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自称!平凡魔族の英雄ライフ~B級魔族なのにチートダンジョンを作ってしまった結果~  作者: あまうい白一
第二章

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エピローグ:明るく落ち着く魔人のダンジョン

 俺はフロアの端に設置された椅子に座りながら、自分のダンジョン百層目を眺めていた。


「いやはや、まさか俺のダンジョンがこんなにも賑やかになるとはなあ」


 今、俺のダンジョンでは百名以上の知人が、明るい表情で酒や飯を飲み食いしていた。

 ほんの数日前までは、この辺りなどは殆どが使われていなかった。


 それこそ、俺が見回りに来るだけの、広くて寂しい空間だったのに。

 

 ………今ではこんなにも人が訪れて、楽しそうにしてるんだもんなあ。

 

 何というか、有り難さすら感じるな、と感慨深く思っていたら、、

 

「クロノー。お疲れー」

「……ユキノさん?」


 呪文の刻まれた包帯を首に巻き付けたユキノがやってきた。


「大丈夫なんですか? 割と重傷を負ったって、リザさんは言ってましたけど」

「問題ない。もう医務室での応急処置は終わったし、体もこの通り再生した」


 ユキノは両腕を万歳させながら、身体を見せつけて来る。

 鬼神ソフィアに吹き飛ばされたときには骨折をしていたような気もしたが、流石は銀狼だ。回復が早い。


「ちなみに、背中とか、胸とか、見えないところの傷も治ってるけど。見る?」

「あの、健全なパーティーなので。世間話的な感じで露出しようとしないでください」


 俺のダンジョンで寝ている時もそうだが、この人は微妙に裸を見せつけたがる癖があるようだ。その辺りは種族的な特性なのか個人的な特性なのか分からないけれども、ともあれ、こんな往来の場で脱がれても困る。

 ――いや、男としてはとても見たいけれど、今はそう言う雰囲気じゃない。


「まあ、何と言いますか、今回はありがとうございました。ユキノさんの事前情報が無かったら、あの爆発がどの程度か覚悟も出来ませんでしたし」

「爆発……爆発ね。治療中に一部始終をリザから聞いたよクロノ、あのソフィアの爆発、生身で耐えたんだってね」

「え? ああ、まあ。慣れていたので」


 俺の言葉にユキノは眉をひそめた。


「あれに慣れていた……って、今度どういう身体をしているのか、触らせてほしい。あと一度、銀狼の医療チームで調査もしてほしいところ」

「いや、調査とか、そんな大げさな事をしなくても。爆発を十数年も食らい続ければ誰でも慣れますって」

「……慣れちゃダメな奴だと思うよ、それ。普通の魔族は慣れる前に重体に陥ると思うし」

「いや、勿論、俺だって最初は結構怪我しましたよ? 段々平気になっていったんで、程度の問題だと思います。ほら、アレですよ。子供のころは注射が痛くて泣いていたのが、いつの間にか我慢できるようになった、的な」


 そう言ったら、ユキノはうんうんと頷いた後で俺に半目を向けてきた。


「うん、注射と爆発を同列に考えてもダメだと思うんだ。というか、クロノ。今度真面目に医療チームに行かない? 調査というか、健康診断代わりでもいいから。魔王城にいる間に一度は診断しておくって決まりもあるしさ」

「へえ、そんな決まりがあるんですね。それに健康診断、か……」


 思えばウチの田舎じゃ、町医者が偶にしか来なかったんだよな。街の人の医療は、基本的にウチの薬だけでどうにかしていたし。

 また、偶に来ていた胡散臭い町医者も、ほんの数秒、適当に患者を見るくらいで済ませて、あとは魔法でどうにかしていたし。

 健康診断なんて言われるようなものは一度も体験したことが無いんだよな。

 俺もこの魔王城に来る前も来た後も、不健康な生活を送っている気はないけれども。


「そっすね。ちょっと都会に来たっぽい感じがするので、一度行かせてもらいます」

「うん、じゃあ、約束。今度、ソフィアも連れて、一緒に行こう」


 と、俺がユキノと後日の約束を取り付けていると、


「あ、サラマード! 医務室を抜け出したと思ったら、こんなところにいた――」


 大きな声と共にリザが駆け寄ってきた。というか、彼女の言葉を考えると、

 

