第21章 旅立ち
『ねえ、まず何処にいくの?』
エレナはユギルに合流すると最初の目的地を聞いた。
「まずここは大陸の真ん中に位置している。俺が調べて見つけた入り口に仕掛けがしてある遺跡あるいは洞窟は2箇所だ、後一つあると思うんだがどうしても見つからなくてな」
100年前に族長が里から逃げる際村人を4つに分けた、ユギルは族長が地図に印した目的地の場所をおおよそだが覚えていたのだった。
復活した後ユギルは大陸を周り遺跡と洞窟を見つけ入口に中に入る仕掛けの水晶を確認していたが1箇所だけ遺跡を発見したが水晶が見つからなかった。
ユギルは捜索を諦めエレナにラーガ復活の手助けを頼みに行ったのだった。
『ここから近い所がいいんじゃない?』
「そうだな南にはカナン遺跡がある。その近くにある街まで行くぞ」
『了解』
エレナは長い旅への第一歩を踏み出して行った。
『街まではどのくらいかかるの?』
しばらく歩いているとエレナは前を歩くユギルに話しかけた。
「大体2日だな」
『結構あるね、馬車買っておけばよかったなぁ』
「急に俺が押しかけたからな、馬車が手に入ったら俺が御者をしてやる」
『それは助かるよ! お願いね!』
道中出てくる魔物をユギルは剣を使い舞うように見事な捌きで蹴散らしていた。
エレナはその剣捌きに見惚れていた。
『凄い‼︎ ユギルは剣士なんだね』
「ああ、冒険者の頃はこれでも有名だったんだぜ、まあそれで調子に乗った結果死にかけたけどな」
ユギルはニヤリとした顔で答えた。
日も暮れ夕食を食べた後に焚き火の暖かさを受けてくつろいでいるエレナは目の前に座っているユギルに話しかけた。
『ユギルは復活したって言ってたけど普通に生きているの?』
「俺の体はサラに術をかけてもらった時に死んでる、今の俺はマナで動いているようなもんだ」
『マナで?』
「復活した時にお前から結構なマナを貰ったからな当分は大丈夫だ」
『復活したのってカダル王国に復讐する為なの?』
「それもあるがサラとの約束だ」
『約束?』
「サラは初めて俺に頼んできたんだ……ラーガ一族の力を結集する導き手になって欲しいと、だから俺は何としてもやり遂げると誓ったんだ」
『サラさんの事が好きだったんだね』
「ふん、あっちはそうでもないみたいだったけどな」
『虹色の結晶石を集めると何が起こるの?』
「詳しい事は分からん、サラからはラーガ一族の力が復活できるとしか聞いていない」
話が終わるとユギルはエレナにテントに行けと促した。
「俺はさっきも言ったがもう体は死んでいる……寝なくても大丈夫だから見張りは俺に任せて安心して眠ってろ」
『ありがとう』
エレナはユギルに礼を言ってテントに入って行った。
「なあ、お前は武器を使わないのか?」
ユギルは武器を使わずマナで魔物を倒していたエレナを不思議そうな表情で聞いてくる。
『よく分からなくてさ、ラーガ一族の人とか何を使ってたの?』
「色々いたが大体はロッドだな」
『ロッド?』
「これを貸してやる」
そう言ってエレナに何か投げて来たのでパシッと受け取った。
それは杖のような棒の頭に宝石が付いていた物だった。
『これは?』
「サラが使っていたロッドだ、俺が形見として持っていた」
『いいの?』
「俺が持っていてもしょうがないしな……無くすなよ」
『ありがとうユギル、借りるねサラさん』
エレナは首にかかるサラの虹色の結晶石を握ると目を瞑ってお礼を言った。
『……どう使うのかな?』
エレナは使い方が分からずロッドを構えてユギルに聞いた。
「ロッドの先にある石にマナを流して使えば普通に使うより威力が上がる」
『なるほど』
エレナはそれからロッドを手に魔物をマナで蹴散らしていくユギルの言った通りロッドの先にマナを流して放たれたいかずちは威力が桁違いに増していた。
ズカーンと降るいかずちで魔物達は真っ黒な灰となっていた。
ユギルはエレナの戦いを驚いた表情で見ていた。
