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ドラゴの子  作者: わる
第一幕 - 第十環: 樹海
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第23話「狩人と守護者」

「今、お前の知識が必要なんだ!ミッカを救えるのは、お前だけだ!」


 レグルスの言葉が、ミッコの鳩尾にズシンと重い拳のように突き刺さり、息を奪った。


 虫の羽音、遠くの沼地がブクブクと泡立つ音、すべてが**シン…**と消えていくようだった。世界が、仲間たちの青白い寝顔と、押し潰されそうな責任の重さだけに集約された。


(俺が?俺…だけが?)


 恐怖が、背筋をゾクッと這い上がる冷たい蛇のように、彼を麻痺させようとしていた。ミッカの動かない体、その額に滲む冷や汗、弱々しい呼吸。消耗しきったダイアンヤの姿。魔法によって壊れた人形のようになってしまったテセウキ。そして、レグルス。煤にまみれながらも、その赤い瞳は絶望的な希望をたたえ、真っ直ぐに自分を射抜いていた。


 バチン!バチン!


 ミッコは両手で自分の頬を叩いた。鋭い音が、彼を麻痺から引きずり出した。痛みが彼を現実に引き戻す。その眼差しに、決意が宿った。彼はミッカの傍らに膝をつき、まだそこにいるはずのアルマの気配に向かって語りかけた。


「任せとけって、アルマ姉さん!」さっきまで震えていた声が、今はキリッと引き締まっていた。


 ミッカの唇に、フワリと、ほとんど見えないほどの笑みが浮かんだ。それは疲れきっているのに、信頼に満ちた微笑みだった。そして、アルマの最後の気配がスッと消えていき、彼女は再び、ただのミッカへと戻った。荒廃の中で眠る、ただの少女に。


「本だ!」ミッコは自分に叫び、小屋の入り口の近くに放り投げてあったズタ袋へと駆け寄った。彼はそれを逆さまにし、潰れた果物や石、縄をガシャガシャと木の床にぶちまけた。やがて、その手がホムラ将軍から与えられた、使い古された革表紙の本を掴んだ。


 ミッコが焦りを滲ませながらパラパラとページをめくっている間、レグルスは行動していた。腕や足にのしかかる痛みと疲労を無視し、彼は意識のないテセウキの体を担ぎ上げて小屋の中へと運び、慎重に寝台の一つに横たえた。ダイアンヤにも同じようにし、そして最後に、まるで壊れ物を扱うかのような優しさで、ミッカを寝かせた。


「何か見つかったか?」レグルスは、番人のように戸口に立ち、しゃがれた声で尋ねた。


 ミッコは本から顔を上げた。その目には、まだ恐怖の色が浮かんでいる。「レグルス兄貴…あんた…この状況にしちゃ、ずいぶん落ち着いてるな」


 レグルスは視線を逸らし、唯一見える目で沼地の暗闇を見つめた。その拳がギリッと固く握りしめられる。「落ち着いてる?俺は、ビクビクしてるんだ、ミッコ」その告白は、張り詰めた囁きだった。「でも、パニックになったって、何の助けにもならねえ。あの化け物が戻ってくるか、あるいはこの暗闇から別の何かが這い出てくるか分からねえんだ。誰か一人は、気を張ってなきゃならねえ」


 彼の声に込められた抑制された勇気、その冷徹な覚悟が、ミッコの心に火を灯した。レグルスはただの石頭じゃない。家族を守ろうとする、兄貴なんだ。ミッコはグッと気合を入れ直し、再び本に意識を集中させた。古びた挿絵と文字が、目の前をザーッと流れていく。そして、ある一枚の絵が、彼の目を捉えた。


