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自称!平凡魔族の英雄ライフ~B級魔族なのにチートダンジョンを作ってしまった結果~  作者: あまうい白一
第三章

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第17話 新ダンジョンは結構シビア

 ミスラの事を超特進クラスの皆が知ってから数日後のことだった。

 その日はいつも通り、俺達は超特進クラスの部屋に集まり、十代目魔王のダンジョンに潜って魔王の遺産探しに励んでいたのだが、


「ミスラ達、今日も来なかったなあ」

「そうですねえ。数日前に十代目のダンジョンに挑むという話をしましたが、それっきりですね……」


 もしも良ければ一緒に行こう、とも言ったのだが、来る事はなかった。

 昨日は勿論、今日も午前と午後のほぼ一日中潜っていたのだが、彼女たちの気配は一切なかった。

 それは俺の隣にいたコーディーも一緒らしく、

 

「俺が聞いた感じじゃ、ウチのクラスの奴らも天竜の姫さん達の姿を見ていないと言ってたぜ、クロノ」

「マジか。超特進クラスって、結構いるから、一人くらいは会っていてもおかしくないと思ったんだが……」


 この魔王城は広いし、城下町も同じくらい広い。

 とはいえ、生活スペースは一緒なのだから、少しくらい顔を合わせることはある筈なのだ。

 けれど、それが全くないという。

 

「天竜の姫さん達、魔法が滅茶苦茶得意で、一緒に探索してくれると凄く楽になるから、クラスの連中と一緒に誘おうと探したんだけどな」

「おお、そういう事もしていたんだな」


 確かにあの二人は、先日の健康診断の際に、多様な魔法を使っていた。

 ミスラは水系の、アリアは炎系の魔法が得意らしかった。 

 更には二人とも回復系の魔法も使える、とのことで、『天竜って、どんな場所でもある程度対応できる万能な魔法の使い手なのよ!』とアリアが自信満々に言っていた記憶がある。 

 

 魔王のダンジョンと言う何が起きるか分からない場所に向かう時などには、非常に有用だろう。誘おうとする気持ちは分からないでもないが、

 

「……でも見つからなかったのか?」

「ああ、魔王城を軽く二周回ったが影も形も無かったよ」 

「探しても見つからないとなると、相当だな。もしかして……性別バレした翌日は顔を合わせづらいものなのかもなあ……」


 俺がポツリとつぶやくと、横を歩くソフィアが、うーんと喉を鳴らした。

 

「どうなんでしょうね。ミスラさんあの後すっきりして、楽しそうな表情をしていましたから、顔を合わせづらいような雰囲気は持っていませんでしたよ。勿論、アリアさんもですけど」

「だよなあ」


 少なくとも、あの性別バレをした瞬間に物凄い打ち解け方をした気はする。

 人との距離感を掴むのがお世辞にも上手いとは言えない俺だけれども、それくらいは感じ取れた。ただ、そうだとしたら、顔を合わせられない理由が分からない。

 

 魔王のダンジョンに潜る際に記入が必須な探索予定書には、彼女たちの名前も無かったし。

 魔王のダンジョンには居ない筈なのだ。

 

 ……となると、街にずっといるとか、なのかなあ。

 

 本当にどうしたんだろう、などと思いながら俺達は魔王のダンジョンから超特進クラスの部屋に戻ってくると、そこには、 

 

「え……あ……お帰り、クロノ君に、皆も……」


 頭を包帯でぐるぐる巻きにしたミスラが、ソファに倒れていた。

 

「ミスラ……!?」

 

 いや、彼女だけではない。

 

「うう……く、クロノ? あ、挨拶をしたいけど、動けない、わ……」


 その隣にはアリアもいた。

 彼女は彼女で傷だらけで、手足に血の滲んだ包帯を巻いた上に、身体を動かさないようにギブスをはめられていた。。

 よく見れば全身に擦り傷や裂傷があり、顔には脂汗が浮かんでいた。


「格好悪い所を見られちゃったね。まさか、こんな時間帯に出会うなんて……君たちはいつも遅くまで活動しているんだ……。凄く頑張っているんだねえ……」 

「いや、俺達の頑張りとかよりも……どうしたんだ、そんな傷だらけで」

 

