ポルカの街と行商人
あまりイベント以外の情報発信をしないという公式アカウントの情報を聞きつけて(正確には情報掲示板の話題を見て)、引きこもりを脱したドードーです。
今スプリングポップ中心部の街ポルカに来ています。
真面目にいつもの場所以外のところ歩くのって初回ログイン時以来じゃない?
だってあまりにもグッドタイミング。
いい調理器具とか道具欲しいと思ってるタイミングだったから驚いた。
開発チームで注目されてるって脳波もチェックされてるとか、そういう話だったのかもしれない。
流石に私だって街があることくらいは知ってたけれど、わざわざ行く理由もないし、所持金も心許なかったし、行かなくてもいいかなーと思ってた訳だ。
でも今は理由もお金もあるから! いい道具欲しい!
今100万レントと、パースニップ各種とジュースと砂糖と油を持ってきてるけど、もし足らなくても現物を売ればお金にできるから大丈夫だよね?
さてポルカの街は、石畳と石造りの家が並ぶ小ぎれいな街で、思ったより栄えているなというのが第一印象だった。
アクセサリーショップとかブティックとかカフェとか女の子が好きそうな店も多い。
でも行商人を探すのが今日の目的だから寄り道はしない。
しかし人の多い噴水広場や教会前広場などを探したけれどそれらしき人は見当たらないな。
行商だから……馬喰がある宿屋エリアに行ってみるか。
宿屋エリアに入ると人通りはぐっと少なくなった。
基本的にはプレイヤーには不要だものね宿屋。遠征してまでスプリングポップに来る強い人も居ないと思うし。
そして、四つ辻の片隅で噂の行商人らしき少年をやっと見つけることができた。
「いらっしゃい、お姉さん。全然お金持ってなさそうな服着てるのに、僕を見つけるなんてすごいねえ」
「服じゃお腹は膨れないからね。商品が見たいのだけど見せてくれる?」
「勿論」
少年が露天の一角に向かって指差しすると、大型のモニタが表示される。
「ウィンターロックの鍛冶師たちによる自慢の逸品だ。ビタ一文負けたりはできないからよろしく」
ふむ。
気になるものはかなりある。
この4個セットの「匠のスプリンクラー」とか、所有してる農地の四隅に設置するだけで全面水やり可能だって。
それから「ちょっと背伸び調理器具セット」もいいね。鉄フライパン・銅鍋・ホーローのミルクパン・玉鋼の包丁と、実に背伸び感が出ていて素晴らしい。
道具の耐久値を戻す手入れキットもあるから、これも買おう。
どんなにいいものを買っても壊れるときは壊れるから手入れで長持ちさせるのはすごく大事。
あ、ショップに売ってない香辛料とかハーブもあるね。
この辺りは採取で集められるらしいけど引きこもってるから全く持ってなかったし、多めに買おう。食生活を充実させるのには大事だよね。
めぼしいものは殆ど購入したけれど、所持金普通に足りたな。持ってきた半分も減ってない。
「驚いた。お姉さんなんて名前なの?」
「私? ドードーよ」
「お買い上げありがとうございます、ドードーさん。この後ご予定は?」
さっきまでの子供らしい砕けた態度から一変して、急に隙を見せない仕事人間の顔になる。
小さくても一人前なのね、この子。
「家に帰って畑の収穫かな」
急ぎの用事ではないけれど。
パースニップが半日で収穫できるようになってしまったから忙しいと言えば忙しい。
「僕の友人である服飾職人がやってるブティックがあるんですけどね。そいつが草木染めで淡いピンク色を出したいらしいのです。懐に随分余裕がありそうな農家のドードーさんを見込んでなのですが、なにか素材に心当たりありません?」
淡いピンクと言われると、心当たりがあるのはパースニップ・ビートしかない。
これも草木染めに使えるのかな?
実際の草木染めってちょっとくすむけれど、ここはゲームの世界だから問題ないのかもしれない。
「ご期待に添えるかはわからないけれど、一応淡いピンク色の野菜は今持ってるね」
「今から地図を渡しますので、どうか友人にそれを譲ってくれませんか?」
沢山あるし別に譲るのはいいけど、1個8000レントだよこれ。
材料として採用されて、正式に仕入れようってなったらご友人さん破産したりしない?
でもプレイヤーキャラじゃない彼の友人ならば、見知らぬ本人もプレイヤーではないだろうし、現実的に破産したりは恐らくしないだろう。
「そういうことなら譲りますよ」
――クエスト「ポルカの街の産業革命1」を受注しました――
おっと、いきなりのアナウンスは心臓に悪い。
これがクエストかー、クエストを受けるのは初めてだ。
「僕の名前はプロバ、友人の名前はクリエです。プロバから頼まれて来たと言えば通じるはずです」
思いもよらないことになったけれど、初めてのクエストにテンション上がってるし、早速お店に向かうことにしましょう。




