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自称!平凡魔族の英雄ライフ~B級魔族なのにチートダンジョンを作ってしまった結果~  作者: あまうい白一
第二章

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第14話 薬師はちょっとだけ万能

 十代目魔王の宝を鑑定してから、しばらく経った頃、

 

「神の水を作り出す道具を見つけたって本当!?」


 超特進クラスの部屋にリザが飛び込んできた。

 やけに興奮している様子だ。


「本当っすよ、クロノがさらっと見つけてしまったんで」

「やっぱりクロノの発見かー。早過ぎると思ったんだよね!」


 クラスメイトの報告を聞いて、喜びの声を上げながらリザは俺の体にぎゅっと抱きついてくる。相変わらずスキンシップの激しい魔王様だな。


「リザさんは神の水作成機を見に来たんですか?」

「そうだよ! 一応、学者としても仕事をしているから、新しいお宝はしっかり見たいと思って、皆がダンジョンから戻ってきて一息ついていそうなタイミングで覗きに来たんだ。でも――」


 そう言った後で、リザは周囲を見て、首を傾げた。


「どうしてダンジョン探索が終わっているのに、皆、休んだり出かけたりしないで、ここに留まっているの?」


 確かにダンジョン探索を終えれば、普通は食堂に行ったり街に出かけたり、自由時間を満喫するのが普通だ。ただ、今回ばかりは事情が違い、クラスメイトは全員、この場に残っていた。なぜなら、


「それがですね……とりあえず神の水作成機は見つけたので、必要そうなリュミエ姉に渡したんですが」

「あー、もう! どう使えばいいのよ、これ!」

「――このように、使い方が分からないので。全員で、頭を捻らせている所なんですよ」


 魔王の遺産には説明書など付いていない。

 鑑定機は、機能を鑑定してくれるが解説してくれるわけでもない。


 だから資料を読みこんだり、調べたりして、自分で使い方を知る必要があった。

 今回の件もそうだ。


 リュミエの手に渡って十数分、俺達は資料室から書物を持ってくるなどして、『神の水作成機』について調べていた。

 それでも未だに使い道はわからないままだった。


「あー、その状態かー。確かに一目で使い方が分からない奴は大変だよねえ」

「リザさんは何か知りませんか?」

「うーん、残念ながら、私が調べた範囲の資料には使い方が書いてなかったから。だから見に来たんだけどさ」


 なるほど。現代の魔王でも分からないか。

 となると、これから宝の使い道探しにシフトしていく必要があるかもしれない。と、俺がリザと話していると、


「あ、リザ。ちょうどいい所に。貴方も見て頂戴」


 リュミエがこちらに歩いてきた。そして、


「はい、クロノも見て」


 俺にその瓶を手渡してきた。


「うん? リュミエ姉、何で俺に渡すんだ?」

「え、だって、クロノは薬師だったわよね? だから何か分からないかなって」


 リュミエールは真顔でそんな事を言ってくるが、俺は薬師といっても見習いもいいところだ。

 

「俺は親の手伝いをしていたから薬草や薬品には詳しいけどさ、こういう道具については疎いぞ?」


 だから鑑定してすぐにリュミエールに渡したわけだし。そう言ったのだが、リュミエは首を横に振った。


「それでも、よ。私みたいな素人が、これ以上うんうん悩むよりはマシだと思うわ。リザと一緒に見れば何か分かるかもしれないし」

「そうだよクロノ。私がクロノの知識を補強するから、何か気付いた事があったら言ってよ!」


 と、リザは自分の胸をぽんと叩いてアピールしてくる。 

 まあ、そこまでサポートが手厚いならばとりあえず、観察するだけしてみて、気付いた事を言っておこう。そう思いながら俺は瓶を眺める。


「まあ、この手の機材は……どこかしらに説明書きを残しておくものだけど」


 これが作られたのは遥か昔だ。その頃の機材だからどうだろうなあ、と思いながら瓶を見ていく。すると、

 