 化け物じゃない。植物だ。この土地の植物に関する項目だった。


「あった!」彼は叫び、繊細な花の絵を指でなぞった。「薬じゃねえ…茶だ!『流れ星の花』の花びら…」


「流れ星の花?」レグルスが近づき、ミッコの肩越しにジッと本を覗き込んだ。


 挿絵には、まるで水晶の液体で作られたかのような、半透明の花びらを持つ花が描かれていた。説明によれば、それは沼地の最も暗い場所に育ち、菌類や月光を吸収し、その花びらを湯で温めると、蓄えられた魔力が解放されるという。


「…マナを急速に回復させる助けとなる…」ミッコは声に出して読み上げ、目をカッと見開いた。


「じゃあ、この茶を作ってダイアンヤ『姉貴』に飲ませれば…!」二人の声が重なった。絶望の中に差し込んだ、最初の希望の光。


 だが、その考えはすぐに現実に打ちのめされた。ダイアンヤは消耗しきり、テセウキは意識がなく、そしてミッカは…レグルスの脳裏に、あの悪夢の始まりがゾワリと蘇った。


 他の仲間たちは小屋で眠っていた。ミッカを見張り番に残してから、しばらく経った頃だった。胸騒ぎがして、様子を見に外へ出た。最初に気づいたのは、空っぽの木の椅子。背筋が凍った。その時、**ポタッ…**という湿った音がして、見上げた。天蓋から、腐った黒い苔が滴り落ちていた。


 彼女の体は、菌類の不気味な光の下で青白く、ぐったりとぶら下がっていた。化け物のなすがままに。湿った赤い触手が蛇のように彼女を絡め取り、その鋭い先端が肌に食い込んでいた。彼女の頭は力なく垂れ、金色の髪がゆっくりと揺れていた。怪物が、彼女をジワジワと暗闇へと引き上げていく。


 その円形で忌まわしい口が、彼女の右腕をほとんど飲み込んでいた。そこから緑黒い苔が溢れ出し、ミッカの動かない顔を伝っていた。


 彼はガタガタと震え、足は木の床に縫い付けられ、喉はカラカラに乾いていた。叫び声も、動きも、何もかもが、絶対的な恐怖に裏切られ、体が従わなかった。


 小屋のドアが**バタン!と大きな音を立てて開いたのが、彼を金縛りから解き放った。物音で目覚めたテセウキが、彼を通り過ぎてシュバッ!**と駆け出し、ミッカの剣を手に、一瞬の躊躇もなく彼女を救うために飛び出していった。彼じゃない、ドラゴの子じゃない。動いたのは、職人であるテセウキが先だった。


 罪悪感。焦燥感。無力感。


 彼はミッコを見た。少年は、今、何か他の助けになるものはないかと本をめくっている。彼は見ていない、眠っていたから。自分たちが、どれだけ彼女を失いかけたか、彼は知らない。俺は、あいつにあんな姿を見せるわけにはいかない…


「ミッコ…」レグルスは、本に夢中になっていた少年を現実に引き戻し、低い声で言った。「俺が花を探しに行く。お前はここにいろ」


 ミッコはキョトンとして顔を上げた。「でも…」


「ミッカが…」レグルスはためらい、正しい言葉を探した。「あいつ、まだ毒か何かにやられてるみてえだ。助けた時、幻覚を見てるようだった。ダイアンヤは腕を治すのに集中してたが、毒を体から抜けたかは分からねえ」


