第13話「覇者の槍」
ゴロゴロ… と、雷鳴は今や遠い残響となり、それでもなお、死にゆく嵐の記憶のように鳴り響いていた。村の上空には、軍艦の黒いシルエットがフワリと浮かんでいる。それは、大虐殺の残骸を啄ばむのを待つ、一羽の金属の禿鷹のようだった。
レグルスは歩いていた。ズシ… その一歩一歩が、彼自身を蝕む疲労と痛みとの戦いであった。彼の肩に寄りかかるダイアンヤは、まるで幽霊のような重さだった。体は動いているものの、その魂は宮殿の廃墟に置き去りにされたかのように、ポツンと虚ろだった。レグルスの顔に乾いた血が張り付き、左の瞼を開けなくさせ、彼は霞んだ片目だけで故郷の地獄を見つめることを強いられていた。
グシャ… 死体。隣人の、子供の頃から知っている赤頭巾の衛兵たちの、そして侵略者たちの亡骸。溶けた鉄と肉の焼ける吐き気をもよおす匂いが、息を詰まらせる瘴気となって喉に絡みつき、かつて神聖だったすべてを冒涜していた。
「…ミッカが…これを…?」彼は誰に言うでもなく、しゃがれた声で囁いた。彼女が解放せざるを得なかった圧倒的な力への感嘆か、それとも足元に広がる殺戮への純粋な恐怖か、俺には分からなかった。
その思考を、混沌の中で聞き慣れた叫び声が断ち切った。
「レグルス!」
彼はギクリと、全身の痛みに抗いながら振り返った。テセウキがこちらへ走ってくる。彼の顔は自分のものではない血で汚れ、腰にはミッカの剣が揺れていた。オレンジ色の刃が、煙の中で不吉な光を放っているように見えた。
「おい!大丈夫か、レグル-ス!?」テセウキは、パニックで裏返った声で叫んだ。
レグルスはただ、友の腰にある剣に目をやった。「お前も…やらなければならなかったのか…」
テセウキの視線が一瞬彷徨い、作り手であるその両手に永遠に刻み込まれるであろう恐怖を追体験した。「…誰かが…やらなきゃならなかったんだ…」彼は頭を振り、その目に切迫感が戻る。「ミッコを見たか?変な光が空を飛んでから、俺、あいつを探しに行かないと!」
「…ミッカだ…」レグルスは弱々しく、疲れ切った声で答えた。「…あいつが、奴らを全員片付けたんだ…」
「じゃあ、やっぱりあいつだったのか…」テセウキは浜辺の方を見つめ、胸が締め付けられるのを感じた。「すまない、レグルス。でも、俺はミッコを追いかける!」
「…ああ、分かっている…」レグルスは、敗北を認めて呟いた。
彼は友が村の門に向かって走っていくのを見送った。傷ついた肩に、従妹の重みと、世界の重みを背負い、一人残された。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
浜辺では、戦いは静かな対峙へと姿を変えていた。
金色の装飾が施された銀色の鎧、その胸に竜の紋章を抱く男が立っていた。天騎士団の紋章が入った白いマントが、熱風にヒラヒラと優雅に舞う。彼の金髪は僅かな光を捉えて輝き、その青い瞳は一点に集中し、決意に満ちていた。
アイアンは彼を見つめ、その顔に疲れたような侮蔑の色が浮かんだ。あの眼差し…あの男と、同じ眼差しだ。
「ラムザ・ソレル、『ライトニング』…」アイアンは、まるで呪いを吐き捨てるかのようにその名を口にした。
「ガイウス・レザドール、『アイアン』…」ライトニングもまた、同じ洗練された丁寧な口調で返した。「僕が見るに、古の『鋼』のドラゴの子から、竜の魔法を継承したようですね。」
「それがどうした?奴は弱かった…」アイアンは嘲笑った。
ライトニングは一瞬目を閉じ、純粋な哀悼の表情がその顔をよぎった。「力を得るためだけに、己の家族を殺めた男…」
「悲しんでいるのか?奴らはお前の敵でもあっただろうが」アイアンは、彼が弱さとみなすその優しさを笑い、叫んだ。
「敵とは、戦場においてのみ現れるものです」ライトニングは目を開いた。その瞳は、今や鋼のように冷たい。「元を辿れば、我々は皆、同じ人間…」
