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自称!平凡魔族の英雄ライフ~B級魔族なのにチートダンジョンを作ってしまった結果~  作者: あまうい白一
第三章

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第12話 比較対象による勘違い


 俺は何やら呆然としているミスラとアリアに首を傾げた後で、彼らと共に水面に浮上する。


「ぷはっ。――どうしたんだ、ミスラにアリア。検査は終わりってことを知らせに来てくれたのか?」


 そしてプールサイドにあがりながら二人に聞くと、彼は喉の奥から絞り出すような声で、


「あの……二十分以上潜ってたのだけど……平気、なのかい?」

「平気って……まあ、この位ならな。たった二十分くらいだし」

「たった……って、魔法無しなのよね、クロノも!?」

「そりゃ、検査だし。魔法は使ってないぞ。そうですよね、リザさん」


 ミスラとアリアからの問いかけに頷きながら、俺はリザに話を振った。

 彼女であれば魔法を使ったかどうかの判別もしているだろう、と思ったからだ。


「そうだねえ。クロノは完全に生身のまま、呼吸してたね。潜った時からクロノの生体反応は殆ど変わりなかったし」

「魔王様は、分かっていたの、ですか……」

「勿論だよミスラルト君! 私は魔王なんだから。自分の学生たちが危険だなって思ったら、直ぐに助けに入るもの!」


 リザは胸を張りながら言ったあとで、でも、と呟きながら俺を見た。

 

「今までの身体能力検査から、何となくクロノの肺活量の方も想定してはいたけれど、水の中であまりに平常でい続ける物だから、結構びっくりしたけどね」

「田舎で素潜りが得意な婆さんから習ったんですよ。俺があまりに潜水が下手だから、息を止める時は平常心でいないと、直ぐに呼吸したくなるから、気を付けろって」

「素潜りが得意……ねえ。そう言えばクロノって潜水が下手って言うけど、何分くらい潜っていられるの?」


 リザのセリフに、俺は頬を掻く。

 何分くらいと正確に測った記憶があるのは、かなり昔の事だ。


「ええと……十歳ぐらいの時に測ったら、二時間、くらいでしたかね。今はもう少し伸びていると思いますが。でも、その辺です。水棲系種族にはどうしたって敵わないレベルですから、俺は下手な方なんですよねえ」

「ああ、うん。分では無くて、時間レベルなんだね。問いかけ方を間違ったよ」


 はは、とリザは苦笑しながら言葉を続ける。


「というか水棲系に勝てる勝てないの話をする方がおかしいから、それを比較対象にして苦手と言ったらいけないよ。私やソフィアちゃん、サラマードなら君を良く知っているから良いけど。言葉は慎重に使わないと、無理して潜っているんじゃないかと不安に思うヒトも出て来るからね!」


 そう言って、リザはミスラ達を見た。

 心配という言葉に俺は一瞬首を傾げたが、


「え……というと、まさか……ミスラやアリアが潜って来たのって」

「うん。君を心配してね。助けようとして、一気に飛び込んだんだよ」


 リザの言葉に俺が目を見開いていると、俺の前にいたミスラとアリアが照れるような表情で口を開く。


「ご、ごめんね、クロノ君。勝手に焦って勘違いをしてしまったようだ……。思い込んだら一直線に行動してしまうのが、ボク達兄妹なのだけれど、流石にダメだったね……」

「ええ。ええ、何だかとっても先走ってしまったようだわ」


 と、申し訳なさそうに言ってくる。

 

「あ、いや……謝る事なんてないって。変に不安を与えた俺が良くなかった。というか、むしろ、ありがとうと言わせてくれよ、ミスラ、アリア」

「「え?」」


 二人の天竜は俺の言葉に驚くように、声を重ね合わた。

 

「だってさ。俺が溺れてると思って、助けに飛び込んできてくれたんだろ?」

「それは……まあ、折角できた友達を、失くしたくないからね。助けに行くのは当然だよ」


 ミスラの言葉にアリアも頷く。

 そんな二人の様子に、俺は嬉しく思う。


 ……故郷では爺さん婆さんはいたけれど、こういった経験はしたことが無いからなあ……。


 ああ、本当に友人がいるというのは有り難い事なんだな、と。魔王城に来てよかったと実感して、心がジーンとしてしまう。

 だから、俺は二人の手を取って、もう一度礼を言う。

 

「心配して、助けに来てくれて有り難うよ、ミスラ。アリア」

「う、うん。ど、どういたしまして」


 俺の言葉に、ミスラは照れくさそうに、アリアは頬を赤くしながら手を握り返して来る。 

 そんな俺たちを見て、リザはよしよし、と満足そうに頷いていた。

 そんな時だ。

 

「魔王様ー魔王様ー!」


 プールと繋がるトレーニングルームの方から声がした。

 見れば、プールの入り口に、ダンテ教授がいる。 

 

「うん? ダンテ教授? どしたのー?」

「どうしたというか、医務室の方に次の診断予定者が……というか、超特進クラスのほぼ全員が来ていますー。『天竜の一族が健康診断をやっているなら、自分たちも一緒にやってみたい』と言ってまして」

「ああ、なるほど。まあ、今期の学生たちは好奇心旺盛だから、そうもなるよね」


 リザはそう微笑んだ後で、俺達の方に振り返った。

 

「それじゃ皆の測定は、これで一件落着で終了って感じで良いから。あとは自由時間って事で。多分、これからクラスメイトもどんどん来て、賑やかになるからね。いっぱい遊んじゃってよ。あ、でもクロノはあとで体調面の検査はさせてね。一番長く潜ってて、本当に不調は無いのか調べたいからさ」

「あ、はい。了解です、リザさん」

「うん、じゃ、また数分後にねー」


 リザは手を振って言いながら、医務室の方に戻って行った。

 それを見送った後で、

  

「それじゃあ、適当に泳いで楽しむか」 

「おー」


 俺たちは、気楽な水遊びモードに突入していくのだった。

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