おまけ:ifの世界〜選択肢aを選んでいたら〜
リディアが最終選択で選択肢aを選んでいたら
初代リディアはどう思ったのか
【初代リディアの独白】
あぁ……選択肢aを選んでしまったのね。
白く輝く光の中で、私は静かにその選択を見届けるしかなかった。
崩壊。リセット。やり直し。そう……また一から。
仕方ないわ。これも、あなたの選んだこと。あなたの選んだ世界。
今回は、せっかく……せっかくトゥルーエンドに辿り着けたというのに。
すべての心に寄り添い、光を灯してくれたというのに。
でも、あなたは怖かったのね。
本当に選び、選ばれることが。
間違えることが。
見えない未来を進むことが。
だから、決められた物語のある世界に戻ろうとした。選択肢に導かれる安心の中へ。
それを責めたりはしないわ。その気持ち……よく、わかるから。私も、同じ、だったから。
思い出すわ。前回のリディアは……カイルのルートだったね。
彼女は確かに彼を愛していた。けれど、戦争が起きてしまった。
カイルの帰還を信じて待とうとした。でも……耐えきれなかったのよね。
不安に飲まれ、孤独に震え、彼のいない日々に心が折れてしまった。
そして去ってしまった。彼が必死に守ろうとした未来から。
その前は……好感度を上げきれなかったリディアだった。
あのときは、シナリオの強制力が働いた。攻略対象の心が動かないなら、ルールに従ってヒロインが選ばれる。
そして……アイラが選ばれた。
その瞬間、リディアは物語の外へと追放されたのよね。
悪役令嬢として皆を苦しめた存在だと断罪され、彼女は幸せにはなれなかった。
どれも苦しかった。痛かった。
次はどんなリディアかしら。
私は……アイラの中で、この深い意識の奥で、ずっと待っている。
いつか、本当にこの世界を解き放ってくれるリディアが現れることを。
私を、私たちを、この繰り返されるシナリオの檻から救い出してくれる人が現れることを。
だから私にできるのは……待つことだけ。
いくらでも、何度でも。
ただ、少しだけ。
ほんの少しだけ、この世界の真実の欠片を散らしておくの。
気づいてもらえるように。
たとえば、あの古びた絵本に。
たとえば、劇場の台本に。
たとえば、王家の図書室の奥深くに。
たとえば、強い魔力を持つ者が見る夢の中に。
そのどれかに、気づいてもらえたら……いつか。
いつか、あなたは本当の選択をする。
きっと、その日が来る。私が消えゆくその前に。
私は信じてる。信じるしかないの。
だから……待つわ。リディア。
いくらでも。いつまでも。
どれだけこの物語が繰り返されても。
どれだけ私という意識が薄れていっても。
あなたがこの檻を壊すその日まで。
読んでいただき、ありがとうございました。
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