第21話「瞳に映るもの」
洞窟の出口で彼らを迎えた風は、古の、この世界のどの地図にも記されていない大地の秘密を運んでいた。使い古された木の足場に立ち、五人の若者たちは目の前に広がる壮大な旅の重みを感じていた。
背後には、巨大な螺旋状の岩々が天へとそびえ立つ。それは不可能とも思える幾何学模様を描き、今や牢獄というより守護者のように見えた。テセウキは空の果てまで続くその岩肌を見上げ、感嘆と疲労の混じった声で呟いた。
「まさか、こんなに頂上に近くなるとはな…」
「ええ…」隣でミッカが頷く。彼女の青い瞳は、どこか不思議な強さで遠くの頂を捉えていた。「私、頑張れば届きそうな気がします…」
ギシッ…と音を立てる手すりにもたれかかり、ミッコは手で日差しを遮りながら、目の前の光景に口をあんぐりと開けていた。大陸は、神々しくも混沌とした巻物のように、彼らの前に広がっている。
「すっげえ…色んな場所がある…」
「おい、そこにもたれるな、バカ!」
レグルスが怒鳴り、古い手すりが崩れる前にミッコの襟首を掴んで引き寄せた。
「ええ、そうよ。『古の世界』は『環』によって分けられた、たくさんの『バイオーム』でできてるからね」ダイアンヤの先生ぶった声が響く。彼女は慣れた様子で景色を指差した。
「環?」ミッコは驚きを好奇心で上書きし、彼女に尋ねた。
「そう。古の世界は、実は巨大な『円』になっていて、十の環に分かれているの。私たちがいるのは、第十環よ」
少年たちは思わず下を見下ろした。眼下に広がる森は、巨大な木々の天蓋が緑の絨毯のように密集し、地面は神話の中に隠された、ありえない存在のように思えた。
「あそこが、例の『黄金の都』か?」
レグルスが、いつもより低い声で尋ねた。彼の指差す先、遠い地平線に、円形の建造物が液体の黄金のように輝いていた。太陽の光を反射し、その瞳の中に虹色のプリズムが踊る。
(…ついに…ここまで来たんだ。俺たちは、本当にあそこへ…)
「ええ」ダイアンヤは真剣な口調で頷いた。
「そんなに遠くは見えないな」テセウキは首筋を掻きながら言った。
「太陽の光のせいよ」とダイアンヤが説明を始める。「伝説によると、都はすべてを反射する金属でできているの。特に光をね。だから昼間は太陽の反射で見えるけど、本当は何千キロも先よ」
「俺の希望が、今、音を立てて砕け散った…」テセウキは、力ない笑みを浮かべた。
「全くだ…」レグルスも、珍しくその落胆に同調した。
「ねえ、アーニャちゃん」ミッカが言った。ダイアンヤが不思議そうに彼女を見る。「森が、山脈に沿って続いてる」ミッカは背後の、地平線の彼方へと弧を描く螺旋状の山々と、それに寄り添うように続く森を指差した。
「そうよ、第十環だからね。私たちがいるのは、『樹海』と呼ばれる場所。第十環唯一のバイオームよ」
その言葉が、**シン…**と空気に響いた。レグルスが驚愕の表情で彼女を振り返る。「『唯一』だと?」
ダイアンヤは腕を組み、挑戦的な笑みを浮かべた。「そういうわけ。ここが、私たちの最初の試練ね」
「唯一だぁ!?」
「はい、行くわよ」ダイアンヤは彼のパニックを無視し、左手にある、崖の側面を蛇行しながら緑の奈落へと続く木の階段へと向かった。まだ固まっているレグルスを除き、全員が頷き、その顔に決意を固めた。
その階段は、絶望と意地が作り出した産物だった。湿った黒い木材がギシギシと抗議の声を上げ、所々にある穴が、目がくらむほどの落下を覗かせていた。
「今にも壊れそうだな…」ミッコは、下を見ないようにしながら言った。
「壊れるなら、俺たちが着いてからにしてほしいもんだな…」レグルスは、自分の運命に諦めをつけながらぶつぶつ言った。
