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自称!平凡魔族の英雄ライフ~B級魔族なのにチートダンジョンを作ってしまった結果~  作者: あまうい白一
第三章

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side ミスラ 変わった流れとタイミング


 食堂からの自分たちのダンジョンへ向かうため。魔王城の廊下をミスラとアリアは並んで歩いていた。

 

「今日は……今日は物凄く楽しかったわね、ミスラルト!」

「そうだね。これまでで、一番賑やかだったね」

「今、思い返してもドキドキするわ! 天竜のお城に他の種族が来た時なんて、こんな風に、ミスラの事を話せなかったもの」

「うん。本当に、そうだねえ……」


 昔はこんな風に自分をさらけ出して、他人と喋る事が出来なかった。

 女性だとばれては天竜の不利益になる。ばれては舐められる、と父親からも教えられていたから。でも、今回、同級生と話してみて、その感覚は無くなった。

 

 ……皆、ボクを受け入れてくれるんだものなあ……。


 可愛いといってくれるヒトもいたし、格好いいと言ってくれるヒトもいたし。

 天竜の王子とか、姫ではなく、ミスラルト個人として見てくれた。

 本当にみんなと友人になれたような気がした。

 

「私も、私もよ! 誰も天竜とか、気にしないの! 怖がられないのよ!」


 そう、アリアに関しても、同級生は皆普通に接してくれていた。

 巨大な竜に変化できる天竜の一族だというのに、全く恐れたりはしない。

 有り難いことだが、でもどうしてそうなったのか気になったので聞いてみたら、

  

「……『クロノの時と同じ過ちはもうしたくないから。力が大きいからと言って遠巻きから見ているだけは止めたんだ』って皆は言っていたからね。……ボクたちの懸け橋になってくれたのは、彼だったんだね」

「ええ、ええ! クロノのお陰よ。流石はあたしを受け止めた魔人よ」


 アリアは興奮したように手と尻尾をブンブン振る。


「心も優しくて力強いというか、うん! より一層、仲良くなりたくなったわ!」

「あはは、程々にね。アリアに迫られると、怖がりはしないけど、テンションが高すぎてちょっと引くって皆言ってたから」

「むう、それは、気を付ける事にするわ!」


 ふんす、とアリアは鼻息を荒くしながら拳を握った。

 いつも彼女は元気であるが、今日は特段勢いが強い。

 それくらい彼女も楽しかったのだろう。

 自分も本当に楽しかった。だから、

  

「ああ、これでもう、ここに来た甲斐があったし……悔いはないねアリア」

 

 ミスラはぽつりと呟いた。

 その言葉にアリアは眉をひそめた。


「……あたしは、まだ、皆と楽しく生活したいけれども……でも、もう時間なのね、ミスラルト」「うん。ここに来てもう数日。契約で決まっている挑む時間になっちゃったからね。クロノ君のお陰で、踏ん切りは着いたから良かったけどね。――たとえ、これでボクたちの魔王城の生活が終わってしまうのだとしても、皆と一緒に動けなくなるのだとしても、充分、思い出は得られたから」「あたしは思い出にする気は無いわよ。クロノ達は『一緒に魔王のダンジョンを攻略しに行こう』って言ってくれたんだし」

「そう、だね」

「だから、また、楽しい生活に戻れるように、頑張りましょう、ミスラルト」

「うん。この楽しい思い出をまた作れるように、あの魔窟に挑もうか、アリア……。古より存在する天竜の契約を果たすためにも、ね」



 その日から丸二日間

 天竜の双子は、魔王城から姿を消した。

 

  

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