表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギルドは本日も平和なり  作者: ナヤカ
問題だらけのギルド編
23/206

二十三話 カウルの経歴

ーーーカウル。俺は彼に興味が沸いた。というのも、Aランク相当の実力を持ちながら、万能型の仲間のためにBランクで居続けるというところが何より興味深い。野心が無いのだろうか?そんなはずがない。一度ランクの階段を上がり始めた者は、誰もがその頂点を夢見る。俺だってそうだった。そして、多くのものがそうであるように、いつかは越えられない壁に当たる。そこで踏みとどまるのか、別の階段を上がるのか、それともその壁に挑戦し続けるのかは本人次第だが、彼はそのどれとも違う。仲間のためにそこに居続けているのだ。

そして彼の瞳には、その選択をするとは思えないほどの激情が宿っていた。


あんな奴がいたら、俺は今でも冒険者を続けていたんだろうな。そう思ってしまったのは言うまでもない。


彼を調べてみようと思ったのは、単なる好奇心だった。



ーーーーで、調べてみたのだが。


「こいつは凄いな……いや、凄まじいと言った方が正しいのか?」


彼の経歴は普通じゃなかった。


まず、三年前に冒険者登録。なんと半年でFランクからDランクまで上がっている。これはとんでもない速度である。冒険者としての才能があれば、その人はDランクまでなら上がれるだろう。その平均はだいたい五年。つまり彼は、常人が五年かかるところを、半年で成し得てしまったのだ。ちなみに俺は三ヶ月でした。

そして、Cランクで初めてパーティー結成。その時の仲間の一人が、今でもメンバーであるあの女性だ。名前を『ソフィア』という。当時結成されたメンバー人数は3人。……そしてその一ヶ月後。彼らは二ヶ月間行方不明となっていた。帰ってきたのはカウルとソフィアの二人。もう一人は、ダンジョン探索中に死亡していた。


その後、二人は何度もパーティーを結成しなおしている。その数4回。その度に行方不明となり、救出依頼をギルドから出されていた。そして、帰還するのは必ずあの二人で、他のメンバーは死亡している。


まさか奴等、新メンバーを殺してる訳じゃないよな?……そんな疑惑まで持ちそうになるほどの不幸っぷりだ。その経過途中で、二人はBランクへと上がっていた。


「……なんだか、見てはいけない物を見た気がする。……とりあえず今日の依頼を終わらせよう」


俺は、カウルの経歴書を引き出しの中にしまって、掲示板を見る。毎度ながら多いな。……ん?

その中の一枚は、いつもの未達成依頼書ではなく、伝言用紙だった。


『君のために、血沸き肉踊る歓迎会をやりたい。ぜひ闘技場まで足を運んでくれ』


ビリッ。


なんだか見てはいけない物を見た気がする。

「さて、今日も張り切っていくかな!!」

良い仕事をするには、切り替えが大切だ。今見たものは忘れよう。


一階に降りると、奥の方に着々と新しい受付窓口が出来ていた。冒険者達もそれに気づいているからだろう。見てみると、順番で喧嘩をしている様子がない。問題が改善されると分かったら、人はそれまで辛抱出来るものなのだ。

出口に向かおうとすると、不意にナイフが飛んできたので仕方なく掴む。それからため息をついた。


「これって誰にでもやってるのか?……友達亡くすよ?」

そう、亡くすのである。なにせ、そのナイフは的確にこめかみを狙っているからだ。

振り向くと、やはりそこには、ソカがいた。手を後ろで絡めて、嬉しそうに笑っている。ナイフ投げて嬉しそうとか、こいつマジでヤベェ奴だな。

「誰にでもはしないわ。あなただけよ?」

「それが、別のことだったらドキドキするんだけどな。……ソカは俺を殺したいんだっけ?」

「殺したいわ。でも無理そうだから諦めたの」

諦めてねーだろ!果敢に殺しに来てるじゃねーか!!

「もういいや。で?何かあった?」

「別に。ただ見つけたから、仕事の邪魔してやろうと思っただけ」

こいつは本気で言っているのだろうか?

「……ソカはきっと凄い冒険者になれるよ」

なにせ、躊躇なく人を殺そうとするのだから。性格だけでいえばランクは既にS級である。

「あら、私を試験で落としたくせによく言うわね?」

「自分から降りたのは君だろ?」

「そうだったかしら?」

掴み所のない彼女の言葉に、からかわれているのだと分かっていても、ため息をつかずにはいられなかった。


「あぁ……そういえば、ソカは『カウル』という冒険者を知っている?」

「えぇ、もちろん。『仲間殺しのカウル』でしょ?」

……仲間殺し?そんな二つ名があるのか。

「その二つ名って、ただの表現だよね?」

恐る恐る聞いてみる。

「当たり前でしょ?本当に殺してたら、私が彼を殺してるわ」

あっけらかんと言うソカ。冗談に聞こえないところが恐ろしい。

「なんで仲間が死んでしまうのか知ってるかい?」

「さぁ?運が悪いんじゃない?実際、彼等が厄介な魔物と戦っているのを何度も見てるわ。しかも普段出現しないような魔物ばかり。あれは天性のものね。もう、彼等とパーティーを組む奴はいないんじゃないかしら?」

そうなのか。……本当に運が悪い奴なんだな。


「ねぇ?それよりも私今から昼ごはんなの。一緒に食べない?」

ソカが唐突にそんなことを言い出す。

「あぁ、悪い。今から仕事なんだよ」

「えー。つまんないの。じゃあ、今度行こうね?」

屈託のない笑顔を浮かべるソカ。表情だけならとびきり可愛いんだがなぁ。

「……返事は?」

「あっ……ああ。今度な」

妙な威圧にやられて承諾してしまった。

「絶対よ?じゃね」

そう言って彼女は去っていった。

まったく……あいつはどういうつもりなんだか。


ふと、誰かに見られているような気がして、そちらの方向に目をやる。

そこには、セリエさんが笑顔で受付を行っていた。俺を見ている様子はない。……気のせいか?

気を取り直して俺はギルドを出た。

「さぁ、今日も頑張るかな」


ギルドでの日々にも慣れてきた。問題は多少あるものの、なんとかやっていけそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