「慣れることね!」ダイアンヤの声が、先頭から厳しく響いた。「麓の拠点に着くまで、まだまだかかるんだから!」
テセウキは**はぁ…**とため息をついた。(悪夢だ…)
「拠点?」ミッカが尋ねた。
「ええ、村の人たちが建てたの。まあ、ここでの最初の数日は、快適に過ごせるわよ」
「最初の数日!?第十環だけで、何日も過ごすのかよ!?」ミッコの顔が青ざめた。
「当たり前でしょ!都は何千キロも先だって言ったじゃない?あそこに着くまで、何か月もかかるわよ。死ななければ、の話だけど…」彼女は、恐ろしいほど平然と言い放った。
**うぐっ…**と、一行から苦悶のうめき声が漏れた。
「おい、ダイアンヤ…」レグルスが、遠くの黄金の都に視線を固定したまま呼びかけた。彼女が振り返る。「まあ、予想はしてたが…」彼は彼女を、その鋭い赤い瞳で見つめた。「お前、ここに来たことがあるんだろ?」
ダイアンヤは前を向いたまま、視線を逸らした。「ええ。二回だけね」
「それを聞いて、少し安心したぜ!」テセウキが安堵の声を上げた。
「拠点を少し過ぎたことはあるわ。でも、勉強したのは第七環までよ」と彼女は認めた。
「七つ!?」ミッコは、パニックと安堵が入り混じった声で叫んだ。「まあ、それだけ知ってりゃ、大したもんだ!」
「違うわ、ミッコくん」ミッカの穏やかで論理的な声が、他の者たちの不安を断ち切った。「ここが第十環で、数が減っていくなら、姉さんが知ってるのは第十、第九、第八、そして第七。七つじゃなくて、四つの環よ」
「姉ちゃんの言う通りね…」ダイアンヤは、バツが悪そうに笑って答えた。
彼らは降下を続けた。ジグザグの階段を一歩下りるごとに、木々の天蓋が近づいてくる。そしてついに、その境界を越えた瞬間、世界は一変した。乾いた熱風は、肌にまとわりつく重い湿気へと変わり、湿った木と異国の植物の匂いが空気を満たした。不快ではなかったが、どこか心地よく、生命力に溢れていた。
木々の葉は長く、そして広く、蒼天の艦隊のキャラベル船よりも大きい。枝は巨大な道となり、その上に街一つを築けるほど太かった。生命は、あらゆる場所で爆発していた。鳥ほどの大きさの巨大な昆虫がブーンと気怠げに飛び、その瞬間、触手のように開く奇妙な嘴を持つ鳥にパクリと食べられた。
近くの木の上で、人型の生き物が彼らを見ていた。猿のようだが、その赤い瞳は敵意に満ちた知性で輝いていた。ドタドタと拳で地面を走り、彼らはしばらくの間、枝から枝へと飛び移りながら一行を追ってきたが、甲高い叫び声が響くと、一匹を残して皆逃げ去った。その一匹の上、緑の濃い枝から、鱗に覆われた尻尾が鞭のようにしなり、その猿を絡め取った。緑色の鱗で完璧に擬態した、蛇のような生物が姿を現す。その体には膜状の翼が張り付いていた。彼は猿を掴んだまま飛び立つと、**バキッ!**という音と共にその頭を一口で噛み砕き、飲み込んだ。頭のない体は、下の幹に叩きつけられてバラバラになった。
「アンフィプテレだ!!!!!!」ミッコは、不気味なほど学術的な興奮に目を輝かせて叫んだ。
「なんで頭だけ食ったんだ?」レグルスは、顔をしかめて尋ねた。
「体を残して、他の獲物をおびき寄せるんだ。俺たちみたいにな!!」ミッコは、あまりにも楽しそうに答えた。「すげえだろ?」
「私は、そうは思わないけど…」ミッカは、困ったように微笑んだ。
「はいはい、分かったから、このドラゴンオタク…」ダイアンヤはそう言うと、ミッコの耳を引っ張って引きずっていった。
ついに、階段は巨大な枝の上で終わり、そこから無数の枝が天然のハイウェイとなって、緑の広がりの中へと消えていた。
「すごい…」ミッカは、感嘆の声を漏らした。
「拠点はもうすぐよ」ダイアンヤが告げた。
