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12.オネエだけどエスコートされるようです

「どうしたの。珍しいね。優子さん。」


 高等部の食堂に優子さんが現れた。俺のことを心配して見に来てくれたのだろうか。


「日曜日の打ち合わせをしようと思って。楽しみだわ。」


 そうだよな。順子さんだけでも奇跡だというのにオネエの俺がモテまくる訳が無いのだ。


「日曜日に何かあるの?」


 その順子さんが腕に絡みついてくる。肘にその豊かな胸が押し付けられているがオネエだから誰もが視線を逸らしているから気付いて居ないようだ。


「アタシ着せ替え人形をさせられるの。順子先生。」


 浮気を疑われるのも嫌だから順子さんに告げ口する。まだ付き合っても居ないんだがな。


「いいわね。私も参加しようかしら、どこでやるの?」


 いやそこは止めるところじゃないのか。優子さんもそうだけど、順子さんもオコゲじゃないだろうな。オネエとしての俺が好きという意味だったら嫌だぞ。


「優子さん家だけど。」


 俺がそう言うと順子さんの顔が引き吊る。


「山品家なの?」


「なにかあるんですか?」


「いやその・・・「タツヤんちは男女を問わず強面の人が多くてその筋の人間と間違われるんだ。」」


 順子さんが言いにくそうにしていると横からユウタが口を挟む。


 なるほどタツヤや優子さんみたいなのがゾロゾロ出入りしていれば間違われるよな。


「着せ替え人形なら文化祭でやって貰ったらどうだ。優子。中学時代最後の文化祭で家政科部のモデルをチヒロに引き受けて貰えばいいじゃないか。」


 この学校の文化祭は2日間行われ、普段仕切られて使用している体育館は仕切りを取り払い1日目中等部と2日目高等部に分けられて各種イベントが催されるのだ。


「お兄ちゃん。その考え貰った!」


 良かった。とりあえず優子さんと2人きりになることは無さそうだ。


「チー君。それでお願いします。」


「いいわよ。元々、借りた衣装のお礼だもの。それでアタシはどんなことをやらされるの?」


「ウエディングドレス3着は確定でしょ。」


「おい。それってまさか俺たち3人がエスコートするのか?」


 いつの間にか、タツヤ、ヒデタカ、ユウタもモデルのメンバーに含まれているらしい。俺が居なくても大成功間違い無しじゃないか。逆に俺が居ることで大失敗に変化する可能性もあるってのに、わざわざ俺のエスコート役に抜擢しなくても。


「そうよ。あとは男装の麗人でしょ。順子先生とのダブルウエディングも捨てがたいわ。」


 男装の麗人は予想通りだ。キッチリメイクでタキシードでも着るのだろう。


 しかし何もダブルウエディングにしなくても・・・普通の男装にしてくれよ。


「それはいいわねえ。私も是非参加するわ。」


 ここは『やったー』と喜ぶべきところだろうか。非常に悩むところだ。


「チヒロ。土曜日は空いているか?」


「何よヒデタカ。アタシとデートしたいの?」


「アホ言うなや。皆で泊りがけで海に遊びに行こうちゅうお誘いやん。」


 ヒデタカは動揺したのか突然関西弁になった。彼が勉強したお笑いは関西が中心な所為かこういうことが良くある。それでも誰もツッコまないのは彼がイケメンすぎるからであろう。


「また出たよ。ヒデタカご自慢のプライベートビーチ。9月の房総半島なんてクラゲだらけで泳げたものじゃないだろ。」


 いつものことなのかタツヤがツッコミを入れるが周囲の女の子は騒然となる。女の子ならお金持ちの象徴であるプライベートビーチで遊んでみたいらしい。


「いいわね。憧れのプライベートビーチ。でも泳げないのはツライわね。雨が降るかもしれないし、どうせなら来年の夏休みに誘ってよ。それよりもZiphoneドームの流水プールに行かない?」


 泳げないのでは女の子たちも水着には着替えまい。それよりはプールのほうが現実的だ。順子さんの水着姿も是非とも拝見したい。本当は2人っきりのほうが良いけど無理だろう。


「えー。あそこは入場制限があるだろう。朝早くから並ぶのか?」


 どうやって作ったのかドーム球場の側面にウォータースライダーが設置してあるのだ。球場の中を通り抜けるところもあって、一瞬だが球場の中も見れるらしい。


 それだけでも凄く人気なのだが流水プールを含む遊園地の入場料が格安なのだ。流水プール以外にもこれまたドーム球場の側面に設置されたジェットコースターなどの遊具もあって飽きさせない工夫がされている。


 そのため、今夏流水プールで入場制限があったのだ。


「いいえ。特別優待パスがあるから、アタシの同伴者なら大丈夫よ。お盆期間中も妹たちを連れて遊びに行ってきたわよ。」


 この優待パスはアルバイトを含む従業員に配られているもので辞めてもその年は使えることも確認してある。そうは言っても人員が足りなくなったときのために籍だけは残してあるので毎年送られてくると思う。


「あのニュースになったお盆期間中に悠々と入場したのか。凄いな。それなら是非行きたい。」


 全国各地で猛暑日となったお盆休み期間中、Ziphoneドーム周辺でも35度を越える中、流水プールを待つ人たちのために球場の観客席を試合開始ギリギリ2時間前まで開放したらしい。



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