100年前にラーガ一族の里に住んでいた頃に男達と狩りに出る事もあり彼らのマナの力を知っていたがエレナの力はそんな男達と比べても格段に上だった。
(もしかしたらサラやその親族に匹敵するんじゃないか? しかもこの若さで……)
もうすぐ完全に日が落ちて夜になる頃、火の明かりに照らされた街を見つけたエレナは街の入り口にたどり着いた。
『何とか着いたね! へぇ〜クォードの街っていうのか』
エレナは入り口の看板を見て野宿を回避したことを喜んでいた。
「遺跡はここから半日で着く場所にある、明日出発するぞ」
『分かった、じゃあ食材買ってあそこの宿屋に泊るね』
そう言ってエレナは長旅の疲れも感じさせない軽やかな足取りで中に入って行った。
(うーんやっぱりこうなるか……)
エレナは周りの視線が全て自分に向いているのを感じながら歩いていた。
「あれ誰だ? あんなに美しい女見たことないぞ」
「綺麗な子……」
「何か噂でポーラトールで見たことのない美女がいるって聞いたことがあるけど……まさかね」
周りはざわついていたがエレナはかまわず市場に行こうとするとふたり組の女がエレナに近づいて行った。
「エレナじゃん、こんな所で何やってるんだい?」
「まさに人だかりにエレナさんありですね」
見るとアステシアとユーリアが嬉しそうな顔でエレナを見ていた。
(知り合い発見!)
エレナは顔見知りに会って少し嬉しくなるとふたりに話しかけた。
『お久しぶりですね、おふたりは依頼ですか?』
「ああ、明日近場に行くんだよ、エレナは?」
『この辺にある遺跡だか洞窟に用があって』
「ああ、確かにこの辺にありましたねカナン遺跡って所が」
『そうそう! そこです!』
エレナはユギルの言っていた遺跡の名前を思い出してそう言った。
するとアステシアはニヤニヤしながらエレナの肩に手をかけた。
「悪いんだけどちょっと付き合ってくれないかい? いい店があるんだ」
『え……』
(どうしようかな市場行きたいんだよなぁ)
迷っているエレナにユーリアは「お願いします!」と頭を下げてきたので何かあるのかなと思い渋々エレナは頷いた。
『分かりましたよ、できれば個室で』
「よし! 行こう! 行こう!」
エレナは笑顔のふたりにまるで現行犯を逃さない警官のようにガッチリと挟まれ店に連行されて行った。
料理屋の個室に来たエレナ達は夕食を食べた後アステシアに話しを切り出された。
「パーティの件は考えてくれたかい?」
(ああ、そういえば言ってたな)
『今護衛の人とこの大陸にある洞窟と遺跡を回ってるんですよね』
「依頼ですか?」
『そうなんですよ』
「ん〜? そんな依頼あったっけなー」
アステシアは必死に思い出そうと目を瞑って唸っていた。
「実はお願いがありましてー」
ユーリアは手を合わせてお願いのポーズをするとエレナは少し不安になっていた。
『な、何でしょうか』
「今回の依頼で行きたい場所があるんだけどそこにデカい魔物がいるんだよ、倒すのに苦労してて今日も挑戦したんだけど硬くてさー」
「エレナさん手伝ってもらえませんか?」
変なお願いじゃないことにホッとしたエレナはこれをある事に利用しようと企んだ。
『一つお願いを聞いてくれたらいいですよ』
「何ですか?」
エレナは一つ条件を出すとそれを聞いたふたりは顔を見合わせて頷き合った。
「まあいいかな時間がある時なら」
「そうだね、うまく出来るか分からないけど」
『じゃあ決まりで、明日の朝出発でいいですか?』
「分かった、門で待ってるわ」
ふたりと別れたエレナは街の外に出るとユギルを呼んだ。
『出発は1日待ってくれないかな? 用ができちゃって』
「それくらいならいいか」
『ごめんね』
エレナは宿を取り部屋に入って行く。
ベットに入り薄暗い部屋で目を瞑ると、ふとポーラトールの皆んなの顔が浮かんだ。
『皆んな元気かな……セリアに会いたいな』
窓の隙間から漏れる光で照らされた綺麗な女性が彫ってあるペンダントを見つめながらそう呟いた。