彼らは歩き始めた。天蓋の上にはなかった苔が、今は柔らかな絨毯のように枝を覆っている。色とりどりの毛皮を持つ小動物が、樹皮の裂け目をカサコソと走り抜けた。
「『樹海』って名前の理由が、今分かったぜ」とテセウキが言った。
「あたしも、最初はそう思ったわ」とダイアンヤがコメントした。
「違うの?」ミッカが尋ねた。
ダイアンヤは首を横に振った。「下を見てみなさい。ただし、落ちないでよ!」
好奇心に駆られ、彼らは枝の端で身をかがめた。彼らが見たのは森の地面ではなく、広大な水面に映る自分たちの姿だった。枝は地面ではなく、橋だったのだ。彼らは、静止した海の上に架けられた、道の網の上を歩いていた。
「正確に言うと、ここは巨大な沼地ね」
「まあ…少なくとも、水には困らないな」レグルスは、現実的に言った。
「この水を飲むのは、あまり良い考えとは思えないけど…」ミッカは、また困ったように笑った。
湿度は高いが、沼地は暗くはなかった。巨大な葉の隙間から差し込む太陽の光が、すべてを緑がかった幻想的な光で満たし、静かで神秘的な雰囲気を醸し出していた。拠点への道は長く、時間は、絶え間なく続く虫の羽音と、見えない生き物たちのメロディックな鳴き声の中に溶けていくようだった。最初の緊張は疲れ果てた警戒心へと変わり、そして奇妙な安らぎへと変わっていった。
「見ろよ!」ミッコが、尻尾が青白く光る手のひらサイズのトカゲを指差した。「ランタントカゲだ!」
「近づくんじゃないわよ、あれは目潰しの毒を吐くからね」ダイアンヤは、見向きもせずに警告した。
「ちっ。また俺たちを殺そうとする奴か」レグルスはぶつぶつ言ったが、その声にもはやパニックはなく、ただの疲れた諦めがあった。
テセウキは、対照的に魅了されていた。「だけど、生物発光とは興味深いな。一体どんな仕組みなんだろう…?」
彼らは歩き続けた。途切れ途切れの会話が、単調な歩みの中断となった。陽が傾き始め、天蓋をオレンジと紫に染め上げると、沼地もそれに呼応した。木の幹に寄生するキノコが、**ポワァ…**と幻想的な光を放ち始め、青と緑の星座で道を照らし出した。その場所の美しさは、危険で、催眠術のようだった。
何時間も経ったように感じられ、疲労が肩に重くのしかかり始めた頃、ダイアンヤが立ち止まった。
「見て」彼女は、前方を指差した。
遠く、他の枝よりもさらに巨大な枝の分岐点に、小さく、黄色い光が瞬いていた。暖かく、人工的な、人間の光。
「拠点よ」
黄色い小さな光が灯台の役目を果たし、疲れ果てた彼らの体を巨大な枝の網を渡って導いた。近づくにつれ、拠点の構造が明らかになる。それはただの小屋ではなく、三本の大木の幹が交わる場所に建てられた、巧妙な小さな野営地だった。濃い色の木材で作られた小屋がいくつか、蔓の橋で結ばれ、まるで母なる木に寄生する生命体のようだった。
彼らを導いた光は、湿ったそよ風にゆらゆらと揺れるオイルランプの灯りだった。その炎が長く踊る影を落とし、その場所に幻想的で寂しげな雰囲気を与えていた。
「誰もいない…」ミッコが囁くと、その声が重苦しい静寂に響いた。
「もしかしたら…」テセウキが辺りを見回しながら口を開いた。「…俺たちが後を追ってくるって分かってて、明かりを点けておいてくれたのかもしれないな」
その考えは、彼らの不服従の中に、完全には一人ではないという可能性、一滴の慰めをもたらした。だが、その場所の静けさは重く、異常だった。
探索していると、ダイアンヤが頭上の天蓋を指差した。「ここで寝た方がよさそうね。もう暗くなってきたわ」
レグルスは眉をひそめ、狩人の鋭い目で空を読んだ。「妙だな。山を下りるのに何時間もかかったのは確かだが、まだ夜になるはずがない」