「説教はうんざりだぜ!」焦れたアイアンが攻撃を仕掛けた。
**ザクザク!**金属の杭が、彼自身からではなく、ライトニングの側面から、死の罠となって現れた。ライトニングの、先ほどまで悲しみを湛えていた瞳が、抑えられた怒りに見開かれる。そして、**シュン!**と、彼は消えた。瞬き一つの間、空気が揺らぐ囁きと共に、彼はアイアンの背後に立っていた。白いマントが稲妻のように輝いている。
(ボルトよりも速いだと?)アイアンは思考し、その衝撃に一瞬、動きを止めた。
**ドゴン!**ライトニングの一撃は乾いていた。純粋な電気をまとった拳が彼を捉え、空高く打ち上げた。
だが、絶望的な主人に未だ忠実な炎のエレメンタルが反応する。**ゴオオオ!**ライトニングはマナが揺らぐのを感じた。落下するアイアンに視線を固定したまま、彼の左手が炎の存在に向けられる。
「…《不屈の螺旋》…」
**キイイン!**螺旋状のエネルギーでできた緑色の円形の障壁が、彼の正面に現れた。エレメンタルの炎の爆発がすべてを飲み込んだが、その盾に虚しく衝突する。炎が消え去った時、ライトニングはもうそこにはいなかった。彼は空、アイアンの上にいた。
アイアンの周りに、再び黒鉄の鎧が形成される。だが、流星のように輝くライトニングが、**キラン!**と稲妻を爆発させた。純粋な電気でできた剣が空中に出現し、神聖な武器庫を形成する。それらはアイアンに向かって飛び、**ザク、ザク、ザク!**と彼を串刺しにし、浜辺の砂へと激しく引きずり落とした。その衝撃が止む前に、ライトニングは両手を掲げた。
**バリバリバリーッ!**電気でできた巨大な竜が砂から立ち上がり、その爪は力強く音を立てている。竜は雷鳴そのものである咆哮を上げ、アイアンをその顎で噛み砕いた。続く爆発は、天変地異のようだった。**ドカアアァァン!**黄色い光のドームが広がり、その輝きは村を飲み込む炎さえも霞ませた。
遠くで、ミッコは今や自分の肩に寄りかかる姉と共に、目を庇った。「あいつ…姉ちゃんと同じ力を持ってる。」
「違う…」私は、その圧倒的な力を見つめながら、弱々しい声で言った。「あの人は、違う…私には、あの人のように雷を操ることはできない…不可能よ…」
舞い上がる砂塵の中から、ライトニングが無傷で歩いてくる。「立ちなさい、アイアン。この程度の戦いで、僕は君を倒せるとは思っていませんよ。」
**ゴオオッ!**燃え盛る炎の噴流が、瓦礫の中から彼に向かって爆発した。ライトニングはただ右手をシンプルに掲げると、空中から小さな水の噴流が**シュウウ**と生まれ、炎に命中し、ジュウウという音と共に内側からそれを消し去った。
「エレメンタルが、もう君の言うことを聞かないようですね、アイアン?この低レベルの魔法は、上位エレメンタルにはそぐわない。」
クレーターの中から、アイアンが立ち上がった。その顔は、悔しさの仮面だった。火のエレメンタルは、もう彼の傍にはいなかった。
「契約を破棄したのですか?それとも、君に、もはや勝利する力がないと見抜いたか。」
「勝ったと思うなよ、ラムザ!」アイアンは叫び、まだ村の上空を飛んでいる軍艦に、最後の望みを託して目を向けた。
「ああ…あれですか?」ライトニングは嘲笑し、その唇に半分の笑みが浮かんだ。「僕は、ただ『最初』に着いただけですよ…」
「何だと?」アイアンは呟き、その血管を流れる血が凍りついた。
墓場のような静寂が浜辺に落ち、遠くで燃える炎のパチパチという音だけがそれを破った。そして、空で、アイアンの希望が、冷たく恐ろしい芸術品となって砕け散った。**キイイイイン!**軍艦の船体が爆発するのではなく、凍りついた。半透明の青みがかった氷の花が金属の上に咲き誇り、その膨張する音――パリパリパリッ!――が、鋭く致命的な音を立てて谷に響き渡った。