 昨日から顔を合わせていないと思ったら、ボロボロになった状態でいきなり現れるだなんて。

 

 それも、明らかに重傷だ。

 

 包帯を見るに治療済みだろうし、医務室には行ったのであろうが、その痛々しさは明らかに異常だ。だから理由を聞いたら、彼女たちは、俺達の顔を見るバツが悪そうな笑みを浮かべた。

 

「ちょっと、ダンジョンに潜っていたら、こうなったのさ」


 何気なく告げられたその言葉に、俺の隣にいたコーディが眉を顰める。


「ダンジョンだと……? 待ってくれ。天竜の姫さん達の体は俺達竜人よりも数段頑丈な筈で、魔法も得意だろうに、そこまでのダメージを負うほどの場所だったのか……!?」


 コーディの声には驚きが混じっていた。

 天竜を尊敬していた彼は、その凄さを良く知っているのだろう。だからか、とても信じられないというように首を横に振っていた。

 

 俺としても、彼女たちの身体能力、魔法能力は非常に高いのは分かっている。

 そんな二人が、ここまで傷つくなんて一体どんなダンジョンに潜ったんだろうか。


「って、そうだよ。二人は何代目魔王のダンジョンに潜ったんだ? 探索予定書には二人の名前は無かったんだけど」


 予定書に記入する事も無く、内密にしてまで、どんな魔王のダンジョンを潜っていたのか。

 それを尋ねてみたら、ミスラは苦笑して首を横に振った。


「いやあ……ボクらの名前は、予定書に書けないよ」

「え? なんでだ?」

「だって……ボクらは魔王のダンジョンには潜っていないんだから」


 ミスラの言葉に今度は俺が首を傾げた。


「うん? 魔王のダンジョン以外に、そうなるような場所があるのか……? というか、この魔王城に他に潜れるようなダンジョンはあったっけか?」


 魔王城に入る際のパンフレットには、そんな危険なダンジョンがあるだなんて話は載っていなかったはずだが、と俺が疑問を零すと、


「あるんだよ、それがねえ」


 答えが来た。

 背後からだ。振り向けばそこには、薬箱を持って、とてとてと歩いてくるリザがいた。


「治療薬、持ってきたよー。とりあえず、これをがぶ飲みして安静にしてれば明日には動けるようになるから飲んで飲んでー」


 そして薬箱の中から緑色の瓶を出すなり、ミスラ達に渡していた。


「リザさん? なんだか落ち着いてますけど、二人がこうなった原因について、リザさんは知っているんですね」

「まあねー」


 俺の問いかけにリザは頷きながらアリアたちに視線を向ける。

 

「ミスラルト君とアリアちゃんの個人情報に関わる事だから、今まで言わなかったけどね。……でも、ここまでクロノ達に見られたら、話しちゃった方が良いんじゃないかな、ミスラルト君。君たちの、『天竜始祖の契約』について。――よければ、私も説明を手伝うよ」



 リザの提案に、薬瓶の中身を口に流し込んでいたミスラは、ふう、と一息吐いた後、数秒動きを止めた。

 何と話せばいいのか、悩んでいるようでもあったが、やがて、

 

「そう、ですね。隠し事は出来るだけしないと、この前決めたばかりですから……魔王様。どうか、説明の手助けをお願いします……」

「りょーかいー。まあ、二人は治療中だからしばらく安静にしている必要があるし、私が基本的に喋っておくよ。……二人が潜っていた、覇竜のダンジョンについて、ね」


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最強の預言者な男が、世界中にいる英雄の弟子に慕われながら冒険者をやる話です。
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