「そうよ」と、ダイアンヤが先生ぶった口調で説明した。「まだ午後四時くらいのはずよ。でも、太陽はもう地平線に隠れ始めてるし、この葉っぱが全部邪魔して、下まで光が届かないのよ」
その通りだった。見上げると、空は緑と黒の天井に開いた小さな裂け目から見える、遠い記憶のようだった。ここでは、夜が早く訪れるのだ。
優先事項は食事になった。ミッコは再び自分の領域に戻ったように感じ、野営地の中央にある空き地で乾いた小枝を集めた。彼は芝居がかった仕草で空に手を掲げた。
「我は汝を召喚する、炎の皇帝よ!」
ポッ。
彼の指先に、小さく哀れなほどの炎が灯り、ほとんどすぐに消えてしまった。
「ちくしょう…」彼はぶつぶつ言いながら、もう一度試そうと準備した。
パチン。
彼の隣で退屈そうな顔をしていたダイアンヤが、ただ指を鳴らした。彼女の手から青いエネルギーの弧が飛び出し、**ゴオオッ!**という突然の激しい音と共に、焚き火は高く暖かい炎を上げて燃え上がった。
ミッコは炎を、そして彼女を、顎が外れんばかりに見つめた。「あ、姉貴! 俺だってできたんだぞ! 儀式を台無しにしやがって!」彼の怒りはあまりにも純粋で、ミッカは思わず笑ってしまった。その澄んだ笑い声は、迫りくる夕闇の中で心地よく響いた。
テセウキが捌いた焼き魚を食べ終えると、ダイアンヤが**パン!**と手を叩き、全員の注意を引いた。
「よし。みんな寝るけど、交代で見張りをするわよ。夜中にどんな生き物が襲ってくるか分からないからね」
「何が俺たちを襲うんだ?それに、何でだ?」レグルスは、懐疑的に尋ねた。
ダイアンヤは、彼が馬鹿であるかのように見つめた。「何か動物とか? 理由は? 決まってるでしょ、あたしたちを食べるためよ、うぇ」
彼女の残酷なほどの現実主義が、それ以上の質問を沈黙させた。
「私が最初の見張りをします」ミッカが、議論の余地のない、固い声で言った。
「俺もだ」レグルスが即座に付け加えた。
「俺もできるぜ!」ミッコが、勇敢に見せようと申し出た。
「ふん、あたしとテセウキだっているわよ」ダイアンヤは腕を組んだ。
ミッカは彼らを一人ずつ見つめ、新たな権威が彼女から発せられた。「皆、強いです。でも、私とレグルスくんはドラゴの子。それが、私たちの務め。戦うのは、私たちです」
レグルスは一瞬、言葉を失い、彼女の確信に不意を突かれた。他の者たちは顔を見合わせ、誰も反論しなかった。彼女の言葉には、否定できない論理があった。結局、彼はただ頷いた。「…分かった」
彼らに割り当てられた小屋は小さく、だが居心地が良かった。やがて、ミッコ、テセウキ、そしてダイアンヤの穏やかな寝息が、その空間を満たした。外では、ミッカが沼地の暗闇に面した木の椅子に座っていた。レグルスが小屋から出てきて、彼女の隣に立った。
「先に休まないのか?俺が代わるが」彼は、いつもより低い声で言った。
「大丈夫です、平気ですから」彼女は、景色から目を離さずに答えた。
沼地の夜のコーラスだけが、二人の間の沈黙を破った。
「大丈夫か?」彼は、不意に尋ねた。
「はい。どうしてです?」
「お前、変だぞ…あいつらが行ってからずっと」
ミッカは、ようやく彼の方を向いた。「普通ですよ」
「いや、違う」彼は言い張った。その声には、隠しきれない心配が滲んでいた。「お前…ミッカというより、アルマさんに似てきてる」
純粋な驚きが、一瞬、彼女の目にきらめいた。だが、すぐにその唇は、小さく謎めいた笑みを浮かべた。「お姉ちゃんと私は、別人です」
「それは分かってる」彼は慌てて言った。顔が熱くなり始める。「そういう意味で言ったんじゃ…」
「だとしたら、私にとっては、褒め言葉です」彼女はそう締めくくり、再び暗闇に視線を戻した。
