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自称!平凡魔族の英雄ライフ~B級魔族なのにチートダンジョンを作ってしまった結果~  作者: あまうい白一
第二章

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第26話 納まる問題と上がる評判

「す、すみませんしたああああ!」


 俺とソフィアは大通りの中央で、巨人と獣人の二人から土下座による謝罪を受けていた。


 ブラドの手により思いっきりボコボコにされた事もあり、すっかり酔いと血の気は抜けているようだった。

 というかむしろ、物理的にも大分血が抜け過ぎている気もする。

 

「あんたら、割とボコボコにされてたけど大丈夫か?」

「ああ、どうにか、な。巨人王並みの力を持つ少年よ、君のお陰だ。ありがとう」

「あのままだと死ぬところだったっす……」


 暴れていた二人は先程とは反対に、落ち着いたというか、若干丁寧な口調で受け答えをしてくる。

 視線には戦意も宿っていないし、怯え半分感謝半分、というような目をしていた。

 

 何にせよ沈静化したのであれば良い事だと思いつつも、

 

「そうか。まあ、無事なら良いんだけど、礼を言うならまずはソフィアにしてくれ。最初にやりすぎだって言ったのは、この子なんだから」

 

 俺が横に立っているソフィアに視線を向けながら言った。

 すると、喧嘩していた二人組は再びソフィアに頭を下げた。

 

「あ、ありがとう、吸血鬼の少女よ。そして……酒に酔っていたとはいえ暴言を吐いてしまって済まなかった」

「全力でお詫びさせてもらうっす。申し訳なかった……」

 

 酔っぱらっていた時とは大違いな程、丁寧な対応をしている。

 そんな彼らにソフィアは首をブンブンと横に振った。


「あ、い、イイんですよ。私も喧嘩中に下手に仲裁したのが悪かったんですから」


 相変わらず優しい言い方をする子だな、と思っていたら、


「ふむ……ワシの娘ながら謙虚だ……」


 俺が止めに入るまで彼らをボコボコにしていたブラドが、喧嘩をしていた二人組の背後でうんうんと頷いていた。


 ソフィアの件で完全にブチギレていたブラドではあるが、実の娘がやりすぎだと訴えていることを知ったら、拳を収める位には冷静だったらしい。

 俺がブラドの拳を掴みながら声を掛けたらすぐに止まったし。ただ、


「ソフィアが許すというのなら仕方ないが、とりあえず末代まで呪う準備までに留めておく。これ以上やったら本気で呪うそ」


 怒りは収まってないらしく、微笑と共に二人組に告げていた。

 

「まあ、そんなわけだからさ、お二人さん。これからは喧嘩は、出来るだけ広い場所でやってくれよな。もしくはこの街じゃない場所でな」


 ついでに俺も釘を刺しておくと、

  

「了解だとも、少年! 君の言う事は守ろう」

「あ、ああ、に、二度とやりあわないっすっ! も、もう、この巨人とはマブダチになりましたしっ! こんなことはしません!」

 

 そう言って、二人組は肩を組んで全力で頷いていた。

 雨降って地固まるという奴か、随分と仲良くなったようだ。


「うん、それならいいや。あとは大通り沿いにある迷惑かけた人たちに謝っておいてくれよ? ここが過ごしやすい街じゃなくなるのは、俺としても耐えられないからさ」

「「うっす! 分かりました! 謝ってきまっす!」」


 二人組は肩を組んだまま立ち上がり、大通り沿いでこちらを見物していた人々の下へ向かう。

 そして彼らが暴れていた酒場の店主なのか、エプロンを付けた男性にペコペコ謝っていた。そのまま周辺の人達にも謝りながら歩き去っていった。

 

「これで一件落着かな。お疲れソフィア」

「い、いえ、クロノさんこそ、あの二人とお父様のストップ、お疲れ様でした」


 と、俺がソフィアと一息ついていると、

 

「いやあ、相変わらず凄かったな、クロノ少年!」

 