 彼は、ダイアンヤの魔法でも消しきれなかった、ミッカの肩や足に残る小さな刺し傷を指差した。


「俺たちに何ができるか分からねえが…」


「本だ!」ミッコが、ハッとして叫んだ。「本に何か載ってるかもしれねえ!少なくとも、効果を遅らせる方法くらいは!」


 レグルスは頷いた。自分の嘘がうまくいったことに、暗い安堵を覚える。「ああ、その通りだ。ここにいて調べてくれ。俺の方が足は速い」


 彼は踵を返し、小屋を出て行った。ミッコが戸口まで駆け寄り、「気をつけてな!」と叫ぼうとしたが、言葉を失い、あんぐりと口を開けて立ち尽くした。


 ゴゴゴゴ…


 木の床から黒曜石のような黒い岩壁がせり上がり、小屋の入り口を塞いだ。その裂け目では、まだマグマの熾火がジリジリと脈打っている。


「なんだよこれ、怖えーよ!」ミッコは熱い壁を**ドン!ドン!**と叩きながら叫んだ。


 壁の向こうから、レグルスのくぐもった、しかし決意に満ちた声が聞こえた。


「少なくとも…俺が戻るまでは安全だ」


 そして、一人、足を引きずり、血を流しながら、レグルスは樹海の幻のような夜へと旅立った。暗闇の中に咲く、流れ星を探して。


 レグルスの決意は、彼の内側で燃える熾火だったが、ミッコを取り巻く世界は冷たく、圧迫感に満ちていた。かつては隠れ家だった小屋が、今は静寂の檻と化している。仲間たちの浅い寝息と、彼がカサカサと必死にページをめくる音だけが響いていた。


 彼は本をめくった。おぞましい獣や奇妙な植物の絵を必死に目で追うが、何も見つからない。本当に役に立つものは、何一つ。


 焦りが、先ほどの決意を蝕み始め、代わりに不安がムクムクと膨れ上がってくる。彼は三人の寝顔を見た。あまりにも静かで、あまりにも脆い。彼らの命の重みが、自分の小さすぎる肩にのしかかっているように感じられた。


 その時、か細く、しゃがれた声が静寂を破った。「…な、にが…あったの?」


 ミッコはビクッとして振り返った。ダイアンヤが、かろうじて意識を取り戻したようだった。彼女は肘をついて身を起こそうとしており、その顔は青白く、汗でびっしょりだった。


「姉貴!」彼は彼女の元へ駆け寄った。「無理すんな!レグルス兄貴が…花を探しに行ったんだ…『流れ星の花』を!姉貴のマナを回復させて、ミッカ姉を治してもらうために!」


 ダイアンヤは一瞬彼を見つめると、ドサッと音を立てて再び寝台に頭を落とした。「あんたたち二人とも…バカなんだから…」彼女は、**ハァ、ハァ…**と息を切らしながら言った。


 ミッコが何か言い返そうとしたが、ダイアンヤがそれを遮った。その声は糸のようにか細かったが、カイウナの次期当主としての威厳は、まだそこに確かに存在していた。


「ミッカちゃんが倒れた時、あたしは魔法で彼女の状態を確かめたの…」彼女は、一言一言を絞り出すように説明した。「あの化け物の毒は…神経系を侵す。麻痺、幻覚…彼女についてた腐食性の酸は取り除いたけど、毒素は…細菌でできてる。あたしの魔法は純粋なもの。回復はできても、生命とは戦えない…それに細菌は、いくら気持ち悪くても、生命なのよ。彼女に必要なのは魔法の治癒じゃない…彼女自身の免疫系が戦うのを助ける何かが、必要なの」


 彼女は一息ついた。「テセウキは…ただ疲れきってるだけ。あたしの魔法の副作用でああなるの。休めば治るわ。あたしも…ただのマナ切れ。休むだけでいい」


 彼女の視線がミッコへと移る。その疲れた赤い瞳には、純粋な誇りが宿っていた。彼は、すでに理解していた。


「免疫系…」少年は考え込むように言った。その言葉は奇妙で、それでいてどこか聞き覚えがあった。彼の頭の中で何かがカチリと繋がり、ダイアンヤの複雑な魔法の理屈が、彼の民の現実的な知識と結びついた。「つまり…ミッカ姉には、トカゲの尻尾を入れた緑茶があればいいってことか?」


 フッと、弱々しいが本物の笑みがダイアンヤの唇に浮かんだ。だが、その笑みは次の瞬間には消えていた。ミッコはすでにスッと立ち上がっていたのだ。彼はミッカの剣を手に取った。オレンジ色の刃が、その小さな手にズシリと重い。テセウキの鞄からは、カービンの冷たい黒い金属の筒を引き出した。


