ってるんだ。そこに行けば事件の事を知っている人が居るんじゃないかと思ってな?」

「なるほど……そういうことでしたか。たぶん、いると思います。自分で言うのもアレですが、相当に大きな事件でしたから」

「事件って何?」

今度はソカか。こういう仲介は面倒くさいな。

「話しても良いか?」

一応ソフィアに確認をとる。

「……はい、大丈夫です」

そして、ソフィアの父親の事と、彼が造った船が沈んだ事だけを話した。

「そうだったのね。あなた意外と苦労人なのね?カウルに引っ付いてるだけの奴かと思っていた」

「なんだと?」

カウルが反応する。

「やめろ二人とも。ソカも言い過ぎだぞ?」

慌てて二人の間に割ってはいる。

「別に悪口を言ったわけじゃないわよ?褒めているもの。私は誰かの後ろで、何かを期待して待っているような奴は嫌いなの」

ソカは平然とそんなことを言ってのけた。

はぁ、ため息が出る。本当にこんなので上手くいくのだろうか?

「それで、店にはちゃんとした正装で行かなきゃ行けないんだ。二人はそういった服は持ってるか?」

ソフィアは少し考えた後に頷いた。

「昔着ていた服があります。着る機会もないし、殆んどそういった服は捨ててしまっていたんですけど、一着だけ残しておいたんです」

ソフィアは元貴族だから、大丈夫だろう。問題は……。

「カウルも行くか?」

「……当然だ」

「服は大丈夫か?」





「問題ない」


なんだよ今の間は!ホントに大丈夫か?

「そういうあなたはどうなの?また私から借りる?」

ソカが詰め寄ってきた。その顔には笑みを浮かべていた。また私に借りをつくる?そう言っているようにも見えた。

「いや、今度は自分で用意するさ」

「ふーん、つまんないの」

「大事な物なんだろアレ?」

「別に?昔の物よ」


「あの、ソカさんとテプトさんって付き合っているんですか?」

ソカとくだらないやり取りをしていると、唐突にソフィアが聞いてきた。

なんでそうなる。ソカ、何か言ってやれよと彼女を見れば。


「……」

彼女もこちらを見ていた。視線が合い、次の瞬間ソカは目を逸らした。


……なんだよ。その反応。


「いや、付き合ってないぞ」

とりあえず質問に答える。

「そうなんですか?なんか、テプトさんの様子が他の人とは違ったのでそういう距離感なのかなぁと思ってしまいました」

そういうことか。

「ソカは遠慮なしに何でもやってくるから、こっちも改まって対応するのを止めたんだ」

「なによそれ。私が無法者みたいじゃない!」

いや、実際そうだろ。なにかとナイフで俺を殺しにくるし。

「まぁ、他の冒険者よりは近いかもしれない。俺はまだギルドに来て日が浅い。協力してくれた人達も少ないんだ。彼女はその中の一人だからな」

「そういうことなんですね」

「そういうことだ」


「はぁ。そういう事にしておくわ」

ソカも納得してくれたらしい。


「で?いつその店に行くんだ?」

カウルが言った。

あー。どうするかな?

「明日で良いんじゃない?」

適当そうに言うソカ。だが、別に反論する理由もない。

「明日でも大丈夫か?」

二人に聞けば、両方とも頷いた。

決まりだな。

「じゃあ明日、ギルドが閉館した後ここに集合しよう」

「はーい」

「わかりました」

「分かった」


それから、その場で解散をする。俺もまだ仕事があるため、ギルドに戻ろうとしたところを、後ろから誰かに肩を掴まれた。


「……なんだよソカ?」

ソカだった。彼女は、カウルとソフィアが立ち去っていくのを見ながら小声で話しかけてくる。

「大丈夫なの?」

「大丈夫って、なんだよ?」

「ソフィアよ。事件の事を調べるのって、あの子が本当に知りたいだけ?」


何を言っているんだ?


「それ以外ないだろ」

そう言うと、ソカは呆れたようにため息を吐いた。

「言っておくけど、私だったらその魔晶をくれた奴に復讐をしてやるわ。そいつのせいで父親は死んだようなものなのよ?」


「復讐のために事件を調べようとしてるって事か?」

「さぁ?でも私ならそうする」

「十年も経ってるんだぞ?」

「何年経っても、一度宿った恨みなんてのは消えないものよ。治まったと思っていても、何がきっかけでその気持ちが蘇るか分からない。覚えておいて、一番怖いのは魔物じゃない、人間よ」

「……人間」

「まぁ、私には関係の無いことだけどね?」

そう言って、ソカは去っていった。


一人残された俺は、もうしばらくそこで呆けていた。その後に、服を用意してない事に気づいて、急いで服屋へと走った。



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