その凍てつく炎の中から、一人の男がヒョロリと現れた。彼はまるで固い地面であるかのように、空中を歩いている。プラチナブロンドの、短く癖のある髪が、残酷なまでに美しい顔を縁取っていた。彼の極地のように青い瞳は、眼下の戦場を傲慢な退屈さで見下ろし、その唇には尊大な笑みが浮かんでいた。彼は天騎士団の銀色の鎧を身に着け、剣は鞘に収められている。
「大騎士様が、あんなに速くさえなければ…この俺様が、ドラゴの子と戦えたというのに…」シリウスの声は、まるで失われた機会が最大の悲劇であるかのように、怠惰な嘆きだった。
彼の隣に、凍てつく霧の中から見慣れた姿が現れた。銀色の髪、虚ろな瞳。だが今、そこには穏やかな自信の火花が宿っていた。「シリウス、意地悪を言うな…」
「スノウ…!」プラチナブロンドの騎士は、甘やかされた子供のように文句を言った。
瀕死の船の甲板で、アイアンの兵士たちは、今や異なる種類の恐怖に直面していた。空気が重く、冷たくなり、彼らの肺から熱を奪っていく。
「さ…寒い…」一人がどもると、その吐く息が瞬時に凍りついた。
『雪』のドラゴの子、ケインが剣を抜いた。派手な動きも、鬨の声もない。彼の瞳が一瞬、煌めいた。**ザン…**と、乾いた一閃が空を切る。ほとんど聞こえない音。そして、彼の目の前にいた敵の騎士たちは、永遠に恐怖の表情を凍りつかせた氷の像となり、**パリン!**という音と共にきらめく塵の雨となって砕け散った。
さらに下のメインデッキでは、村に降り注ぐ雨が、まるで主人を見つけたかのようだった。兵士たちは絶望して走り回るが、水は物理法則に従うことを拒否した。彼らの鎧に落ちた滴は止まり、這い上がり、ニョロニョロと液体の蛇のように身をよじらせた。茶色の髪と屈託のない笑顔を持つ若者、ユウダイは、そのすべてを楽しげな落ち着きで見守っていた。
滴はポワンと一つにまとまり、兵士たちを閉じ込める水の球体となり、彼らを静かで致命的なバレエで空中へと持ち上げた。彼らの怒りの叫びはくぐもって聞こえず、そのもがきは無意味だった。彼は『雨』のドラゴの子、レイン。
「それって、少し残酷じゃないか、レイン?」
氷の破片のように鋭い女性の声が、上から聞こえた。船の蒸気管の上に座り、フユミはその光景を観察していた。黒い髪はお団子にまとめられ、その金色の瞳は分析的だった。彼女は微動だにせず、指で繊細な仕草をした。まだ甲板にいた兵士たちの周りの空気が輝く。**ヒュルルル…**短剣ほどの大きさの雹の礫が虚空から具現化し、**ザス!ザス!ザス!**と残忍な効率で彼らを貫き、甲板を血と紅蓮の氷の、悪夢のようなカンバスへと変えた。
「本気かよ、ブリザード?奴らをミンチにした後で、残酷なのは僕だって言うのか?」レインは問いかけた。
『雹』のドラゴの子、ブリザードは、ただ「フン」と軽蔑的に鼻を鳴らしただけだった。すると、レインの水の牢獄がプチンと弾け、死体が甲板に鈍い音を立てて落ちた。
シリウスの冷たい青い炎が、ついに船のリアクターを飲み込んだ。
ライトニングは、自軍が連携して破壊されていくのを、声もなく見つめるアイアンへと視線を戻した。
「僕は言いましたよ」ライトニングの丁寧な声は、今や裁判官の小槌のようだった。「僕は、ただ『最初』に着いただけだと。」
その言葉に呼ばれたかのように、水平線の向こう、雲の中から天騎士団の艦隊が現れた。旗艦の船首には、威風堂々と将軍が立っていた。『火』のドラゴの子。その鎧は紫の装飾が施された銀色で、長く赤い髪が風にたなびき、眼帯が計り知れない力を隠している。
「…君の負けだ、アイアン。」ライトニングは、ついに、その勝利を宣言した。
血と砂の味がアイアンの口に広がった。筋肉は悲鳴を上げ、ひび割れた鎧は苦痛の第二の皮膚となり、残されたマナは蒸発寸前の浅い水たまりだった。彼は目の前の男を睨んだ。その冷静さは、侮辱そのものだった。絶望が胸の中で獣のように暴れ、彼に残された唯一の武器は、虚勢だった。
