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第71章 選考会

 エレナは食堂でお昼を食べているとソニンとアルコにさっきの女の子の事を聞いていた。


『そういえば窓の近くの席にいた子って結構歳が僕達より下だよね?』


「ああ、ナナね」


「ナナはいつもああなんですよね……窓をじっと見るだけで話しかけても振り向きもしてくれなくて」


『そうなんだ……』


「でも才能は凄くて一番マナの力があるんじゃないかしら! まだ10歳って聞いてて引き抜きも断ったって聞いたし」


『引き抜き?』


「知らないんですか? この街一番の学園が裏で強い子を勧誘して転校させるんです」


『何の為に?』


「武闘大会のためですよ、団体戦の順位で街から貰える運営資金が違うんですよ」


『知らなかった』


「でもそういう事をしているのはガゼル学園だけですけどね」


『さっき言ってた一番の学園の事?』


「はい、毎年1位を取ってて今じゃ貴族や王家の子供を独占しているんですよ」


「そんな事をしていれば1位なんて当たり前なのに!」


『他の学園は何も言わないの?』


「証拠がないみたいで、それに貴族や王家を優遇しているから。下手をすればそっちも敵に回しかねないですからね」


『なるほどねぇ』


(これまた前の世界でもよくある話だなぁ)




 ガゼル学園では会議が行われていた。


「今年も優勝に抜かりはないな」


 ジーズ学園長は周りを見ると一人の男が立ち上がり話す。


「調査をして特にうちが負ける要素はないと思いますが1つだけ懸念があります」


「何だ?」


「リチーナ学園にいるナナという少女です」


「うちの引き抜きを断った小娘か」


「はい、わずか10歳で特級クラスなど力は未知数ですが」


「俺は少しの不安も消したい性格でな。その小娘を調査して何か弱みを探るんだ」


「は!」


「この私の誘いを断るとどうなるか教えてやらんとな」


 「……」


 ジーズは薄ら笑いを浮かべると周りはその恐ろしい笑みにゾッとして息を飲んだ。





 学校が終わりの鐘を鳴らすとナナは真っ先に家に帰って行く。


 小さな家に着くと入り口を開け早足で奥に進んでいく。


 部屋の扉を開けるとベッドに女性が寝ていた。


「ただいま、お母さん」


 すると母親は目を覚まして微笑んだ。


「おかえりナナ、学校はどうだった?」


「つまんない」


「もう、そう思ってるからよ。楽しくしようと思えばいくらでも楽しくなるのに」


「学校なんて行かなくていい、早く冒険者になりたい」


「せっかくリットさんが特待生としてタダで通わせてくれているのに勿体無いわ」


 ナナはお金が必要だった、母親は体が弱く病気に罹っているそれを治す金が。


 リットはこの家の近所に住んでおり小さい時からナナを見ていた。


 マナの才能を知ると特待生としてナナをリチーナ学園に迎えたのだった。


 父親はナナが物心ついた時からおらず母親一人で育てていたがその母親が体を壊してしまい寝たきりになってしまった。


 その頃からナナは絶望しながらも何とか元気な頃の母親を取り戻そうと考えるようになっていた。





 選考会当日、学園の訓練場には参加者が集まっていた。


「格闘技部門はこっちでマナ使い部門はあっちだ!」


 エルドは大きな声を上げて参加者達を誘導した。


 エレナはマナ使いの列に並ぶと外から見ている見学者達の視線を受けていた。


「じゃあ選考方法はあの3つの的を全て火球で攻撃してね。後はこちらで判断するわ」


 そして皆ロッドを持っていたがエレナは剣士なのでロッドは持っていなかった。


(そういえば剣ばっかりやってたからロッド買ってなかったなぁ、ま、いっか)


 前の人の試験を見ているとまだ力不足なのか途中でマナを切らしてしまう者や的に当てられない者もいた。


 その中で一際小さな体をしているナナが出てきた。


 流石特級クラスだけあって格の違いを見せるように次々と的に命中させて行くと周りから驚きの歓声が上がった。


(そういえばソニン達を見ないな)


「次!」


 エレナが呼ばれると待ってましたとばかりに声援が送られる。


 ドン! ドン! ドン!


 3つの的を高速で撃ち抜くと声援がピタリと止みざわめきが起こった。


 試験官もその光景に唖然としている。


「すげ〜」


「早くて見えなかったわ!」


「すご〜い」


「こりゃもう決まりだな!」


 格闘技部門の方でもざわつきがあった。


 見るとアルトが原因のようだ。


(まあそうだろうな)


 リットとエステは選考会を見ていて終わった後顔を見合わせた。


「……こ、これってもう優勝だよね?」


「そ、そうですね……」


「でもガゼル学園が黙っているとは思えないな」


「あの子達を信じましょう」




「結果は後日発表します!」


 こうして選考会は終わりその日は授業はなかったのでアルトと宿に帰って行った。




 リチーナ学園の選考会を望遠鏡で見ていた男達が顔を見合わせて深刻な顔をしていた。


「まずいぞ……まだこんな奴がいたなんて」


「これは早く報告しなければ! 急ぐぞ!」




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