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ギルドは本日も平和なり  作者: ナヤカ
問題だらけのギルド編
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五十七話 理由

危ないところだった。タロウが先走っていたら、どうなっていたか分からない。先にいるのが冒険者だと気づき、殺気を出してタロウを牽制したものの、後もう少し遅れていたら戦闘になっていたかもしれない。

タロウは何か言いたそうにしていたものの、不満げに黙ってしまう。

……はぁ。

それから、カウル達の方に向き直る。

「捜したよ」


「俺達を…か?」


「そう。君たちを、だ」

後ろにいるソフィアは、手を地面について呼吸を整えていた。カウルの装備も傷だらけで、表情が険しい。大変だったんだな。

「…なぜ?」

カウルは言った。なぜ?そんなの決まってるだろ。

「助けに来た。君達が二人だけで三十階層に降りたことは、他の冒険者から聞いた。これは、れっきとした『ランク外侵入』に該当する」


「……ハッ。それでわざわざここまで来たのか?冗談も大概にしてくれ。どこに、ここまで駆けつけるギルド職員がいるんだ」


ここにいるだろ。

「既に、君達自身が身をもって体験したと思うが、二人でこの階層を攻略することは無謀だ。もしかしたら、何か策があるのかと思っていたが、その様子を見る限りないようだね?」


「仲間が足りないと言いたいんだろ?…捜したさ。だが、誰も協力してはくれなかった」


その気持ちは分かるぞ。でも、無茶はいけない。

「仲間があと一人でもいたなら、もっと楽にここまで来れたはずだ」

「誰も協力してくれなかったと言っているだろ」

「そういう事を言っているんじゃない。君達はやり方を間違えていると言っているんだ」

「……」

「でも、これで分かっただろう。さぁ、ギルドに戻ろうか」

そう言って、カウルに近づく。しかし、彼は一歩引いて大剣を構えた。

「…どういうつもりだ?」


「お前は本当にギルド職員か?そもそも、奴等がここまで来れるわけがない。それに、そこの魔物も……喋る魔物は見たことがない」

いや、おかしくないから。

「ソフィア、気を抜くな。これは魔やかしだ」

俺とタロウがか?勘弁してくれよ。

『どうやら、痛い目に合わねば信じてもらえないようだな?』

「そう言って戦う気だろ?ダメだぞ」

タロウに注意したときだった。背後からカウルが斬りかかってきた。

ーーーはぁ。


カウルの大剣を咄嗟に空間魔法で出した剣にて受け止める。

「おい……いい加減にしろよ」

「なっ!?馬鹿な。……この殺気…先程と同じ…」

それ以上は続けられず、カウルは膝をつく。それでも彼はこちらを睨み付けた。

「カウル…もう止めてください」

その声はソフィアだった。

「お願いです。……もうこれ以上は無理です。それに、これがまやかしではないことぐらい、あなたならわかるでしょ?…その人に従いましょう」

彼女の言葉に、カウルは苦虫を噛み潰したような表情をする。


「まだやるか?」

そう問いかける。

「……いや、俺の敗けだ」

カウルは言った。

二人とも項垂れ、精根尽き果てていた。


不意に俺の後ろから巨大な魔物の気配がした。

「タロウ」

『その名で呼ぶな』

そう言って、タロウは魔物を倒しに走り去った。その直後、魔物の断末魔が聞こえてきた。

「ハハッ…なんなんだお前は。本当にギルド職員なのか?」

カウルの言葉に頷く。

「俺にも…力があれば」

カウルは悔しそうに呟く。

「なぜ二人でここまで来たのか、理由を聞いても良いかい?」

しかし、カウルは答えない。

「私のせいなんです」

答えたのは、ソフィアの方だった。

「ソフィア!」

「カウル…もう良いの」

ちょうどその時に、タロウが戻ってきた。

『終わったぞ』

「ありがとう。あと、悪いがもう少しだけここにいる。近づく魔物は残らず倒してくれ」

『ふん、造作もない』

それから、俺はその場に腰をおろす。

「で、理由は?」

ソフィアに問いかけると、彼女は意を決したように話始めた。


「私は、とある呪いにかかっています」

「呪い?」

「はい」

そう言って、ソフィアは手首から袖を捲り上げた。そこには、黒い筋のようなものが根をはるように刺青されている。そして気づいた。その刺青には微量な魔力が流れている。

「この模様が全身に回ったとき、私は死にます」

「それは…」

「この呪いを受けたのは十歳の時です。私の家は貴族でした。しかし、貴族と言っても名ばかりで、少しだけ大きな家に住んでいたこと以外は、質素な生活をしていたんです。ある時、仕事から帰ってきた父が言いました『ようやくこの貧乏な生活から抜け出せる』と。母も私も理由を聞きましたが、父はその場はで答えず、ただ私達に『安心しなさい』と笑うだけでした。父は、貴族でありながら貧乏というところに、劣等感を感じているようでした。……父がやったことはその後になって分かったのですが、どうやら魔核を手に入れたようなんです」


「魔核……」

魔核とは、魔石よりも純度が高い鉱石だ。違いとしては、魔石は魔素が固まったものであり、魔物から取れるのだが、魔核は自ら魔素を放出する。故に、膨大な魔力を必要とする船などに使用され、とてつもない金額で取引される。


「知っての通り魔核は、世界でも数十個しか見つかっていない希少鉱石です。父は知人の貴族から、安くで譲ってもらったのだと言っていましたが、それは魔核ではなく、実験などによって造られた紛い物だったのです。父はそうとは知らず、莫大な金をつぎ込んで船を造りました。船を作るにはお金だけではなく、職人などのツテもなければいけません。父はそういったところは得意としていたため、船は順調に造られていきました。父はその頃よく言っていました『たとえ貴重なものでも、それを扱うことが出来なければ宝の持ち腐れだ』と。魔核を譲った知人の貴族には、船を造る能力はなかったのだと、よく自慢していました」


そこまで聞いて俺は、十年ほど前に話題になった事件を思い出していた。小さな村にも伝わってきた大きな事件だ。

それは、一隻の船が沈んだ話。船には多くの貴族や、王族が乗っていた。しかし、その船は出港してから、何日経っても戻っては来ず、ある時、壊れた船の残骸だけが、波打ち際に打ち上げられた。船の名前は確かーーー。


「ーーオルノイス号」

船を造ることに尽力した、貴族の名から取ったものだ。


「……知っているのですね。…そうです。その船はオルノイス号。私の本名はソフィア・オルノイス。大罪を犯して処刑されたラゼル・オルノイスの娘です」



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