第78章 武闘大会 1日目
武闘大会の日がやってきた。
グランタルの街は朝から多くの人で賑わい何処も話題は武闘大会の話で盛り上がっていた。
「今年もガゼル学園が優勝だろうな」
「ああ、去年同様王子様トリオでいくらしいぞ」
「去年の試合を見てたけど圧勝でつまらなかったよね」
リチーナ学園の広場に集まったエレナ達は生徒の声援で見送られ馬車に乗ると会場に向かって走り出した。
馬車にはエレナ、アルト、ナナ、フェイ、リッド、エステが乗っている。
「1日目の今日は個人種目の予選だね。で、2日目は個人戦の本戦で3日目の最終日は学園対抗の団体戦だよ」
リッドはエレナ達に大会のスケジュールを説明する。
『ナナ予選頑張ろうね』
エレナは隣でエレナの作ったお菓子をフェイを膝に乗せて黙々と一緒に食べている。ナナはフェイを見るとあまりの可愛さに独占していた。
しかしナナは首を振った。
『え? 出ないの?』
エレナが疑問に思っているとリッドが理由を話した。
「ナナは団体戦だけ出るんだ。個人戦までやるのは体力がいるからね」
『考えてなかったけどそういえば2つも短期間でやるとなると相当キツイですね』
「君達がまさか両方出ると思ってなかったから驚いたよ」
(そういえば選考会の時に両方やるって言ったら先生達にえらく驚かれてたな)
「他の学園は多分個人戦と団体戦で分けていると思うわ。そして団体戦に主力を置いているはずよ」
エステが補足をするとリッドは頷き話の後を続けた。
「ああ、何せ順位で運営費や来年入ってくる生徒の数が変わるからね、あとこの大陸の各国から王族や貴族達が集まって大会を観戦しているけど緊張しないで頑張って欲しい」
「あー出場者じゃないけど考えただけで緊張しちゃうわ!」
リッドの言葉を聞いたエステはそう言って胸に手を当て身震いした。
『そういえばリッドさんルトとレナを預かってもらってありがとうございます』
エレナ達はルトとレナを宿に残して置くのはフェイがいるとはいえ心配だった為リッドに相談すると家で預かってくれた。
「お安い御用だよ、妻もちょうどナナがいなくて寂しそうだったからこちらとしても良かったよ」
リッドは少し恥ずかしそうに言った。
「妻ねぇ……学園長もやっと報われましたねぇ」
エステはそんなリッドを見てしみじみと話し始めた。
「学園長はマリナさん一筋で色々な縁談を断ってましたからね。私も心配で何度学園長に告白する様に迫ったか」
「はは、エステにはよく言われてたね。お爺ちゃんになっちゃいますよ! って」
皆その会話を聞いて小さな笑いが起こった。
「学園長着きました!」
馬車の外から声が聞こえると次第に周りからザワザワした声が大きくなって聞こえてくる。
「分かった! ホテルの入り口まで頼む!」
「はい!」
「開会式まで時間があるから関係者が泊まるホテルで休もう、何と会場に併設してあるんだよ」
『それは嬉しいですね』
「あそこのホテルは王族や貴族達も泊まっているから凄く豪華なのよ、料理も美味しいし楽しみだわ!」
エステは嬉しそうに言うとキラキラした笑顔になっていた。
皆が馬車から降りると目の前には大きな建物が建っており様々な制服姿の学生が立ち話をしていた。
エレナ達は周りの視線が集まっていることに気付く。
「お、リチーナ学園だ」
「今年も最下位かぁ可哀想に」
「あれ! 噂の美少女エレナさんじゃないか!」
「マジかよ! 大会に出るなんて楽しみが増えたな!」
「まあ、ガゼル学園には勝てないだろうけどな」
エレナ達はホテルの使用人に案内されるとリッドに後で呼びに行くと言われ各自部屋に入っていった。
エレナは部屋に入るとまず窓を開け少し冷たくなった風を受けながら外を見回す。
『お! あれが闘技場かぁ……でか!』
ちょうどエレナの部屋から闘技場が確認でき、それは野球場の様な丸い建物だった。
人が続々と中に入っていくのが見え音楽も奏でられて大盛り上がりを見せていた。
部屋で休んでいるとリッドに呼ばれた後闘技場に向かった。
「エレナちゃ、さん!!」
開会式を前に闘技場の控え室に行くと他の学園の出場者が集まっており椅子に座っていると声を掛けられた。
『え〜とハラントさんでしたよね? この間はどうもです』
そこには祭りで出会った王子様3人が驚いた顔でこちらをみていた。
「まさか……エレナ殿も出場者だったとは」
「本当ですよ! でもマナ使いでしたもんね! よく考えたら納得できます」
ロイズとカイジスはエレナに話しかけた。
『皆さん宜しくお願いします』
「うう……エレナさんと戦うかも知れないなんて、でも全力で行きますからね!」
ハラントはそう宣言すると3人はガゼル学園の生徒の方へ歩いて行った。
「知り合いか?」
隣にいるアルトが聞いてきたので頷く。
『昨日の祭りの時にね』
「これより第101回目の武闘大会を開催する! 今までの訓練の成果を出せる力を存分に発揮して欲しい!」
ワァー!!
開会式では各国の王様が挨拶をしてからこの街の市長が開会宣言をし会場の歓声が物凄くボルテージが上がったまますぐに予選が始まった。
エレナは戦いを前に審判からルールが話された。
「いつも通り相手が降参するか気絶で勝ち負けを判断する。致命傷は避けるようにな。では始め!」
初戦の相手はアーツ学園の青年で手に持っているロッドが震えていた。
(緊張してるな〜)
青年はロッドから炎を出してエレナを攻撃するがマナの差は歴然で魔物との死闘を行ってきたエレナにはマッチの火の様なものだった。
迫る炎はエレナに吸収されてしまった。
ラーガの術の一つで相手のマナを吸収するものだ。
「そんな‼︎」
青年は次々とマナを放つが全て吸収されるとマナを使い果たして降参した。
「おお! 何が起こったんだ⁉︎」
「凄え! あの可愛い子ただモンんじゃねえ‼︎」
会場はざわつきエレナは会場を後にした。
「流石だな」
アルトに迎えられる。
『まあこれでも修羅場は沢山経験してきたからね』
予選はこの調子で勝ち進みアルトも全力を出す事なく予選を突破した。
この闘技場の特等席には学園長が集まって観戦していた。
「ちょっと! リッド‼︎ 何なのよあの2人は‼︎」
学園長唯一の女性ホールノ学園長アゼナは予選が終わると叫んだ。
「ああ、最近入った子達でね凄く強いんだ」
リッドが答えると隣にいたノーチェ学園長のランパスも大声を上げる。
「強いってレベルじゃねえぞ‼︎」
「ふっ、今年は面白くなりそうだな」
腕を組むクールな男アーツ学園長のセジョスは無口になっているガゼル学園長のジーズをチラッと見て言った。
ジーズは顔色を変えることなく座っていた。
「……」
セジョスはジーズに違和感を感じていた。
(おかしいな……いつもなら動揺していたと思うが……あの余裕は何か策でもあるのか? それとも自信なのか……)
ジーズは何も言わずに部屋を出て行くと他の学園長達は少し不気味な雰囲気に言葉が出なかった。