「あれ?」


 瓶底に刻印が刻まれていた

 四角と丸など、様々な図形が合わさった刻印だ。そして、


「あ。それ、古文書で見た事ある。魔王系の古代文字だね」


 横で見ていたリザがそんな声を上げた。


「古代文字……?」

「うん、十代目魔王がいたのって数百年単位で昔だから。その時の文字が使われているんだよ。だけど、調べるの大変なんだよなあ。解読が難しい上に、データも揃いきってないから」


 リザがつらつらと説明してきてくれるのだが、俺としては首をかしげざるを得なかった。

 なぜなら、


「いや、これ、普通に読めるじゃないですか。『何でもいいから水を入れよ。さすれば神の水に成る』って説明書きですよ」

「……はい?」


 俺がそう言ったら、目を丸くされた。

 リザだけじゃない。


 周囲のクラスメイトも全員、ぽかんと口を開けて沈黙していた。


 なんだこの反応は。俺は何も間違った事は言っていない筈なんだが。そう思っていると、リザが真っ先に沈黙を破って話しかけて来た。


「あの……ええと……クロノ、読めるの?」

「いやだって、普通に、ここに書いてあるじゃないですか」

「……いや、四角と丸が重なったような図形にしか見えないんだけど」

「それが文字ですよ。ウチの田舎にいる婆さんから座学ついでに教わったんですけど……って、リザさん。なんでそんな白目向けてくるんですか?」

「えっとね? この時代の古代言語って、もうどこの研究者も四苦八苦しながら調べてるものなんだよ? 十代目魔王が言語を調子に乗って改良しまくって、単語や意味合いが物凄く増えてしまったから。……なんでそれを教われて、読めているのかな?」


 俺に問いかけるリザの目は、若干真剣なモノになってきていた。


 ……リザさんは学者肌だから、そういう事に興味を持つのかなあ。


 ただまあ、隠す事でもないので、普通に説明してしまおう。


「だってこれ、ウチの地方の方言字ですよ? 外ではほとんど伝わらないから、普通の言葉を使った方がいいよって言われましたけど」

「ほ、方言字って……これが!?」

「ええ、婆さんや爺さんが俺をからかうときに使っていたりするくらいですがね」


 この言語で爺さん婆さんに悪だくみをされると困るから、頑張って教えてもらって覚えた記憶がある。

 そう言うと、リザは額に手を当てて吐息した。


「……いやあ、なんというかさ。いつもクロノの田舎はおかしいと思っていたけど、今日ほど頭がおかしいと思った事は無いね」

「割とガッツリ失礼な事言ってきますね。ウチの故郷はまともですよ」


 ただまあ、この周辺の驚き具合を察するに――


「ひょっとして、読めちゃダメな奴でした?」


 改めて聞くと、リザは首をぶんぶんと横に振った。


「い、いや、良いと思うよ。うん、古代言語が読めるってのは立派な技能の一つだしね。――ね、みんな!」


 リザの掛け声を起点にして、先ほどから固まっていた仲間達が一斉に喋りだす。


「そ、そうですね。相変わらず、凄いですね、クロノさん」

「うん、クロノは腕っ節だけじゃなくて、学問方面でも突き抜けてるん、だね」

「昔とは頭も体も比べ物にならないくらい鍛えられているのかしら……」


 ソフィア、ユキノ、リュミエの三人は口元をひくつかせて話している。それまではいいんだが、


「うん、クロノ。言葉では言い表しにくいんだが……物凄いな、お前」

 

 他のクラスメイト連中との間には、また、微妙にエアポケットが出来始めていた。


 今回は、俺に過失は無いはずなんだが。どうしてこうなったんだろうか。


 たまたま方言字と古代言語が被っただけだと思うので、そこまで驚異的なものを見る目で見ないでほしいんだけども。


「まあ……うん。問題は解決したからいいんじゃないか。な、リュミエ姉」

「そ、そうね。それは本当に……ありがとうと、言わせてもらうわ」


 過程としては色々あったけれども。

 神の水の作り方が分かったのは事実で、リュミエールのほっとした顔が見れて本当に良かったと、俺はそう思うのだった。


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最強の預言者な男が、世界中にいる英雄の弟子に慕われながら冒険者をやる話です。
 100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます
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