「負けた…のか…?」その問いが彼の心に響く。彼は唾を吐き、虚勢を張った。「気づいていないようだな!貴様のその見せかけの力など、何の意味もなかったぞ!」声は思ったよりしゃがれていた。「貴様の電気なぞ、俺様の鉄には効かん!貴様も、その『ボルト』とやらもな!全ては無駄だったのだ!」
その言葉が宙に浮いた。「ボルト…?」
ライトニングはその名を繰り返し、一瞬、揺るぎない戦士の仮面が揺らぎ、古い悲しみの影が見えた。彼の視線は崖の上、妹と村の少年が戦いを見つめる方へと一瞬だけ移り、そして敵へと戻った。彼は顎に手を当てた。*(そうか…アルマが彼女に与えた称号か…)*その思考は、戦場の冷徹さによってすぐに断ち切られた。
「その通りだ、アイアン」ライトニングは認め、その予期せぬ告白はアイアンを躊躇させた。「僕の妹が彼女の魔法で貴様を倒せなかったのなら…僕には到底無理だろう…」
「はぁ?」アイアンは嘲笑った。
「なにしろ…」ライトニングは微笑んだ。その表情に温かみはない。「僕の妹は…竜の魔法に関しては、僕よりも遥かに上だからな。」
罠は、閉ざされた。「待て!」アイアンは自分が愚か者のように感じ、怒鳴った。「偉そうにここへ来たかと思えば!今になって俺様に勝てないとでも言うのか?!貴様は哀れだな、ラムザ!」
その名を聞いて、ライトニングの眼差しがスッと細められ、彼の落ち着きは氷のような冷徹さに変わった。「僕は竜の魔法では貴様を倒せないと言っただけだ、アイアン。もっとも、今となってはどうでもいいことだが…」彼の声は、かつてないほどに傲慢で、ギロチンの刃のように冷たかった。「どのみち、貴様はもう敗北している。」
その侮辱が、最後の引き金となった。「ドラゴの騎士が数人現れたからといって、この俺様が負けると思うな!」アイアンの正気は叫び声と共に砕け散った。「貴様ら天騎士団など、ただ魔法が使えるだけの、勘違いした雑魚の集まりではないか!」
「魔法が使えるだけの、勘違いした雑魚、か…」ライトニングは呟き、その眼差しには深い憐れみが宿っていた。捕食者が、獲物の最後の無駄な足掻きを見つめる目だった。「ドラゴの騎士がただの名前だと思うのも無理はない…結局のところ、その称号は竜の魔法を持つ天騎士に与えられるものだからな…だが、我々のことを見誤っているぞ!」
ライトニングの眼差しの怒りが、**ゴゴゴゴゴ…**と物理的な圧力となって空気を震わせた。「我々は『魔法が使えるだけの雑魚』ではない!天騎士とは、己の価値を証明した者!剣術と魔法、その両方を極めた者だ!」
「貴様らがそのくだらない騎士団に入るために何を証明する必要があるのかなど、知ったことか!」アイアンは我慢の限界だった。「剣を使い、自称『魔導師』だからといって、特別だとでも思っているのか!」
「自称ではない、アイアン…」ライトニングの声は、抑えられた雷鳴だった。彼の手が、腰に下げた剣の柄へと滑らかに動く。「天騎士になるためには…」
彼の指が柄に触れた瞬間、圧倒的な霊圧が爆発した。**ドオオォォン!**と、彼の存在そのものから放たれた純粋な風が砂を後ろへと吹き飛ばし、アイアンは足を踏ん張らなければ立っていられないほどだった。
「…アルカナの道を極めし者でなければならない!」
「ラムザアァァァァッ!」
アイアンの最後の絶叫と共に、黒い金属の杭が地面から突き出した。何百もの杭が、目の前の男を抹殺すべく殺到した。
しかし、ライトニングは剣を抜かなかった。ただ腰を落とし、抜刀の構えのまま、囁いた。
「理の否定…」
サラサラサラ…
アイアンの杭、彼の力と魂の顕現が、ただ…霧散した。目標に届く寸前で、それらは灰色の塵となり、風に流された。アイアンの心に走った衝撃は、物理的な痛みだった。(奴も…あの小娘と同じ魔法を…!!)
