第30章 真実
エレナは王達に今日の夕食を作ると約束したので厨房へやって来た。
この国のコックの服装をした男が出てきてエレナに近づいた、胸の勲章のような飾りが目立っている。
「聖女様話は聞いています。私はここの料理長をしていますエリクといいます。どうぞご自由にお使い下さい、あと是非見学をさせて欲しいのですがいいでしょうか?」
『ええ、大丈夫ですよ。こちらも食材に関して聞きたい事もありますし』
「ありがとうございます」
(まずは食材チェックだな、料理はそれから決めよう)
食糧庫に連れて行ってもらうとエレナは興奮を抑えきれなかった、城の食材は豊富だ各地の名産品はもちろん色々揃っていたのだった、まさにエレナにとっては食材という宝物が詰め込まれた部屋だった。
「すいません! この食材はどこで取れるんですか⁉︎ あとこれの味を………」
エレナは高いテンションでエリクが引く程に質問をしてこの世界の食材の知識を詰め込み始める。
流石に日が暮れると思いエレナはコース料理を考え始めた。
サラダはエレナ特製のドレッシングを使ったもので使う野菜も合うものを選んだ。
スープは肉と野菜をよく煮込んでとったダシを使ったオニオングラタンスープ
メインはローストビーフ丼 これはこの大陸にない料理だったので入れてみた。肉は合う物を選びソースも作ってある。どんぶりはないので皿に寿司のように盛ってみる。
デザート この世界にないデザートのプリンを作った。
エリクは料理をしているエレナを食い入るように見ていた。
(聖女様が料理を作ると聞いて俺は信じられなかった、王女様と共に帰ってきた兵士が聖女様の話をしていた。何でも食べた事のない美味しい料理を作ってくれたと……料理長として俺は気になって仕方がなかった、食べてみたい、そして今それが叶おうとしている……)
エリクは知らない調理をしているエレナに聞きたくてウズウズしていたが我慢する、料理の技術は見てすぐにわかる程素晴らしく見惚れていた。
(なんだあのソースはどんな味か気になる……おお、そんな調理法があるのか……)
『よし、出来ましたよ』
エレナはエプロンを外してエリクに声をかけた。
「申し訳ないが食べさせて貰えないだろうか?」
『ええもちろん1人分多く作っておいたので、その方が安心できますよね』
「本当ですか! ありがとうございます!」
エレナは食堂へ行くと料理を並べた。
『どうぞ』
エリクは一つずつ食べ始めた。
「こ、これは!!」
エリクは夢中だった、今までにない美味が次々と押し寄せ脳を刺激する。
全ての料理が空になるとエリクはエレナに頭を下げてきた。
「この料理を教えて貰えないでしょうか!」
『そうですね今度教えますよ』
「ありがとうございます!」
『そろそろ時間ですよね?料理を運んでもらっていいですか?』
エリクはメイドを呼んで料理を運んでいく。
王族の食堂では王達の歓喜の声が響いていた。
「これは凄い、どれも食べた事のないもので全て美味しい」
「そうねこんな美味しい料理初めてだわ!」
「また聖女様の料理が食べられて幸せです」
食事が終わりお茶を飲んでいると王はエレナに感謝を告げた。
「聖女殿美味しい料理をありがとう」
「本当美味しかったですわ」
『いずれはポーラトールに店を出そうと思ってるんですよ』
エレナの言葉に王の目がキランと光る。
「おお、それはこの国にも出してもらいたいな」
『そうですね考えておきます』
「そうそう! 聖女殿、王女を救った事への礼を用意した。明日渡すからアシュレイ殿の屋敷に行く前に受け取って欲しい」
『ありがとうございます』
夕食が終わると部屋に帰ってベッドに潜り込んだ、薄れゆく意識の中でエレナは考えていた。
(明日はセリアの両親に会えるだろうか? どんな人なのかな? セリアに会わせてあげたいな……)
朝になりユギルと合流したエレナは昨日のお礼の件で王の所まで案内された。
そして貰ったのは豪華な装飾がされた指輪だった。
なんでもマナの結晶石を加工しているらしくマナ使いが使うとマナの威力や回復速度が上がるらしい。
(これはセリアにあげようかな、セリアはマナは使えないけど凄くいいデザインだし)
その後馬車のある所まで案内された。
「おはようございます。もう準備はできていますのでお乗り下さい」
そう言ったのはアトスであった。
馬車に乗ると動き始める。
「アシュレイ殿の屋敷には4時間程で着きますので」
『分かりました』
エレナはその間ポーラトールで買った本を読んで過ごしていると馬車が止まり外からアトスの声が聞こえてくる。
「到着しました。お気を付けてお降りください」
馬車から降りると大きな屋敷が目の前に建っていた。その大きさにエレナは立ち尽くしていた。
(凄い屋敷だ……セリアってほんといいとこのお嬢様だったんだな)
ガチャ!!
屋敷から正装した男が急いだ様子で出てくる。
「遅れて申し訳ないです。ようこそおいでくださいました噂は聞いております聖女様、私はアシュレイ様の執事のソーンと申します」
『突然にすいません』
「いえ、では中へ」
エレナとユギルは応接室に通されると豪華なソファーに腰を下ろした。
「してどのようなご用件でしょうか?」
『アシュレイさんとメアリナさんは今どこに?』
「アシュレイ様達は今出張中でございます」
『セリアを置いてですか?』
エレナは単刀直入に探りを入れず切り出した。
それを聞いたソーンは明らかに動揺していた目が左右に揺れて何か考えているようだった。
『アシュレイさんとメアリナさんに何があったのか教えて下さい』
ソーンは最近の出来事で疲れ果てていた。藁にでもすがりたい状況に追い込まれていたのだ。
(話していいのだろうか? アシュレイ様には口止めされているが……しかしもう限界だ、この方なら救ってくださるはず!)
「分かりました全てお話しします」
ソーンは観念したかのように真実を話し始めた。
「あれは2年前の事です。当時アシュレイ様達家族はセリア様の教育の為に王国の方がいいという理由でリンドラ王国で暮らしておりこの屋敷には稀に帰ってくる程度でした」
エレナはセリアからその辺の話は聞いていた、セリアが楽しそうに話していたのをエレナは思い出していた。
「ある時この屋敷に盗賊が襲ってきたのです。そして家は荒らされ家宝を奪われてしまいました」
『家宝?』
「はい、代々受け継がれている物です。どんな物かは分かりませんが言い伝えでは命に変えても守らなければならない物だったそうです。そしてアシュレイ様とメアリナ様はリンドラ王国には内緒にして家宝を取り返す為、旅に出る事にしたのです」
『じゃあセリアをポーラトールに預けたのは』
「はい、アシュレイ様達は家宝を取り戻すまで知り合いであったポーラトールの神父にセリア様を預けたのです」
『何故ここに預けなかったんですか?』
「ここは当時盗賊により凄惨な状態であり来れる状況ではなかったんです。使用人は殺され私も重症を負っていまして」
『今アシュレイさん達は何処にいるんですか?』
「それが、先日アシュレイ様が盗賊に捕まってしまったんです」
「メアリナ様も怪我をされてこの屋敷で療養されています」
エレナはアシュレイ達が何か事件に巻き込まれたと思っていたが予想以上の切羽詰まる状況に絶句した。
(まさかそんな事になっていたなんて……)




