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ゲームで育てた不人気作物パースニップでみんなを元気にしてあげる  作者: 春無夏無


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不機嫌の治し方

 関谷先輩の後ろ姿を見送って、思いのほか弱メンタルっぽい人に言い過ぎたな、と反省する。まさに顔面蒼白といった状態でどちらが悪者だかわかりやしない。

 まあこれは就業時間外のトラブルだし、社内に持ち込まれたりはしないでしょう。


 私も溜め込んでいたんだろうな。それこそ入社時から今の今まで。

 知らない誰かと重ねて見て、知らない誰かと重ならない、思い通りにならない私を自分勝手に憎まれて。


 私の言葉に謝りはせず、されど否定もせずだったから、全く自覚がないわけではないのだろう。

 面倒な人に目を付けられたものだ。

 私に似ているらしい誰かをほんの少し恨めしく思う。



 湖出さんはなんというか虚を突かれたような表情をしている。

 私が追い返すとは思いもしなかったのかもしれない。


「私は湖出さんから、誰かを重ねて見てるなって視線をあまり感じなかったんですよね。最初の頃にちょっとだけでしたかね。だから関谷先輩が責め立てたようなことは、あの人の妄想であって、私の意見とは異なるものです」


 フォローにはならないかもしれないけれど、一応そんなことを言っておく。

 目標とする人にあれと同じとは思われたくない。


 詳しい事情を知らない私は、湖出さんの中にある感情に上辺だけでも寄り添うことはできないだろう。

 そして部外者だから、寄り添う必要も多分ない。

 災難でしたね、とそれだけだ。


 それでは、と別れを仕切り直して、ビルへと入っていく。


 湖出さん、関谷先輩に責められたことを気に病まないで欲しいなあ。




 変な気分になってしまったので、明日は平日だというのに、ちょっと遅い時間にログインして、ストレス解消するように種を蒔きまくる。


 あと甘いものが欲しい。

 会場で美味しいものは沢山食べたけど、バーチャルで脳に甘さを追加投入しておきたい。


 冷蔵庫に入れてあるロワールさんのケーキを取り出して、キッチンの片隅でマンドラゴラたちとこっそりお茶会をすることにした。

 マンドラゴラたちは意思を伝えてはくるけど、基本的には無口なので一緒に居て落ち着く。


「君ら、設定より賢いらしいけど、やっぱり畑の影響なの?」


 出席者たちからは、わからなーいという返事。

 今の状態がマンドラゴラたちにとってはデフォルトなわけだから、そりゃわからないよね。


 さて、次はなにをしようかしらね。


 急いでやるようなタスクもないし、畑の住人にコンタクトを取る方法でも探すか。

 一応農場の同居人ということになるのだし、いつまでも正体不明というのもすわりが悪い。


 ただその方法はまったくわからないし、こればっかりは誰かに聞いて教えてもらえるわけでもなさそうだ。


 うーむ。


 歌が気持ちよくて居座っているのなら、歌わなければ催促しに出てくる?

 でも種を蒔きながら歌うのは日課から癖レベルになっているので意識しないと無理だなあ。


 精霊様についての文献を図書館で探すか、領主とかの由緒正しそうな家を探すか。

 領主は未だにどんな人か知らないけれど。

 クエストで会ってるプレイヤーはいるっぽいけれど、私には縁遠い。


 とりあえず今度図書館に赴くことを決めて、紅茶を飲み干した。



 掲示板を覗くと、街に鉄道を敷くための材料集めは終わったらしい。

 私も余っていた鉄を大量に提供できたのでほっとしている。


 だがクエスト終了のアナウンスはなく、もう一段階なにかあるのか、それとも全ての作業が終わるまでアナウンスがないのか、と話題だ。

 クエスト自体に駅と運転手についての言及がなかったので、もう一段階あるとしたらその辺りかしら?


 フラグ立て頑張ってね爆発種の人。



 あとなにかめぼしい情報……品種改良種の再品種改良についての議論か。

 今は品種改良した作物を再度品種改良しようとしてもできないと種マシンに突っぱねられるのだけど、私はいずれできるようになるのではと践んでいる。

 それが新たな機能拡張によってなされるのか、アップデートによってなされるのかはわからないけれど。


 レベルアップ、しばらくしてないからなあ。

 パースニップの魔法使いがレベル10になったら、そのまま止まるのか次があるのか気になる。

 止まってこれ以上が無いってなったら、サブ職業が選べるようになるんだよね?


 サブ職業のことを考えると妄想が止まらない。

 しばらく悩むつもりだけどやってみたいことは色々ある。

 料理人になってロワールさんに弟子入りするとか、うちのマンドラゴラを薬方面に生かせる職業になるとか。


 妄想の中でもしっかりマンドラゴラと暮らす私がいるのがおかしくて笑ってしまう。

 多分そこだけは妄想じゃなくて、本当にそうなるだろうから、なにも心配はいらなそうだ。

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