レグルスは、耳まで熱くなるのを感じ、視線を逸らした。「ただ…一人で戦うな。何かあったら、全員を起こせ。約束だ」
ミッカは彼の方を向き、遠くの菌類の光がその目に反射した。彼女は、心からの、安心させるような笑みを浮かべた。「心配しないで…レグルスくん!」
彼はまた顔を赤くすると、何か意味不明なことを呟きながら、慌てて小屋の中へ入っていった。彼女は、一人、夜と共に残された。
ミッカは、そこに座っていた。沼地は、夜の帳の下で、全く違う世界だった。蛙の鳴き声はより深く、虫の羽音は催眠術のようなメロディーを奏でていた。菌類の光は、森の眠れる心臓のように、ゆっくりとしたリズムで**ポワ…ポワ…**と明滅していた。湿った空気が、冷たい水滴となって彼女の肌に凝縮するようだった。
時間の感覚が歪み始める。数分?数時間?数日?彼女には分からなかった。奇妙な霧が、彼女の心を覆い始めた。視界がぼやけ、幻想的な菌類の光が、引き伸ばされた光の筋になる。沼地の音は、**ジーン…**という一つの抑圧的な羽音となり、彼女の頭蓋骨の中で振動した。すべてが、すぐそこにあるようで、同時に、無限に遠かった。
圧倒的なめまいが彼女を襲った。椅子から立ち上がろうとしたが、足が彼女を裏切った。世界が激しくグラリと揺れる。彼女はよろめいた。
(襲撃?)
その思考が、混乱した心に稲妻のように走った。彼女はドサッと木の床に膝から崩れ落ち、鈍い痛みはほとんど感じなかった。彼らを起こさないと。仲間に知らせないと。
彼女は振り返り、心臓が肋骨を叩き割らんばかりに鼓動する中、小屋のドアに向かって這い進んだ。
そして、彼女の世界は壊れなかった。粉々に砕け散った。
パリンッ!
沼地の音は消え、代わりに、絶対的で、耳を劈くような静寂が訪れた。空気は氷のように冷たく、重くなり、鉄錆のような血の匂いが充満していた。
彼女の目、今や恐ろしいほど鮮明に、小屋の内部に焦点を合わせた。
そこに眠っている仲間はいなかった。
そこにあったのは、屠殺場だった。
テセウキの体は、壁を突き破った巨大な木の梁にグロテスクに巻き付かれ、その手足はありえない角度に折れ曲がり、壊れた人形のようだった。彼自身のノミや金槌が、その芸術への最後の侮辱のように胸に突き刺さり、そこからポタポタと濃い赤が滴っていた。
恐怖に歪んだ彼女の視線が、ミッコの寝台へと滑った。少年は、ただ血の海に横たわっているのではなかった。彼の胴体は真っ二つに引き裂かれていた。内臓が病的な蛇のように床に散らばり、彼の収集用の鞄の中身と混じり合っていた。彼が捕まえたランタントカゲが、その大虐殺の上で、まだ青白い光を点滅させていた。
ヒュッ、と乾いた嗚咽がミッカの喉を裂いた。彼女の目は、絶望して、部屋の反対側へと動いた。ダイアンヤ。彼女はベッドの横に倒れ、顎が顔から引き剥がされ、その口は永遠の無音の叫びとなって開かれていた。彼女の力と誇りの源であるアルカナのルーンが、その腕や脚に暴力的に刻み込まれ、彼女の命の最後の火花と共に、弱々しく明滅していた。
ついに、彼女の恐怖に満ちた視線が、ドアに最も近い人影を捉えた。
レグルス。
彼は膝をつき、前のめりに倒れていた。ミッカの剣――彼女の剣――が、柄までその背中に突き刺さり、オレンジ色に輝く切っ先が、彼の胸からグロテスクに突き出ていた。彼の両腕が…引き千切られていた。それらは数メートル離れた場所に転がり、その指は、最後の力を呼び起こそうとしたかのように、まだ固く握りしめられていた。
彼の赤い瞳は、命なく、大きく見開かれ、彼女に固定されていた。
その瞳にあったのは、痛みではなかった。
ただ、衝撃と、恐怖と、そして、無限の裏切りだけが。