「……やっぱり治療中だったんじゃないですか」

「気にしない。体は、治ってる」

 

 そう言ってそっぽを向いたユキノの手を、リザはがっしりと掴んだ。


「捕まえておいてくれてありがとうクロノ。……全く、ダメだよ、サラマード。まだ検査中だし、飲んでない薬もあるんだから」

「もう体は治った」

「治ってもダメ。傷とは別に魔法的な検査もしないと。また呪いに掛かった時みたいにぶっ倒れたらどうするのさ」

「うぐ……」


 リザの言葉にユキノの反論が止まった。まあ、前回もそれでグラドリザードに体力を持っていかれているし、検査出来ることはしておくべきだろうと思う。


「というわけで、クロノ。お話し中悪いけれど、サラマードは貰っていって良い?」

「ああ、はいどうぞ。もう話は終わったので」

「ありがとー。さあ、じゃあ、さっさと医務室行って薬飲んで検査するよ」「薬は苦いから、ヤなんだけど……」

「知ってるよ。だから逃げてきたんだろうけど、今回は私が付き添うから逃がさないよ」

「うぐう……」


 そんな感じで、リザとユキノはダンジョンと外部を繋ぐドアの方へと歩いてった。


 ……今回もあの二人はボロボロになっていたけれど、元気そうで何よりだなあ。

 

 と思っていたら、

  

「お疲れ様です、クロノさん」


 彼女たちと入れ違うように、ソフィアがやってきた。


「ああ、ソフィアもお疲れ。あいさつ回りしたり、色々と手伝ったり、鬼神の暴走が止まって直ぐで疲れているのに大変だったろ」


 そう言ったら、ソフィアは苦笑して首を横に振った。


「いいえ、私の方は全然大丈夫です。クロノさんや皆さんのおかげで、しっかりと鬼神は抑え込まれましたし。ですから、こういうお手伝い位はしないと、と思いまして」

「俺たちがやりたくてやったことなんだから、そこまで気負わんでも」

「でも、皆さんとっても傷つかれてましたし。クロノさんも、物凄い技を見せてくださいましたし。私だけ何もしないというのは、流石に耐えられませんよ」

「え、ソフィアって俺の技を見ていたっけ?」


 確か鬼神に打った時はまだ、中庭とダンジョンを繋ぐ場所でぶっ倒れていたはずだ。

 途中から意識が回復していたんだろうか、と思っていると、 

 

「ああ、それは単純に、鬼神が私たちの記憶をコピーできるように、鬼神の体で得た記憶も、私は貰っているから、ですね。私は鬼神を通して皆さんの勇姿を見させてもらったんです」

「え? そうなのか? でも、それって結構、怖くないか?」


 自分が吹き飛ばされる光景まで見ているってことになるぞ。そう思って聞いたら、首を横に振られた。


「痛みに関する記憶はないので、映画を見ているようなものなんです。だから良い所だけを見させてもらったと言いますか、カッコよくて素敵なクロノさんがいっぱい見れて、嬉しかったくらいです」

「……真っすぐに褒められると、なんだか恥ずかしいな」

「ふふ、そうですか? でも、私もクロノさんには真っ直ぐに褒められたりしてますからね。お返しです。……私、ずっとお世話になってばかりで。こうして重大な事件が起きてしまって、クロノさんにご迷惑をお掛けして。その上解決して貰っても、感謝する事しか、出来ませんしね」


 ソフィアはそう言って困ったような笑みを浮かべていたのだが、

 

