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48.オネエは助けを呼ぶようです

「水臭さいな。オレたちたちも何か手伝わせてくれよ。」


 翌日、俺がイベントのオーガナイザーを請け負ったという話は皆が知るところとなっていた。陽子さんがふれ回っているのだろう。次の打ち合わせでは陽子さんも交えて話し合うことになっている。


 とんでもない予算を提示されないように注意しておかないといけないかも。スポンサーが居ると言ってもイベントだ。赤字を出せば成り立たないくらいに思っておかなければいけない。


「ヒデタカ。一応言っておくけど、女装男子中心のイベントよ。一般人も入れることは入れるけどスタッフも入れて90パーセントは女装男子なの。解っているの?」


 ハッキリ言ってバイト代は出せない。ロハで手伝ってくれるなら、こちらからお願いしたいくらいだ。


「もちろん。」


 ヒデタカは軽く言ってのけるが、そんなに簡単じゃない。


「本当かな。女装男子の中にはいろんなひとが居るよ。綺麗なのから・・・ここだけの話・・・汚いのはまだマシなほうでゲテモノかと思うような人も居る。そんな人たちをアタシと同じように扱わなくてはいけないのよ。お坊ちゃまのヒデタカに出来るとは思えないわ。」


 貞操は守ってもいいが主催する側の人間としては、相手を傷つけるようなことは言ってほしくないのだ。


 今回はお酒が入らないから相手が暴走する危険性は低いが、これだけイケメン揃いだ。告白するならまだしも、イタズラするような輩がでないとも限らない。嫌、絶対出る。


「オレ限定かよ。」


「そうね。女装男子の中にはヒデタカに取って軽口でも、いちいち全部傷つく人間もいるの。どんなにみっともない女装でも男丸出しでも、良いところを見つけてあげて褒めてあげるくらいじゃなきゃやれないわ。例えばアタシだったら『色が白いね』とか。でも『色白は七難を隠す』とか言いそうじゃないヒデタカなら。」


「どこのオヤジだよ。沈黙男子も得意だぞ。ユウタほどじゃないがな。」


 確かにユウタは黙って立っているだけで人を惹きつける。少し笑いかけるだけで人に惚れられるところがある。誰にも真似出来ない芸能人級、いやそれ以上かもしれない。


「もちろん笑顔を振りまいて貰う必要もあるの。ブスッとしていたら・・・悪い想像しかしない病的な男の子もいるの。アタシみたいに開けっ広げじゃないわ。女装イベントに来るだけでも、おっかなびっくりという男の子もいるの。そういう男の子たちに良い思い出となることが理想ね。」


「出来る。やってみせるさ。だからやらせてくれ。」


「まあそこまで言ってくれるなら、大丈夫。お願いするわ。」


 ヒデタカがホッとした顔をする。


「タツヤはどう?」


「頑張る。」


「じゃあ、お願いね。」


「おいおい。タツヤには随分扱いが違うじゃねえか。」


「ヒデタカ解ってなかったの? タツヤはアタシが悲しむようなことはしないわ。」


 タツヤは随分と変わった。いや俺が変えてしまったのだ。


「チヒロが悲しいのか。俺の行動如何で・・・それが・・・決まるんだ。」


 これだからヒデタカは怖いのだ。時々失敗しても笑い飛ばせばなんとかなると思っている。真剣に考えていない証拠だ。


 確かに好意を持つもの同士、友人同士なら、それでもいいかもしれない。だがそこに赤の他人が関わってくるようになればそれではダメなのだ。


 特にメンタル面が弱い傾向にある女装男子相手では致命的ダメージを与えかねない。


「ユウタはどうするの。参加してくれる?」


「もちろんだよ。前から言っている通り、僕たちはチヒロのナイトだ。決して傍を離れないさ。」


 これを真剣な目で言ってくるのだからユウタには敵わない。思わず顔を少し上げ零れそうになる涙を奥に流す。


「私も参加していい?」


 ホームルームが終わった順子さんが喋っていた俺たちを注意せずに寄ってくる。ホームルームをやりながら聞いていたらしい。器用だな。


「ダメです。と言ってもついてくるんですよね。」


 一般のお客様として入って来られたら、お手上げだ。それで引っ掻き回されるよりは、初めから巻き込んでしまったほうが手綱は取れる。まあ制御できるとは限らないけど。


 一番の不安要因は順子さんだ。


「当たり前じゃない。」


 女装男子の中にも女性が好きなストレートと男性が好きなゲイと両方とも好きなバイセクシャルが居る。ゲイやバイセクシャルは女性に何かを言われたとしても大丈夫な場合が多いがストレートの女装男子は・・・俺が相手に嫉妬しそうだ。


「じゃあ、アタシの保護者として来てください。会場では、どれだけイチャイチャしてもいいですよ。」


「本当に?」


 順子さんの目が爛々と輝き出す。何をする気なんだか。


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