「な…何してるのよ?」ダイアンヤの声に、突然、警報が鳴った。


「薬草ならある」ミッコは剣を背中に固定し、カービンの弾薬をカチャリと確認しながら言った。「でも、トカゲの尻尾がねえ。辺りには何匹かいたからな。俺が、取ってくる」


「正気!?危ないわよ!」ダイアンヤは身を起こそうとしたが、力が入らずバタッと再び倒れ込んだ。


 ミッコは彼女に振り返った。その顔にもう恐怖の色はなかった。ただ、使命を帯びた男の、キリッとした揺るぎない落ち着きだけがあった。


「心配すんな、姉貴」彼は、ニヤリと小さく笑って言った。「それに、狩人(ハンター)が狩りをしなくて、どうするんだ?」


 彼は出口を塞ぐ岩壁へと歩み寄った。ミッカの剣を両手で振り上げる。刃がブゥンと脈打った。


 バキィッ!


 一閃。黒い岩は砕け散り、塵と熾火の雨となって崩れ落ちた。


 そして、彼もまた、自らの獲物を求め、幻のような夜の中へとスッと消えていった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 樹海の闇は、生きていた。レグルスは走った。ザッ、ザッ、ザッ…と、重く湿った空気が肺にまとわりつき、一呼吸ごとに苦しくなる。周りでは、巨大な枝が葬列の回廊のようにどこまでも伸び、終わりのない迷宮を形作っていた。唯一の光は、菌類の幻のような星座と、好奇心旺盛な静かな目玉のようにチカチカと明滅する虫の小さな黄色い光だけだった。


 彼は振り返った。来たはずの大きな枝が、すでに闇に溶け始めている。まるで、黒く、実体のある霧が背後から迫ってくるかのようだ。冷たく、聞き覚えのあるパニックが、喉の奥からせり上がってくる。道に迷わないよう、彼は苔むした木の床に触れた。


 ゴゴゴゴ…


 指の下から、黒曜石のような小さな岩の裂け目が生まれた。マグマの熾火がジリジリと輝き、彼自身の地獄の中で、アリアドネの糸のように後ろへと伸びていく。


(もし俺が、半透明の花だったら…どこに咲く…?)


 その問いは、腕の痛みと、全身の筋肉にのしかかる疲労に対抗するための、彼のマントラだった。彼は枝から枝へと跳び移る。その時、一本の青い光が、刃のように闇を切り裂き、彼の眼前にスッと差し込んだ。彼は**ハァ、ハァ…**と息を切らしながら立ち止まり、見上げた。


 遥か頭上、その光の筋の先に、彼は森に入ってから初めて見るものを見た。空だ。巨大な葉と無数の枝が絡み合う天井に開いた小さな穴。無限への窓。


(苔や菌類は…湿気と…暗闇の中で育つ…)彼は、痛みに霞む頭で論理を組み立てた。(木々には、天蓋から下にはほとんど葉がない…もちろん、太陽の光を浴びるために、できるだけ高く伸びなきゃならないからだ…)


 黒い岩の手が地面からズズズ…と現れ、熱いマグマの指で彼を包み込んだ。彼は持ち上げられ、体にバシバシとぶつかり、肌を引っ掻く枝の網を抜け、ついに天蓋を突き破った。空気が変わる。夜空が広がり、何キロも離れているはずの古の世界を囲む螺旋状の山脈が、まるで隣にいるかのように、静かで荘厳な壁としてそびえ立っていた。


 高みから、彼は以前にも気づいていたことを見て取った。木々の高さは、均一ではなかった。天蓋はほとんど平らな絨毯を形成しているが、その幹の長さは様々だ。つまり、隙間があるはずだ。彼はさらに高く昇り、天蓋の間を探した。そして、見つけた。葉の間にできた裂け目、月光が森の中へと差し込める場所を。


