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ゲームで育てた不人気作物パースニップでみんなを元気にしてあげる  作者: 春無夏無


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年明け出勤と作物加工機

 三が日の成果です。


 農地30マス→80マス

 品質★3→★4

 農家レベル1→3


 あと道具がちょっと良くなって、

 鉄のシャベルと鉄のジョウロになり、あと石を組んでかまどとたき火スペースを作ったので携帯ストーブはそんなに使わなくなってしまった。

 ナイフと鍋も買ったので簡単な料理もできるようになったし。


 ★2は食べ忘れてたけど、★3と★4のパースニップ食べ比べもやったよ。

 品質が上がるごとに青臭さが減って、甘みが強くなってる気がする。


 あと1回農民ギルドのほうで★4のパースニップを出品したらすぐ売れたけど、失礼なメッセージが飛んできたからそのあとの出品はしてない。

 要約すると「どう上手くやったのかは知らないけど、パースニップみたいなクズ野菜じゃなくてもっと高い作物で高品質作らないとかバカじゃないの?」と、きっと冬休みのお子様ですね。

 次に出品するときはメッセージ機能を切っておこう。


 確かに育てられるどの作物も素晴らしいだろうけれど、パースニップより収穫までの日数がかかる作物は、枯らしてしまいそうで怖い。

 枯れることもあるらしいよ。放置し続けなければ平気らしいけど。


 それからちょっと小耳に挟んだ、というか攻略サイトの情報だけど、作物加工機という道具を買って収穫した作物を加工すると、そのままより高く売れるらしいので、農地を100マスまで増やしたら買ってみようと思ってる。

 ★4のパースニップが28レントで売れて、作物加工機は2500レントだから頑張れば買える筈。



 明日から出勤だけど、今年は三が日がフルで土日にかぶっているからと、今週は午前業務のみらしい。明日なんか新年の挨拶をして社長の話を聞いたら帰っていいとのことだったので、ほぼ休みみたいなものだね。

 自分の鈍臭さに自信があるから、職場の近くに部屋を借りているし、ぎりぎりまで寝ていられるだろう。

 ゲーム内でパースニップを栽培する間隔は空いてしまうけれど、社会人なのでその辺りは割り切っていかねば。





 だいぶ自堕落な年末年始を過ごした自覚があるので、スカートを穿くときに緊張したけれど、なんとかセーフ判定で出勤することができた。

 運動も積極的な外出もしてないけど摂取カロリー自体が少なかったから助かったのかもしれない。

 

「石岡さん、やっぱり年末年始はゲーム三昧だったの?」


 ビルのゲートを通る前に話しかけてきたのは、忘年会でビンゴゲームの司会をやっていた営業部の人だった。名前はうろ覚えだ。


「折角だから俺も始めて石岡さんと一緒に遊びたいなと思ったんだけど、どこも売り切れでさー」


「そうなんですか。結構人気みたいですね」


「石岡さんは職業なににしたの? 買えたら一緒にパーティ組んでよ」


「生産なので戦闘しないですね」


 当たり障り無く受け答えしてるけど、ちょっと邪魔くさいなこの人。


「いやあ石岡さんみたいな癒やし系ならパーティの回復役とか絶対似合うからさ、回復できる魔法使いとかに転職しようよ。生産職とか地味じゃん」


 へー、そういうこと言いますか。

 私鈍臭いから、まだ冬休み中のお子様プレイヤーに吐かれた暴言への怒りが消えてないんですよねえ。

 そもそも名前も知らない程度の間柄で挨拶もなしに話しかけてくる人って、無いわ。

 私の業務って営業部とは関わりないし。


「今の発言、総務部にセクハラ案件としてあげておきますね」


「え、ちょっと……!?」


 名前も知らないから本当にあげたりはしないけれど、これでもう馴れ馴れしくしてこないでしょ。



「新年明けましておめでとう石岡ちゃん」


「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」


 アレを振り切って自席に辿りつくと、隣席の先輩が挨拶してくれた。そうそう、ちゃんと挨拶するのは大事。


「休み中ずーっと新しい枕の設計考えてたら寝不足でさ。社長が来たら起こして」


「三浦先輩、いきなり寝ようとしないでください」


「じゃあ新作枕のテスト中ってことで」


「上長から怒られなさそうなラインを突くのはやめてください」


 寝具メーカーという特性上なのか、うちの会社だけなのかは知らないけれど、社員全員仕事場に枕持ち込みOKとなっている。

 他社新作の寝心地を試すもよし、自社製品の確認をするもよし、自作の枕を展開するのもよし、とのことでこの三浦先輩は自宅で考えた枕をよく持ってくる。

 これでかなり優秀な人だから、多少変わり者でも周囲から認められているようだ。


 そうこうしているうちに規則正しい寝息が聞こえてきた。自由すぎる。


 なお社長が来て声をかけても起きなかったので先輩は放置され、起きてから社長の挨拶が聞けなかったと悔しがっていた。

 三浦先輩はかなりきれいな人なのに、どうしてこう……




 帰宅、即、ログイン、とまではいかなかったものの、かなり早い時間に帰ってきたので今日ものんびりパースニップを育てることにする。


「あ、やった」


 本日収穫したパースニップ、ついに★5の表示になりましたわよ。

 ★4から★5はなかなか長かったから、次はもっと長そうだ。


 よし、良い機会だから作物加工機を買ってしまおう。買えなくはないのだし、高く売れるようになるなら加工したいし。

 ショップから注文をすると、種マシンの横に背が高い電子レンジみたいな機械が現れた。

 唐箕っぽい種マシンと並ぶとちょっとシュールだ。


 加工は、扉を開けて作物を入れて、加工方法を選べばいいらしい。

 できるのは、ジュースとお茶と粉末か。

 試しにパースニップを入れて、ジュースに加工を選択してみると、5分くらいで瓶に入ったパースニップジュースが出てきた。


 ★5パースニップの販売価格は33レントに対し、★5パースニップで作ったパースニップジュースは50レント。

 ……すぐ加工機の元は取れてしまうのでは?


 そういえばまだ種マシンの品種改良の機能を解放してなかったけど、品種改良したらもっと売価が上がるのだろうか?

 すっかり忘れてたけど、もう解放に躊躇するような値段じゃなくなってるのよね。


 品種改良を解放すると、種マシンの脇から顕微鏡のようなものが生えてきた。

 増設されたとしてもいきなりにゅっと出てきたからちょっと気持ち悪い。


 こっちは台座に種を置くと、種の成分を分析して、中の成分を偏らせたりして改良するようだ。

 とりあえず種を3個だけ作って、1個乗せてみると、しばらくしてモニターにインジケーターのようなものが表示された。

 結構色々な要素があるけれど、試しに青みを無しにして甘みをMAXに設定してみる。

 すると「品種改良可能です」という表示が出たので、そのまま実行。


 種なので見た目が変わったわけじゃないけれど、品種改良できたみたい。


 えっと、パースニップ・ビート ★5?

 サトウキビに匹敵する甘さを持つパースニップで、二段階加工することで砂糖を精製可能……

 サトウキビは種の販売ページで見たことあるな?


 慌ててショップを探すと種が45レントで売られていた。

 それから取引掲示板で砂糖を探す。こっちは★1で108レントだ。


 サトウキビより早く育って、市販の砂糖より品質が良くて、多分安い砂糖が作れる?


「それって市場破壊にならない? 大丈夫?」


誤字脱字報告がありましたが、後半は脱字ではないので前半だけ反映させました。

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