お祝いデザートとフレンド登録
中庭(仮)から戻ってきたマルファも道中狩猟術を身に付けたらしいので、とりあえずクエストそのものは完全にクリアしたようだ。
明日くらいに2人が育てていたイチゴが収穫できるので、そのまま食べるかジャムにして長く楽しむかとお喋りをしてから、取引所でお祝いのためのデザートを探す。
何故かたまに出品されてるんだよね、料理祭の参加賞。
めちゃくちゃ美味しいのだからみんな食べようよ、とは思うのだけど、こうやって再度味わいたい自分みたいなプレイヤーは買ってしまうから強く言うことはできない。
何ページかあるデザート一覧を見ていると、料理祭で優勝したプレイヤーさんの直接出品を見かけた。
そういえばプロバさんがうちの子がこの人のお世話になってると言っていたっけ。
3人分購入して、購入メッセージでお礼を送る。
私がクリエさんたちに納品してるみたいに直接買い付けできないかな、この人のデザート。
なんて思っていたらもの凄い勢いでメッセージが返ってきた。
あとフレンド依頼も飛んできた。
ええと、フレンド承認久し振りだからちょっと待ってね。
うちの子がお世話になっているのだから、この人はきっといい人だしフレンドになっても問題ないでしょう。
『はじめまして! フレンド承認ありがとうございます!』
『はじめまして。うちの子がお世話になっているとプロバさんから伺っています』
『はい、こちらも手伝っていただいていつも助かってます。特に名前がないと言うので勝手にアカリちゃんと呼んでいるのですが問題ないでしょうか?』
赤いリボンでアカリちゃんなのかな。
可愛い名前で呼んでもらっているようだ。
『素敵な呼び名をありがとうございます』
『私、ずっとドードーさんが作っているお砂糖のファンで、料理祭もそれで優勝できたので、ずっとお礼が言いたかったんです。本当にありがとうございます!』
『そんな、私の材料だけじゃなくて、努力の結果だと思います。私にはこんなに素敵なデザート作れませんから』
『ありがとうございます』
やっぱりいい人だ。
初めてのちゃんとしたフレンドがいい人でよかったな。
あちらもエルムジカを始めてからサマーソウルを出ておらず、ずっと料理の修業ばかりしていたらしい。
なんというか我々は似たもの同士なのかもしれない。
そしてやり取りが終わる頃には、私がパースニップを送る度にデザートになって返ってくる、という契約が成立していた。
パースニップはなんでもいいらしい。あの染料用の色付きパースニップもなんとかデザートにしてみたいそうだ。
というわけで早速詰め合わせを作ってプレゼントとして送信する。オマケに持て余していた虹色トウモロコシもつけた。
どんなデザートになるのか楽しみだなー。
夕飯の後に買ったデザートをお祝いとして並べたら、子供たちは首を傾げながら口に運び、2人して目を見開いたり、顔を合わせたり忙しくなった。
もしかしたらケーキを食べるのも初めてだったのかもしれない。
にやにやと眺めながら私も一口。ピンク色のクリームのショートケーキは、前に食べたプリンみたいに幸せの味がする。
「私たち、孤児院に帰ったら、こんな美味しいもの食べられないんだね」
しみじみとそんなことを言うのでちょっと笑ってしまった。
「孤児院の先生がいいって言えば、また遊びにきていいよ」
「えー、デボラ先生絶対いいって言わない」
厳しい先生がいるのかな?
もしかしたらマルファの自業自得かもしれないけれど。
「マルファって孤児院だとどんな子なの?」
「えっと、男の子たちと一緒になって、脱走したり、先生にいたずらしたり、してました」
それは自業自得だ。
一緒になって悪いことしていたのは、追い出しを検討していたあのプレイヤーのところに来ていた子かもしれない。
「もうしないよ! 狩猟のときは決まりを守ってちゃんとやらないといけないって覚えたから、孤児院でもちゃんとする!」
まあ確かにここに来る前よりは成長したと思う。
文字の読み書きもできるようになったし、技能も得た。
「2人が帰ったあとに、また教会へ寄付しに行くから、そのときに2人に会いに行くよ。先生を説得できてなかったらそのときに私も手伝ってあげる」
「あたしちゃんといい子にしてるから、先生にちゃんといい子にしてたって言ってね!」
「ミリアはここに来たときからいい子だったから心証的にも多分大丈夫でしょ。帰ってもまた好きなときに遊びにおいで」
「はい。まだ習ってないこと沢山あるので、習いに来ます」
将来的にクリエさんのとこに弟子入りしたりするのかしら?
うちでマンドラゴラたちに習うより本格的だろうし。
今度寄付しに行くときは孤児院宛にパースニップも持って行こう。
最初の2人の反応を見る感じ美味しくないパースニップを食べさせられているようだし。
そして子供たちにパースニップの美味しさをしかと浸透させなければならない。