次の瞬間、ライトニングは稲妻そのものと化した。
ピカッ!
黄色い閃光。アイアンの感覚では捉えきれない、まばたき一つの間の出来事。ライトニングは彼の背後にいた。
*(またあの安っぽい手を!?)*彼は絶望的な思いで、無差別に力を解放した。瞬く間に金属の山、あらゆる方向から刃が突き出す鉄壁の要塞を築き上げた。
崖の上では、ミッカとミッコがその力の奔流に身を縮こまらせた。そして、轟音が響き渡る。**ガキン!ドゴォォン!**と、鉄の山の中から衝突音が鳴り響き、山全体が揺れ、ひび割れていく。そして、内側から爆発した。
カタパルトから放たれた石のように、アイアンは自身の要塞の残骸から凄まじい速さで吹き飛ばされた。空中で、制御を失い、怒りと絶望に駆られた彼は、最後の賭けに出た。炎のエレメンタルが彼の呼び声に応え、憎悪の太陽として現れた。
「我が敵を滅ぼせ!然らば、我が全てを貴様に捧げよう!」
だが、ライトニングは彼を無視した。黄色い閃光は、まるで彼が存在しないかのように通り過ぎ、炎のエレメンタルへと真っ直ぐに飛んだ。エレメンタルは炎の海を吐き出し、アイアンの炎の鎖が騎士を捕らえようと飛んだ。無駄だった。
ありえないほどの優雅さで、ライトニングは攻撃の間を舞った。彼は剣を抜いた。
スパッ!
黄色い刃が、魔法の構造そのものを切り裂いた。炎のエレメンタルは真っ二つにされ、その炎の本質は霧散する代わりに、**ゴオオオオオッ!**と音を立てて剣に吸い込まれ、刃は彼のものならぬ炎で燃え上がった。
「ラムザアァァァァッ!」神が喰われるのを見た男の叫びだった。
彼の最後の杭が、最後の力を振り絞って放たれた。
炎と雷をその身にまとったライトニングは、アイアンの下に現れた。その燃え盛る刃は、上昇の一撃を繰り出すべく構えられていた。アイアンは振り返ろうとした。防御しようとした。何かをしようとした!だが、もう遅かった。ライトニングの顔が、彼の目の前にあった。その瞳の冷静さは、死そのものだった。
「僕の名を気安く呼ぶな…」ライトニングの声は、嵐の囁きだった。「もし僕を呼ぶのならば、こう呼べ…雷光のドラゴの子、ライトニング、と…」
燃え盛る剣が、アイアンの体に触れた。
「…グングニル…」
斬撃から生まれた光は、爆発しなかった。それは収縮し、そして天へと突き抜けた。壮麗な槍の形をした、純粋なエネルギーの柱が空を裂き、海を越え、待ち構える天騎士団の艦隊へと飛んでいった。
旗艦の上では、乗組員たちが絶望の叫びを上げていた。「ライトニング様は何をなさっているんだ?!我々ごと吹き飛ばすおつもりか!」
しかし、将軍、『炎のドラゴンの子』ファイア、そして他の天騎士たちは、ただその槍が近づいてくるのを見ていた。そして、艦隊に到達する寸前で、それが輝く粒子となって霧散するのを。
何人かの騎士が恐怖に駆られ、逃げようと準備していたが、ファイアは微動だにしなかった。揺るぎないまま。