「え? いや、俺、結構ソフィアのお世話になっているんだけど。というか、今回だって、その世話になった例だから、迷惑だなんて思ってないんだけど」


 俺が正直な感想を口にしたら、彼女は目を丸くした。

 そして唇を震わせつつ、言葉を返してきた。

 

「迷惑、ではない、んですか?」

「おう。だって、俺の田舎じゃ爺さん婆さんにもっと厄介な仕事を押し付けられたこともあるんだぜ? それに比べたらさ、世話になっている友人が困っている所を助けるのなんて、迷惑の内にはいらないさ。それに、今回だってダンジョンの家具をどうしようかって困ってる時にはソフィアの力を借りていたんだし、お互いさまって奴だろ」 

「お、お互いさまって……それは、力を借りるレベルが全然違うような……」

「でも、行為としては同じだ。俺が困っているから協力してくれたんだろ? なら、そのお返しは同じことでやるさ。それで、今度また何かあったら、言ってくれ。借り一個で同じように力を貸すからさ」


 それが対等な友人というものだろう。

 田舎に置いてあった本には少なくともそう書いてあったし、個人的にも正しいと思っている。

 

 だから、友人として力を貸すのは、何ら迷惑なことじゃない。そう言ったら、


「そう……ですか……」


 ソフィアは一息呑んだあと、


「これだけ大変な目に遭ったのに……。何かあったら、借りがなくても、また助けてくれるんですね……」


 恐る恐るとした口調で問いかけのような、確かめるような言葉が来た。

 だから、俺は即座に頷く。


「うん? そりゃ当然だろ。友人なんだから、出来ることはするさ。ただ、今度は事前に情報をいくらか貰いたい所だけどな」


 俺が少しだけ苦笑しながら言うと、


「ふふ、そうですね。ありがとう、ございます」

 

 ソフィアは、目の端から小さな雫を零しながら微笑んだ。

 

「え、あれ? 泣いてるってことは、何か変な事言ったか?」

「い、いえ、お気になさらないでください。ただ驚いてしまっただけなので。……ええ、私、クロノさんが友人で、そして近しい人で、本当に良かったと、そう思います」

「そうか? まあ、俺もソフィアが友人で良かったと思うよ」

「ふふ、お互いさまですね……ん……ふあ」


 そう言って再び微笑した後、ソフィアは小さくあくびをした。


「あれ、眠いのか?」

「す、少しだけ。涙が出て、安心したら眠くなっちゃいました」

「じゃあ、ここで休んでいくといい。ここは静かだしさ」


 何せダンジョンの端っこだ。

 祝勝会を楽しんでいる奴らはダンジョンの中心にある焚き火を前に盛り上がって騒がしいけれども、壁際はそれに反して落ち着いている。休むにはぴったりだ。


「なんなら俺を枕代わりに使っても良いし。これもまた、いつぞやのお返しになるが」

「い、いえ、そこまでは…………」


 と、遠慮しかけたソフィアだったが、少し考えた後で、

 

「……でも、そう……ですね。では、ちょっとだけ」

「おお、どんと来い」


 頬を赤くした状態で俺の隣に座り、肩を預けて来た。 


「温かい……では、ちょっとお言葉に甘えさせてもらって、少し、眠らせてください……」

「おう、程々になったら起こすから、そのまま存分に休んでくれ」

「はい。ありがとうございます、クロノさん……」

 

 そうして、吸血鬼暴走事件における祝勝会の時間は明るく騒がしく、それでいてゆったりと過ぎて行くのだった。

 という訳で二章エピローグです! 次回からは三章になります。 

 魔王城ライフは更に賑やかになり、クロノの活躍の場もダンジョンだけに留まらず、城の内外に広がっていくかと。ここまでの評価を頂けると、とても励みになります!


 また、6/2に発売された書籍1巻もどうぞよろしくお願いします! 書き下ろしを頑張りまして、イラストもたっぷりですので、是非、お手に取って頂けると嬉しいです!

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