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39.浮気を疑われました

「えっ。それは・・・「嫌です。絶対に嫌!」」


「振りだけでいいんだよ。ホッペにキスでも構わない。」


 演技テストに問題のキスシーンを要求された。どうせ上条さんに譲るなら今しか無いと思ったら、先を越された。幾ら演技でも男とキスするなんて有り得ない。今、回避したとしても本番ではしなくてはならない。


「「嫌です! それでも嫌っ。」」


 今度は上条さんと被った。こんな公衆の面前で例えホッペにキスするなんて嫌だよな。


「嫌だ。そもそもキスシーンがあるなんて聞いて無い!」


 相手役のヒデタカまでもが強硬に反対する。例え振りでも俺とキスするなんて・・・嫌だよな。


 何ショック受けてるんだ俺。


「何を言うの英孝。」


「母さんも何考えているんだよ。映画のワンシーンと言えど、息子のキスシーンが見たいのか! どんな変態だよ。」


 バシッ。


 流石に言い過ぎだと解っていたのだろう。母親の平手打ちをモロに顔で受け止める。


「とにかくアタシはこのオーディションから降ります!」


「何故だ。チヒロ君はヒデタカ君の恋人なんだろ。」


 俺が舞台袖に逃げようとしたところ、監督さんが道を阻んでくる。意外と素早い。この人。


「違います。違うんだ。俺は男の娘なんだ。ヒデタカ。行こ。」


 監督さんがダミ声で怯んだ隙に俺はヒデタカの手を捻るようにつかみ上げて有無を言わさず楽屋に戻った。


「痛い。痛いって。全く見かけによらず強いんだから。」


 大袈裟に痛がるヒデタカの腕を放す。


「お母さんに言いたく無いことを言わせてゴメンね。お陰で助かったわ。」


「あれは本音だぞ。あの人はあそこまでして、新しい役が欲しいかよ。それにしても、チヒロが男だとバラしても大丈夫なのか。」


「あの映画は山品家の話よ。タツヤにあんな能力があると知られたら拙いことになりそうなの。それに男の娘はいつでも辞めれるから大丈夫よ。」


 『キャラメ・ルージュ』を辞めれば済む問題だ。事情を話せば陽子さんは解ってくれるだろう。オネエキャラも学校でしか使って無い。それも最悪辞めれば済む問題だ。


 失って困るようなものは無いはずだ。多分ね。


 後はここからどうやって逃げるか。


「井筒和重だ。トモヒロくん、ここを開けてくれないか? 俺と志保以外誰も居ない。」


 扉の方で呼び出しベルが鳴り、和重さんの声が響いた。


「ヒデタカ。開けてあげて。和重さんに謝らきゃ。」


 ヒデタカが扉を少し開けると、そのままゆっくりと扉が開いた。


「とりあえず、報道陣には未成年だから名前をあげるなとは言っておいた。」


「和重ったらね。トモヒロくんが本当に男なのかという質問に夏休みに温泉旅行に行ったことを喋っていたわ。異常に食いつきが良かったから和重の愛人と思われたかもよ。」


「志保さん。それがどういうことか解って言っているんですか。また『西九条れいな。ざまぁ!』って書かれますよ。それとも『新恋人は少年A?』かな。」


「いいわよ。慣れているもの。」


「とにかく和重さん。記者会見を滅茶苦茶にして申し訳ありませんでした。」


「別に構わないよ。映画の宣伝になったみたいだしな。志保がいるといつも何かしでかしてくれるから、仕込まなくても済む分だけ楽なんだよな。ヒデタカくんは良かったのか?」


 オーディションに男の娘が紛れ込んでいたというのが宣伝になるらしい。騒がれればOKばのか。


「もう当分来ないだろうし。食事を作ってくれる子がいるという話しかしてないから嘘はついていない。あの人が勝手に誤解してただけさ。」


「そうじゃなくて俳優を目指していたんじゃないのか?」


「別に・・・親父の跡を継ぐつもりだったし、継がなかったとしても普通に就職するさ。何処か選べるんならチヒロと同じところがいいなと思っただけ。タツヤだけなんてズルいじゃん。」


「勝手についてくればいいわ。その代わり人使いは荒いほうだから覚悟しておいてね。」


 勝手言いやがって。人生を他人に押し付けんなよな。


     ☆


「ちょっ。ここ降りる駅じゃないよ・・・。」


 翌日の朝に約束の電車の中の順子さんは凄い笑顔だった。悪い予感しかしなかった俺は逃げようとしたがガッチリ腕を掴まれて、電車から引き摺り降ろされてしまったのだ。


 連れ込まれたのはラブホテルだった。


「これでも気を使ったのよ。数学準備室でも良かったんだけど。こっちのほうが外に声が漏れないし。」


「エッチしに来たんじゃないの?」


 初めて来たラブホテルは結構明るくて綺麗なところだった。エッチするところだけど、頭で警鐘が鳴り始める。どう考えても危機だ。それも命に関わりそうな危機だ。


「してもいいけど。どうする話は後のほうがいい?」


「じゃあ。エッチしよう。」


 今までの傾向からすると順子さんはエッチすると心が落ち着くみたいだから、絶対に先だ。


     ☆


「『西九条れいな』とアタシの関係? バイトの先輩と後輩の関係よ。オネエの演技指導も受けたし、ときどきマッサージの依頼も受けるけど。先輩と後輩が一番しっくりくるかな。」


 SNSで俺が志保さんを庇ったときのシーンが拡散されていたのだ。もちろん2人の関係を誤解されるようなコメントも入っていた。


「エッチなマッサージ?」


 エッチしている最中に何度か首を絞める振りをされた。本当に浮気をしたら殺されそうだ。


「あのねえ。アタシを何歳だと思っているわけ? その辺のエロ親父じゃないんだからね。今度やってあげるわよ。その代わり痛いと言っても止めないし、アザになっても知らないからね。」


「今できないの?」


「オイルを使ったマッサージだから無理。それにこんな柔らかいベッドじゃあ無理だね。」


「マッサージオイルなら頼めば持ってきてくれるよ。浴室は広いから十分できるんじゃない。」


「浴室なんでダメだよ。滑るんだから。」


 何故、マッサージオイルが置いてあるのか解らなかったがエッチをするときに使うものなのだろう。

随分、遅れてしまってごめんなさい。


明日から続き頑張ります。

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