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第36章 刺客

 ポーラトールへ向かう部隊がカダル王国から出発して1日が過ぎていた。


「隊長明日には到着しますが作戦は如何致しましょう?」


 隊長と呼ばれた男はカダル王国の中でも手段を選ばない非道の男として知られており与えられた命令は必ず遂行してきた。


 今回もその腕を買われて来たのだがその命令が聖女と呼ばれる少女を捕らえる事で命は問わないとの事だった。


「まずポーラトールの冒険者を偽の依頼で街から出す。そうしたら魔物を仕向けるんだ、必ず聖女は出てくるはずだ、魔物との戦闘で消耗した所で一気に攻めるぞ」


「分かりました。ではポーラトールに行って依頼を出してきます」


「すぐに食いつくようにおいしい内容でな」


(上官の話では先に暗殺者を送ったそうだが行ったきり帰って来なかったそうだ……だが俺達は上級クラスの魔物を3体も連れてきている。それに毒や暗殺に使う様々な道具を用意してある、失敗はありえない)


 男の頭には報酬と地位しかなく自然と笑みが溢れる。


(流石に聖女といえどうまくいけば魔物だけでも倒せるな……)


「よしここで今日は待機だ、先に行った者がポーラトールで依頼を出し冒険者が街を離れたと報告があり次第魔物を仕掛けるぞ!」


「は!」


(ククク、これに成功すれば俺は昇進だ! 笑いが止まらんな‼︎)




 冒険者ギルドでは中級、上級者向けの依頼を新しく出している人物がいた。


「本当にこの報酬でいいんですか?」


「ええ、私はそれほどこれが欲しいんですよ」


 依頼を出された受付嬢はそう言いながら依頼書を作成していた。


(今日は依頼が多いなぁ、報酬もいいしこれは争奪戦だね)


 大量の新規依頼書を掲示板に貼っていった。


 案の定依頼はすぐに掲示板から無くなっていった。




 今日もエレナはセリア達と特訓を重ねている。


 最初はユギルに軽くあしらわれていたアステシア達も随分と善戦していた。


「はあ!!」


 ガキン!!


「ふん! 少しはやるようになったな」


「いつまでも子供扱いされてたまるか!」


 アステシアは何とか食いついていたがそれはまだウォーミングアップだと知ったのはそのすぐ後だった。


「少し本気を出してやろう」


 ユギルは剣の構えが変わるとオーラのような物が覆い始めた。


 一瞬でアステシアの前に移動する。


「げ!!」


 アステシアは慌てて守ろうとするが衝撃を受け吹っ飛ばされてしまった。


「見えなかった……バケモンかよ」


 アステシアは仰向けに倒れてポカンとしていた。


 それを見ていたエレナは底の知れないユギルの強さに驚いていた。

 

(凄い、ユギルって相当強いんじゃ……)


 今日も訓練が終わって皆で街に向かって歩いている途中アステシアがエレナに話しかけた。


「すまない明日は依頼があって来れないんだ」


『すぐ終わるんですか?』


「おう!」


「そうなんですよ〜それなのに報酬が良くて〜ウフフ」


 ユーリアは報酬の額に笑顔になっていた。


(じゃあ明日はセリアとユギルで特訓だな)




 次の日の朝、ポーラトールの町では不思議な光景が見られた。


 多くの冒険者達が街から依頼をこなす為いつも静かな朝の街は冒険者でザワザワとしていた。


 街を次々と出て行く冒険者を遠くから見ている者がいた。


「よし予定通りだ」


 そう言うと男はそこを立ち去って行った。





 エレナはお昼前からユギルとセリアで特訓をしていた。


 ユギルを相手にエレナとセリアが協力して戦っていた。


 エレナはロッドを手にマナで攻撃しセリアも弓で攻撃を仕掛けた。


 ユギルは攻撃をかわして接近戦を仕掛けてくる。


 ヒュン!!


 ユギルの攻撃を避けていかずちを落とす。


「流石に強力なマナ使いの身体強化は厄介だな! 久々に全力で動けそうだ!」


 ユギルは嬉しそうにエレナ達と戦っていた。


(何か楽しそうだな、おいおい目がマジになってないか……ちょっと怖い)


 セリアは弓を引くと一気に5本の矢がユギルに襲う。


「エレナ今よ!」


『もらった!』


 エレナはロッドをかざし空に向けて放った。


 空に放たれたマナは無数の熱線となりユギルを襲った。


 煙がはけるとユギルは遠くに立っていた。


「今のは危なかったな」


(あれを避けたのか……)


「まだまだ行くぞ!」


 ユギルは呆然としているエレナ達に襲い掛かってくる。


(ひぃ〜たすけて〜)




 特訓でボロボロになりやっと休憩を許されたエレナとセリアは少し休憩をした後、お昼になったのでセリアとご飯を作っていた。


『これはこうやるんだよ』


「へぇ〜」


 エレナ達はお好み焼きを作っていた。


 フライパンに自作のコテを使い焼いていく。


 3人分焼くとテーブルを出して椅子に座る。


 出来たお好み焼きにソースをかけるが鰹節と青のりは残念ながらまだ無い。


「いい匂い、エレナは色々なソースを持っているわね」


『うん、全部自分で作ってるんだ』


「どれも美味しくて凄いわ、よく思いつくわね」


(まあ全部前の世界の先人の知恵だけどね)


 お昼を食べ休んでいる時だった。



 何やら街の方が騒がしい、鐘が鳴り響いていたのだ。


 それを聞いたセリアは叫んだ。


「あれは! 魔物が来るという合図よ!」


『カダル王国がまた仕掛けてきたのか!』


 ユギルは剣を持つ。


「行くぞ!」


 エレナ達は街の方へ急いだ。


 街に着くと人々の怒号や悲鳴が聞こえ大混乱に陥っていた。


 まるで先日の魔物の襲撃のような光景であったが今回は更に町の人を絶望にさせていた。


「早く逃げなければ!」


「冒険者はどうした!何故出てこない!?」


「皆んな朝に出かけたわ!」


「じゃあもうこの町は……」


 エレナ達は街の入り口で住人会話を聞いていた。


(そういえばアステシアさん達も依頼とか言ってたな)


『とりあえずギルドに行こう!』


 ギルドに着くとゼンに会いに行った。


「おお、天の助けか……」


 ゼンはエレナを見て安堵した顔をする。


『魔物は何処から来るんですか?』


「さっき警備の者が北西の方から魔物を3体確認したそうだ」


(以外と少ないな、この前は10体くらいじゃなかった?)


 エレナは3体と聞いて安心したがゼンはそれを覆す程の事実を告げる。


「だが3体ともデカい奴だ、遠くからでも見えるくらいだからな。つまり上級クラスだ」


 エレナは上級と聞いて少し緊張したがその後考える。


(上級って戦った事あったけな? 今までの魔物にいたのかなぁ、まあ戦ってみれば分かるか……)


『今から向かいます』


「すまん、高ランク冒険者は依頼で皆出てしまった。多分これも偶然では無い」


 セリアはハッとして言った。


「街を無防備にする為……」


「そうだ、昨日報酬が破格の依頼が多く出ていた。早く気づいていれば……」


『大丈夫です。僕達で何とかしますよ』


「頼む」


 エレナ達はギルドを出ると魔物がいる方へ向かった。








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