 黒い岩の道を作り出し、レグルスはその上を裂け目に向かって走った。だが、いくら走っても、一向にたどり着かない。その時、真実が彼を打った。木々と葉の巨大さが、彼のスケール感をぐにゃりと歪ませていたのだ。


 遠くからは小さく見えた裂け目は、実際には葉と枝の間にできた巨大な穴だった。そしてその下には、予期せぬ光景が広がっていた。枝の迷宮ではなく、岩と小さな木々に囲まれた湖。沼地の心臓部に佇む、本物のオアシスだった。


 彼は降り立った。草は奇妙なほど生き生きと茂っている。背後には巨大な木々と沼地の黒い水が広がっているが、この小さな湖のある島は清らかだった。水は水晶のように澄み渡り、ここにいる動物たちは森の気味の悪い生き物ではなく、フワフワの毛皮を持つ、どこか可愛らしい小動物たちだった。彼は草の上を歩き、水面を見つめた。


(この水、少し汲んでおくべきか…)


 だが、水面の穏やかな反射が彼の注意を引いた。岸辺には、周りの木の巨人に比べれば小さいが、それでも十分に大きな木々が育っている。そして、その枝に、彼はそれを見つけた。花は水晶のように透明に輝き、月光がその花びらを通り抜けて青みがかった光線を屈折させていた。花びらからは液体が滴り落ち、まるで花自身が光の涙を流しているかのようだった。


 **ゴクリ…と、彼は息を呑んだ。その美しさに魅了され、手を伸ばし、一枚の花びらに触れた。それは砕けなかった。ただ、彼の指の中でシュワァ…**と溶けていった。まるで、手の熱で薄氷が溶けるように。


 彼は茎を引っ張ってみたが、その瞬間、すべての花びらが光る液体となってタラリと指を伝い、そして消えてしまった。


「ああああああっ!!」彼は苦悶に唸った。ここから花を持ち帰る術がない。花びらに触れれば消え、茎を引けば花全体が消えてしまう。


 そこで彼は別の手を試した。枝の根元、それがさらに大きな枝から生えている場所へと向かった。そこには、何輪もの花が咲いていた。


(木の樹液が必要なら、枝が枯れるまでしばらくはもつはずだ。なら、枝ごと持っていけばいい!)


 レグルスが枝を折ろうと身構えた、その瞬間。オアシスに、**シン…**と突然の静寂が落ちた。今までおとなしかった小動物たちが、怯えたように一斉に走り出し、岩や木々の間に隠れた。


 ザシュッ!


 レグルスが聞いたのは、何かが鋭く切り裂かれる音だった。純粋な本能で、彼は後ろへ跳んだ。


 バキッ!


 彼がいた場所の木が、綺麗に両断されていた。それはドシン!という轟音と共に倒れ、その衝撃と風で、多くの花がパラパラと砕け散った。


「この野郎!!誰だ!?」彼は後ろへ跳び、すでにしゃがみこんで戦闘態勢に入っていた。だが、その目はカッと見開かれた。


 彼の目の前、正確には、その頭上で、一体の生き物が飛んでいた。蛇の体、竜の頭、鋭い牙、そして体に張り付いた膜状の翼。一体のアンフィプテレが彼を睨みつけ、その顎からは涎がダラダラと垂れていた。狩りの準備は万端だった。


 レグルスは、その生き物と、破壊された枝と、残された僅かな花とを交互に見た。そして、その顔に、歪んだ挑戦的な笑みが浮かんだ。


「ああ、そうだよな…ここに竜がいなきゃ、『竜の国』なんて呼ばれるわけがねえ…」彼はゆっくりと立ち上がり、マグマが腕を伝い始め、その肌に触れて**ジュウウウッ!**と蒸気が音を立てた。「来いよ!てめえなんざ、俺様がぶっ潰してやる、このクソトカゲが!」

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