 ブラドがこちらへ来て、俺の肩を掴んできた。


「凄かったってなんだよ、ブラドのおっさん」

「いや、各能力が、だよ。ワシが『山の街』にいた時よりも鈍っていないというか、むしろ鋭くなっていたのをみて驚いたのだ! ワシの拳も抑え込まれたしな」


 と、拳をプラプラさせながらブラドは言ってくる。


「本気で打った一撃を片手で止めるとは、クロノ少年の成長はやはり凄まじいものがあるな」

「それはお互い様だろ、ブラドのおっさん。アンタも昔より、速度やパワーが上がってるじゃないか」


 少なくとも五年前にやり合った時よりもパンチの威力が上がっていた。

 それは片手で受け止めた時だけじゃなく、見ているだけで分かったことだ。


「ふふ、当然だ。これまで鍛え続けていたし、なにより愛する娘の為に怒ったのであれば、パワーアップするのが親という物だろう!」


 ブラドは自信満々に告げて来る。

 まあ、今回の件で娘の為なら沸点が低くなるのが分かった。

 さらに慎重に行動する必要が出来たけれども、この情報を得られたのは大きいなあ、と思いながらブラドと喋っていたら、 

 

「おーい、そこの皆さんー」

「ん?」


 先ほど、喧嘩をしていた連中に謝られていたエプロンの男性がこちらに手を振りながらやってきた。そして、

 

「皆さんのお陰で、うちの店が壊されずに済みました! 助けて頂き、ありがとうございます!」

 と、勢いよく頭を下げてきた。

 

「え? いや、別に俺たちは偶然喧嘩を止めただけですよ?」

「それでも、助かったのは事実ですから! もうちょっと大暴れしていたら、ウチの店が完全にやられていましたし、ウチだけじゃなく、他の店も危なかったんです。だから、ありがとうございます。本気で皆さんはこの商店通りの救世主ですよ!」


 店主は力強い声で再び感謝の言葉を口にした。

 それが引き金になったのか、大通りの外で見守っていた人たちが次々に近づいてくる。

 

「こっちの方も助かったぜ! 学生さん達、ありがとうなー!」

「すげえ物を見させてもらったぜ! 今度、ウチの道具店にも来てくれよ! 雑貨でもポーションでも、なんでも割引させてもらうからよ!」


 そんな歓喜の声が次々と掛かってくる。


「さっきの巨人たちの喧嘩には、結構困っていたんだな……」 

「ええ、ですから、本気で助かったと思っているのです。ええ、そして、今後、お時間ある時にでも当店にお越しくだされば、自慢のお酒などで出迎えさせていただきますので。もちろん、お代は頂きませんので、是非来てくださいな!」


 酒場の店主は再び頭を下げながらそう言ってきた。

 正直、喧嘩を止めただけで礼を言われまくるとは思わなかった。

 

 ……田舎では幾ら爺さんたちを止めても、特に何も言われなかったしなあ。


 ほぼ身内の喧嘩を止めているようなものだから仕方ないのだけれども。

 だから、こうして真っ直ぐに感謝の気持ちを言われると、なんだか嬉しくなってくる。

 そんな感覚を抱いているという事が、俺の隣にいたブラドにも分かったのか、


「ふうむ、クロノ少年。どうやら君の評判が上がっている様で、何よりだな」


 彼は微笑しながら俺に言ってきた。


「この評判は俺だけの物じゃなくて、ブラドのおっさんやソフィアがいてこその物だけどな。……何にせよ、こっちの怪我が無くてよかったってことで。時間も予想以上に食っちまったし、魔王城に急ごうか」

「はい! 了解です、クロノさん」

「うむ、いざ出発だクロノ少年!」


 こうして、巨人たちの喧嘩の仲裁を終えた俺たちは、さっさと魔王城に向かう事にした。

 その途中でも、大通り沿いにいた住民たちにから感謝の視線と声を受け続けたので、少し気恥ずかしくなったけれどな。


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